生成AIが起こすイノベーションをどう生きるか?
こんにちは、Algomatic取締役CTOの南里(なんり)です。
今日は生成AIが起こしたパラダイムシフトついて、経営×CTOの視点から考察します。
Algomaticとは
生成AIで複数事業を行うスタートアップです。創業時からカンパニー制をとっているため、独立の権限と予算で事業推進する形をとっています。
そして、スタートアップスタジオ型の運営のため、資金以外でも事業推進を加速し、起業家と一緒に事業を立ち上げるスタイルをとっています。
数十年に一度の破壊的技術の到来
生成AIという技術革新は、インターネット以来の破壊的技術であると考えています。
生成AIの定義は、産総研マガジンが自分の解釈に近かったので引用します。
生成AIの巨大な経済的インパクト
そんな生成AIの市場ですが、巨大産業になることは間違いなさそうです。
マッキンゼーの市場予想を拝借します。リサーチによると63件のユースケースを産業全体に適応した場合、2.6-4.4兆ドル(360-616兆円)のインパクトがあります。
※各予測の定義は生成AIがもたらす潜在的な経済効果のp8-9をご覧ください。
このように生成AIという破壊的な技術は、GAFAをはじめとしたありとあらゆるプレイヤーが参入する大きな市場をつくっています。
破壊的な要素としては、飛躍的な生産性の向上がわかりやすいと思います。
スループットの飛躍
破壊的技術は、短期的にサービス品質を下げると言及しました。
しかし、いくつかの領域で既にキャズムを超えています。例えば、コーディングの領域だと、スループットが劇的に向上しています。
ケース: サイバーエージェント社におけるコードの自動生成(Github Copilot)での業務改善
もちろんプロモーション的な側面もあるでしょうし、評価方法は不明ですが、感覚値とずれていません。むしろ私自身のコーディング作業(with Cursor)はもう少し改善出来ていると感じています。
なぜコーディング領域で、このような成果が出ているのか?ですが、「予測しやすく」かつ「人間の作業が律速になる」領域が多いからだと思います。
具体的にアプリケーションに絞って話をします。
まず、なぜ予測がしやすいか?ですが、定型化できる業務が多いからです。
業務のエンジニアリングを行うには、ドメイン/アーキテクチャ/フレームワーク/言語の理解が必要です。ドメイン以外の実装は、ボイラーテンプレート的に活用できる部分が多く、精度が出しやすいのだと思います。また、ドメインに関してもさまざまな機能がSaaS化、モジュール化したことにより、実装がシンプルになってきたのかなと思っています。
そして、人間のコーディング作業は、思考と手の速さが律速になります。
例のようなコードを私が0から書くとなると、30-60分くらいはかかると思いますが、GPT4なら1分程度でした。これだけで、30-60倍の生産性改善です。分量が増えるほど、ドメイン知識への考慮と手の動かすコストは非線形に増大するので、生産性を飛躍的に向上できます。
このように、生成AIの推論精度を高められるいくつかの領域では、既に目に見える成果が出始めています。
ワークフローの飛躍
ここまでは、既存業務のリプレイスメントでしたが、生成AIのもう一つの特徴はアウトプットの速さと心理的な障壁を取り除くことによる既存ワークフローの改革だと考えています。
プロダクト開発を例にすると、生成AIがすぐにアウトプットを生成してくれるので「要件を細かく定義する」より、「雑になげて、対話の中でアウトプットを洗練させる」ということが可能になってきました。つまり、生成のコストが低くなり、まず作る、だめなら壊す、ということが正当化されやすくなったと思います。
一方で、作ったものを壊すことは人間の感情を大きく揺さぶるものです。だからこそ、感情を持たない生成AIがコンテンツを生成することは心理コストを低下させる重要な役割を持つように感じます。
このように、生成AIを活用したワークフローは、「壊すことを前提」としたものに変容し、今後の働き方が大きく改善してくるはずです。
まだ、ワークフロー変革の事例は少ないです。実はAlgomaticではいくつかの領域でワークフローを完全に刷新し、大きなインパクトが出せそうなことがわかってきました。2024年以降は、市場での事例も増えてくるのだと思います。
生成AIに投資できない企業のイノベーションのジレンマ
生成AIは一過性のバズワードではなく、継続的な潮流であることは間違いありません。2024年にはさらに大きなパラダイムシフトが起きると思います。
2023年はアーリーアダプター、特定の領域の人たちが大きな恩恵を受けた一方、多くの企業、領域ではまだ効果が見える体験を作れていません。
これは、生成AI時代のデザインのデファクトスタンダードが出来ていないからです。しかし、2024年以降は「生成AIを意識せずに簡単に使える」取り組みが増えてくるはずです。2024年は、「デザイン×エンジニアリング」の体験価値の向上が大きなテーマになると思います。
しかし、このような大きな潮流があるにもかかわらず、生成AIへの投資はまだ十分ではありません。特に既存事業が成長している企業では、生成AIは副次的なものとなり、投資は限られます。既存事業で蓄積されたデータがある分、生成AIによるレバレッジは効きやすいですが、主事業ほど投資はされず、推進が難しいと考えています。
もちろん、企業の規模やフェーズにもよると思いますが、推進の障壁として3つの要素があると思います。
生成AIへの投資はROIが低く、説明責任を果たしづらい
生成AIのような不確実性の高い技術はROI(投資収益率)が低くなりやすいため、投資家への説明責任を果たしづらいです。特に、「コアな事業で収益化している」「多くの投資家が存在する」などがあれば、この傾向は強まります。これは企業としてとれる選択肢が多いと、相対的にROIが低くなりやすく、投資家に説明しづらいということだと思います。結果的に投資は限定的になり、数人の兼業チームのような形になりやすくイノベーションを起こせません。
大きな成果が出ていない
生成AIのビジネスで利益を出している領域はコンサル/受託系(とNVIDIA)くらいだと思います。もし出ていたとしてもこのフェーズでは隠していると思います。つまり、まだ大きな成果が出ている領域は少ないはずです。
資本がある企業は、「成功事例が見つかってから追っかけよう」という戦い方を考えます。キャッシュレス戦争でPayPayが勝利したような事例があるからです。しかし、生成AIによる事業開発は不確実性が高いため推進力とバランス力が問われます。資本力のみで追いつけず、先行者優位が強い領域になるはずですが、大きな成果が出ていないと参入できないためイノベーションを起こせません。
精度が低く、プロダクトの品質基準を満たさない
現状の生成AI技術は市場の期待値を上回っている領域ばかりではありません。ChatGPTをはじめとした生成AI技術は組み込むだけでは十分な精度が出ません。顧客にサービス提供している企業が、そのまま組み込むと精度が出ずにプロダクトの品質としてリスクが高いです。組み込むための知見がないため、投資できないという卵鶏問題が発生してしまいイノベーションを起こせません。
これら3つの要素から、たとえ市場が巨大であっても、不確実性が高い技術に投資することは、企業にとって難しいということがわかると思います。
Algomaticの思想と体制
Algomaticは、まだまだ小さなスタートアップですが、イノベーションを起こすための思想と体制構築に注力しています。
本記事では、一部のみ抽出しますが、代表の大野と野田が色々話しているので興味がある方は是非。
スタートアップはハイリスク・ハイリターンのゲームである
スタートアップの本質は、破壊的なイノベーションで前例のない社会的価値を生み出すハイリスク・ハイリターンのゲームです。ハイリスク要因は「ニーズが本当にあるのか?売れるのか?」という市場不確実性と「本当に実現できるのか?」という技術不確実性の2つです。
つまり、事業成功のためには、市場と技術のリスクの総量を減らす必要があります。
生成AIにフルベットし、技術の不確実性をとりにいく
Algomaticは「生成AIにフルベット」し、技術的な不確実性に取り組みます。
まず、DMMから20億円の資金調達を行いましたが、生成AIに全投資します。
そのため、現在立ち上げている複数の事業はすべて生成AI技術を用いるという制約を設けています。
0→1の立ち上げですが、既に各事業の実用的な技術知識が蓄積されています。また、スタートアップスタジオ型で異なる複数の事業を行っているため、特定の技術分野の深さだけでなく、広範な技術領域でも知識が蓄積されています。そして、事業部をまたいだ技術資産の流動性も高まっています。
これらはほんの一部です。
生成AIに全力で投資することと、スタートアップスタジオ型で取り組む体制により、実用的な技術を「早く」「深く」資産化することが強みとなっています。
市場の不確実性はとらない。「とにかく作る」と「なんでも作る」は違う
Algomaticはテクノロジー企業でありながら、収益を追求する事業会社でもあります。技術の不確実性を減らす一方で、市場の不確実性を下げる戦略を採用し、適切な課題に取り組んでいます。適切な課題を見つけるために、ヒアリングを惜しみません。創業から半年で既に500社以上との商談やヒアリングやプリセールスを行っています。
「とにかく作る」は「なんでも作る」を意味するわけではありません。「とにかく」が意図するのは、適切な課題設定の後は、作ることの費用対効果を考えすぎなくてよい、ということです。また、技術的に実現できない場合でも、課題に紐づいた深い技術知見が溜まり、会社の資産になります。
「なんでも」作るは、探索が個人のスキルに依存してしまい組織として資産がためづらいです。
このようにテクノロジードリブンで「とにかく作る」を実現するためには、適切な課題設定を怠らないことが最も重要です。
現場を知る経営チームが意思決定スピードをあげる
Algomaticでは、各事業にCxO(CEO、CTOなど)が所属しています。
AlgomaticのCEOの中で、4人中3人がソフトウェアエンジニアです。(代表の大野も含む)
そのため、現場の状況を的確に判断し、迅速に意思決定を行うことができています。
テクノロジー企業において経営チームと現場の乖離はよく起こります。
この多くは、経営チームの現場への解像度をあげることで解決します。
例えば、技術的な投資は効果が見えにくく、意思決定が難しいです。技術スポンサー、技術負債、設備投資(PC/ディスプレイ)、ツール類などです。現場からの提案があっても説明が難しく、進行が頓挫しがちです。しかし、CEOが現場を深く理解していると、これらの問題は進行しやすくなります。
また、CTOがCEOと現場をつなぐ伝言マンになり、調整に時間を使うケースもよくみます。CTOが本質的な業務に集中できない状況に陥りますが、これもCEOの現場理解を深めることで解決できる問題の一つです。
もちろん、本質的にはマネジメントレベルを上げることで解決できますが、CEO(CxO)が経営と現場を行き来できる方がコストがかからず解決できている、と経験上は感じています。
Algomatic βプロジェクトの始動
長々とAlgomaticの思想と体制をお話しましたが、エンジニアの方こそ実際に手を動かし、技術ドリブンで破壊的な事業創造に挑戦するべきだと考えています。
そこでLLM関連技術を活用した新規プロジェクト「Algomatic β」を立ち上げます。コンセプトは、「テクノロジードリブンで連続的に事業を創出する」ことです。
Algomaticでは多くの事業検証を重ね、検証したい課題が増えてきています。しかし、技術的な不確実性があり進めづらいという課題がありました。本プロジェクトでは、テクノロジードリブンに「とにかく作る」ことに焦点をおき、短期間で成果を出すことを目的とします。
1月からプロジェクトを開始しますが、各プロジェクトには弊社の横断CxO(大野/南里/野田)が管掌し、共同で成果にコミットします。
もしご興味がある方は、以下からご連絡ください。
生成AI時代を代表する会社を一緒に作りましょう
Algomaticでは、市場と技術の不確実に向き合っていきながら、社会に良い影響を与え続けたいと考えています。
AlgomaticでのカンパニーCTOやエンジニアリングに興味がある方、是非一緒に未来をつくりましょう!
まずは、カジュアルに、お話しましょう。
X(Twitter):@neonankiti
Podcastcastでもさまざまなテーマを取り扱っているので是非!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?