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私と祖母の特別な関係

最近は春の陽射しが心地よいですね。
みなさまいかがお過ごしですか。

私は一人暮らしをはじめてから、祖母とよく電話をするようになりました。
いわゆる暇電です。
親とは全くといいほど電話をしないのですが、祖母には月に何度か電話をしたり、手紙を書いたり、お気に入りのコーヒーを送ったりしています。

一人暮らしをはじめてから、なぜだか私はとっても祖母に似ているところがたくさんあることに気がつきました。
祖母に育ててもらった、というタイプの孫ではなく、会うのは年に3回ほどなのですが、あら不思議。
母よりも父よりも祖母のDNAが強いみたい。
そんな血の繋がり、のお話を今日は少し。

食への愛着と料理

祖母はうなぎの蒲焼を自宅で作るレベルの料理上手です。
蒸し焼きからの炭焼きからのタレも手作り。
重箱がなぜ家にあるのか教えておばあちゃん。

料理上手なのに加えて栄養のことを考えるのが大好きな祖母。大好きというか多分食べ物が栄養素で見えてる。
これはベータカロチン、これはビタミンB、これはコレステロール下げるやつ、みたいな。

はい、孫も食べ物が栄養素で見えます。
これはカルシウム、これはイソフラボン、これは脂溶性ビタミン。
腸のためにきのこ、肌のためにフルーツ。
そんな気持ちでスーパーで買い物をしちゃう。
どうせ食べるなら脳だけじゃなくて体も喜ばせたい。
パーフェクトにはむりだけど、美味しく綺麗になりたいな。

祖母と電話すると必ずと言っていいほど今日何食べた?って話をします。
祖母の料理のような、体にも優しくて心も満たされる料理を作れるようになりたい。
私が忙しない日常の中でも料理を諦めきれないのはきっと、そんな気持ちから。

表現をする人

祖母は短歌をずっと嗜んでいます。
短歌の発表会で褒められたよ、とか賞を取ったよみたいな話をよく聞かせてくれる。
短歌やってるよ、とかはずっと昔から知ってたので、あら多趣味ね〜おばあちゃん〜ってくらいで聞いてたのですが。

先日祖母に手紙を書いて送ったらとても喜んでくれて。
手紙を読んだ後、祖母に電話口で言われたことに思わずはっとしたんです。

「あんた気持ちを言葉にするのが上手ね。
ばあちゃんもじいちゃんが死んだ時、よく自分の気持ちを詩にしてたの。
気持ちを言葉で表現すると、なんかすっと身体が軽くなるのよね」

おばあちゃん、私まぎれもなくあなたの孫です。
泣きそうになりました、その言葉を聞いた時。

祖父(祖母の旦那さん)は私の両親が新婚旅行に行ってる最中他界している。
それ以来祖母はずっと1人で生活をしている。
1人分の栄養満点の料理を毎食作って食べている。

役所の手続きやら葬儀で悲しむ暇なんてなかったよ、と当時を振り返る時祖母は必ずそう言っています。
悲しむ暇なんて無かったけど、きっとその慌ただしさが落ち着いて周りが静かになった時、急に騒がしくなる心の内を詩にしたためていたのだと思う。
当時たくさんの詩を書いたそうです。
どんな言葉を綴ったのだろう、という気持ちよりも、きっと白い紙が慈愛と感謝に充ちたたくさんの言葉で染められていったのだろうという根拠の無い確信。
誰かに1人で暮らす苦労を語るのではなく、揺らぐ感情の波を美しい言葉と共に小舟で漕ぐような人。

私はずっと文章を書いたりお芝居をしたり被写体をしたり、なにかしら表現をしていたけど両親はあまりそういうものとは縁がなく。
どうやらこの遺伝子は祖母譲りみたいです。
電話で詩を書いていたことを告げられ、はっとしました。
私の人生に表現の遺伝子をくれてありがとう、そんな気持ち。

骨となり血肉となり

食事は私たちの骨となり血肉となり、私たちの精神までも作りあげる。
私と祖母は一緒に暮らした期間がないけれど、食や表現で繋がっています。

私はまだまだ祖母のような人格者には到底及ばない、青くて未熟な、大人になりきれないなにか。
成熟した心とか、感情の波に飲まれないで舵を取るとか、そういうのはちょっとまだ難しい。
たまに派手に船をひっくり返しちゃう。
だけどいつか、あなたのように己の中にある豊かさと対峙できるような女性になりたいと孫は思います。
そんな私と祖母の、不思議な繋がりのお話。


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