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デザイン経営の実践:デザイナーがビジネスにレバレッジを効かせる

こんにちは!デザイン経営を実践して時代を代表する企業を作りたい のだ です。

私はこれまで、前々職のGoodpatchでは主に0→1の立ち上げ案件と組織マネジメントを、TBSテレビではデジタルプロダクトの立ち上げや組織創りを経験してきました。今はスタートアップ(Algomatic)のCXOとして創業初期からデザイナーとして会社の経営/事業の立ち上げに奔走しています。

今日の記事では、これまでの経験や、スタートアップ経営の現場での実践知から、創業初期からデザイナーがどうビジネスにレバレッジを効かせられるのかを考察していきたいと思います。



本記事は、デザイナーの方はもちろんですが、特に初期フェーズでデザイナーとの協業の仕方に悩まれている事業家の方々にも読んで頂けるととっても嬉しいです!

結論:デザインが経営/ビジネスにレバレッジを効かせる

デザインは単なる見た目や形状を超えて、ビジネスの核心に関わる要素となっているのはもはや言うまでもなくなりました。デザイン経営宣言をはじめ、「ビジネス構築の初期工程からデザイナーを参画させるべきだ」、「経営メンバーにはデザイナーを入れるべきだ」、という言説はもはや常識レベルにまで温度感が高まっています。

D4V Design in Start-ups 2022 report JP より

そんな中で、抽象論としてのデザイン経営やデザイン・シンキングを念頭に、多種多様な現場で実践をしていく中で、共通項となるデザイナーの価値が少しずつ言語化出来てきたように感じています。

記事の結論を一言でいえば初期フェーズから参画することで 「デザインは経営/ビジネスにレバレッジを効かせることが出来る」 ということです。ここで言うレバレッジを効かせるとは、『元々の投資や労力に比べて、より大きな効果や結果を得ること。具体的には、多くの人々にとって、繰り返しの活用される資産への投資』と定義しています。

自分がこれまで一緒に働いてきたデザイナーは何より共感力が高く、可視化力が高い方々ばかりでした。そしてデザイナーによって視覚化されたデザインは「圧倒的に理解しやすくする。認知負荷を下げる(左脳インパクト)」「心に響きやすい。記憶に残りたい(右脳インパクト)」という特性を持っていると思っています(※かなり単純化していますが)。この特性は、情報を伝えるというビジネスの本質における強力なレバレッジとなります。

例えば、事業戦略をテキストだけで共有するのではなく、図解等を用いてビジュアル化することで、チームメンバーの思考が加速しますし、ストーリーの腹落ちしやすさが倍増します。

さらに付随的に、その資料のフォーマットが営業資料のテンプレートとして活用されることで営業が質の高い資料をデザイン出来るようになることで、受注率にもインパクトがあるかもしれません。

また、プロダクト開発の初期フェーズから拡張性の高いUI設計が出来れば、中長期での開発コストも削減されます。一つのデザイン投資が複数の役割を中長期で持つ、これこそが、デザイン is レバレッジの真意です。

ここからは、それぞれの領域で具体的にどんなレバレッジが効くのか、考えていきます!

プロダクト編:仮説検証に速度と質をもたらす

プロダクト設計編

拡張性の高いUI設計による開発コストの設計はもちろんのことですが、ビジネスにも当然良いインパクトがあります。

まず、顧客体験を設計するデザイナーに対して初期フェーズから投資することで、人と製品のインターフェースは極限までなめらかに設計されます。身近な言葉に言い換えれば、当たり前のように行動してしまうなめらかなプロダクト が生まれます。

例えば、Twitter、Instagram、noteなど事例は様々ですが、それらのソーシャル系サービスを例に上げると、他人のPostsを覗いていたら自然と自分も投稿してしまうようななめらかな体験設計がなされています。ここで言う「なめらか」は、誰に教えられるでもなく、自然とコアとなるユーザー体験に導かれ、成功体験が出来る設計を意味しています。この「成功体験までのなめらかさ」は初期フェーズにおいて特にキモになります。

(AI系では、👇のサービスが人のプロンプトを真似するまでの体験がなめらかに出来て、シンプルながら秀逸な体験設計がなされているなと最近感じたプロダクト)

先述のサービスも含めて、あらゆる世に出ているプロダクトは「仮説」を具現化したものとも言えます。
『〇〇を提供すれば、お客さんは〇〇してくれるはずだ。それによってお客さんには〇〇の価値をもたらし、社会は更に良くなる』 という仮説の言語化がどれだけ良質でも、プロダクトへの落とし込みがデザインされていなければ、十分に仮説が検証されません。事業家が世界に投じる仮説を正しく検証する意味で、体験に摩擦がないことは仮説検証に速度をもたらします。そしてその結果がプロダクトKPIの高速な複利での改善を実現します。

なめらかな体験設計の重要性は業務システムでも同様だと捉えています。最近だとLayerXさんの出すプロダクトは業務システムでありながらもUXに関するソーシャルでのリファラルを良く目にします。これは業務システムのUXに投資をした結果、顧客が自動的に流入してくるリファラルのサイクルを形成するというレバレッジの効かせ方の好例です(本当に凄い)

以上が認知負荷を徹底的に下げる、なおかつ拡張性の高いプロダクトデザインがもたらすビジネスへのレバレッジの例です。

ビジュアルデザイン編

また、人の心を動かすビジュアル もレバレッジが効きます。文献が見つからなかったのでFactベースでは無いかもしれない前提で、、、USのデザイン会社のPentagramがスーパーマーケットのとある商品のパッケージをリデザインした結果、売上が50%伸びたというニュースを先日聞きました。(Factご存じの方いたら教えてください)

他にも、例えば資金調達用のPitchDeckやプロトタイプのビジュアルデザインによって、下手したら数億レベルでの資金調達へのインパクトがある可能性もありますし、身近な例ではイベントのバナークリエイティブの質が高ければ集客率も上がります。事業戦略のドキュメントのビジュアルが美しければ、参照性も上がり、参照性が上がればマネジメントコストも下がります(ここは後述)。バナーなどはよく聞く事例だとしても、資金調達額やマネジメントコスト等、ぱっと見紐づきづらいKPIへのレバレッジをもたらす可能性を秘めていたりと、デザイナーが活躍出来る舞台の幅はとっても幅広いです。

↑こちらのデジタル庁のKPIダッシュボードのビジュアルデザイン/情報設計が秀逸だったのも、まさにデザインのレバレッジだと思います。

デザイナーにもとめられる視点

逆にデザイナー側から必要な寄り添いとして、資金調達額や、事業の最上位KGI、そこに至る仮説思考プロセス等、コンセプトに対する深い理解をすることで、成果が最大化されるように思います。その初期工程への解像度を上げることでアートディレクションと事業の思想を一致させ、ビジュアルのインパクトにも紐づいて行くはずです。
ざっくりといえば、デザイナーとして様々な抽象度における「ダブルダイヤモンド」の前半と後半を連関させられているか、という点が重要な視点だと捉えています。

ビジネスという戦いにおいて、経営メンバーなり、デザイナー以外の人々と同じ目標を見据えることが、「デザイナーとしてのビジネス理解」 の一つの形なんじゃないかと思います。

マネジメント編:コンテキストマネジメントで組織の自律性にレバレッジを効かせる

プロダクトやマーケティングだけでなく、デザインはマネジメントにもインパクトをもたらします。端的に言えば、マイクロマネジメントの逆概念であるマクロマネジメント(目標等抽象的な合意でマネジメントすること)を加速させられます。(弊社では、コンテキストを全社員で一致させるという意味で、コンテキストマネジメント と呼んでいます)

現代のマネジメントツールにおいて、例えばNotionなどの文字ベースのドキュメントは非常に有用で、組織での共創関係を構築するのに無くてはならない存在ですが、経営思想を大きくなった組織の指先にまで浸透させるには、「文字によるマネジメント」だけではどうしても不十分になります。(どれだけ賢い人でも人の脳は怠惰に出来ているので、どうしても「読むのはメンドイ」んですよね)

文字ベースのマネジメントにおいての悪い例でいえば、事業責任者とメンバー間でそもそもターゲットの認識が違う などなどそもそも論の議論に時間が割かれる状態にもなりかねないです。

逆にコンテキストマネジメントの良い例としては、チーム全員の戦略解像度一致しており、マイクロマネジメントがほぼ不要になり各々の持ち場で自走する組織作りができている状態になります。

これを実現させるのが、デザイナーです。様々な側面でビジュアルでの共有は強烈にコンテキスト理解を加速させます。もちろん少ない人数の組織であれば、文字ベースのコンテキスト共有(もはや文字すら残さず頭の中の情報)だけで認識一致させることも出来るかもしれないですが、10人以上にもなってくると、そうは行きません。事業戦略を図示/可視化してストーリーとしてまとめ上げるだけでも、メンバーの理解が加速します。

(ちょうど先日弊社でも戦略資料のビジュアライゼーションにコミュニケーションデザイナーをアサインし、数十名のメンバーへのプレゼンテーションをデザインしたところ、これまで同じ内容がテキストで共有されていた中で、可視化されることによるインパクトを実感してもらえる事例もありました)

この「組織全体のコンテキスト理解の加速」こそがデザイナーの可視化力がもたらすコンテキストマネジメントへのレバレッジです。

※昨今決算資料や中期経営計画/統合報告書等へのデザイン投資が当たり前になりつつあるのは、外部内部含めたステークホルダーとのコンテキスト一致が目的だと個人的には捉えています。

逆にデザイナー目線では、事業戦略の理解と、理解だけでなく特に顧客体験やブランディング観点での戦略へのフィードバックを常時出来るよう構えておくことが「デザイナーがビジネス目線を持つ」という言葉の解釈なのではないかと思います。

意思決定者編:デザイナーの活躍の場をデザインする

今回ピックアップしたサンプル以外にも、本来企業には山程デザインが介入してレバレッジが効く領域が溢れているはずです。

一方で、経営の意思決定レイヤーにデザイナーがいなければ、そもそも手段としてデザインが介入すべき(組織論的に言うと、インターベンションすべき)領域を誰も思い浮かばない、という課題があります。

となると、デザイン経営者の役割は、システム思考やシステムデザイン的なアプローチを持つことです。具体的にはエコシステム内でのステークホルダーや取り巻く環境を解像度高く把握し、デザインの介入によってレバレッジが効くポイントを探しまくることです。

システム思考は、私たちの従来のものの見方を補完、刷新する「新しいものの見方」(ピーター・センゲ)です。 従来のものの見方の特徴は、出来事をスナップショットで見て対処すること、要素還元型の考えに基づく分析や分類を行うこと、パターンや因果を線形に捉える傾向があることなどです。しかし、こうしたものの見方では、今日の複雑性や脆弱性を増した組織システムや社会システムの中で成果を出し続けることが難しくなっています。 システム思考では、大局の流れを観ること、つながりを含む全体像を観ること、根本を観ることによって、複雑なシステムにおいてもより本質的で持続的に成果を創り出すことを意図します。

システム思考の定義

マクロ的な観点でいえば、経営戦略の中で重要なイシューとなっている点をCEOレイヤーと同期している状態を作ること、ミクロな観点でいえば、SlackやメンバーのSNS等を通して組織の空気を吸いまくること等を通して、ミクロマクロの両観点からデザインの機会を探しまくるのが初期フェーズでは特に大事だと思っています。(拡大してきた後は、これ自体を仕組み化するのも仕事)

生成AI時代:デザイナーのレバレッジがこれまで以上に重要な時代

歴史上、スマートフォンの登場やインターネット速度の向上など、技術の変化によって最適なUXに変化がガラッと変わるタイミングが定期的に現れます。LLMもこれなんじゃないかと思います。(ポジショントークでもありますが、本心で)

LLMネイティブな体験設計においては、GoogleやAppleのガイドラインが存在している前提でのものとは若干一線を画していることもあり、新しいUXの探求がより一層必要になります。これはつまり、ここまで記してきた仮説検証の難易度が格段に上がっていることを意味しています。仮説を構築するだけでも難しいだけでなく、それをなめらかなインターフェースに落とし込むことも同じくらい難易度が高いです。

だからこそ、超初期から体験設計と事業戦略仮説の重要度を同様に捉え、それらを同時進行で検証していく戦い方が求められていますし、体験設計に対する投資のレバレッジの効き方が莫大になってきていると考えられます。

余談ですが、、、デザインだけでなく、営業やCSも当然コンサル的な動きが求められていきますし、マーケもこれまでにない概念を伝えていく等、全方位的なビジネス総合力で勝つのが昨今のAIの領域です。こんなマーケットの変革期だからこそ、職能を横断的に駆け回り、レバレッジを効かせるデザイナーの成果が複利で事業にいい影響をもたらすんだと思います(更なるポジショントーク)
技術検証も同時に行う必要があるどころか、技術こそがキモでもあることから、これまで以上にBTC(Business Technology Creative)のトライアングルのバランスが鍵になる雰囲気を感じています(度重なるポジショントーク)

さいごに

デザイン経営等、デザイナーの定義が広がっている中で、今回は「レバレッジ」というキーワードを元に役割を考察してみました。

短期的なP/Lへのインパクトをもたらすデザインだけではなく、中長期で影響をもたらす資産としてデザインを捉える(つまりレバレッジを効かせる)ことで、よりデザインへ投資しやすい世界になっていくと思いますし、デザイナーとしても目の前の仕事により広い資産的な影響をもたせられるかを意識し続けたいなと思う限りです!

余談:究極のレバレッジを追い求めて

読み返してみると、ビジネスを「理解・インプット」して、デザインで応えるという若干受け身的なバイアスも自分にあるような気がしています。
そのバイアスを壊すべくグローバルな事例を見てみると、デザイナー主導未来を予測する意味でのデザインへの投資も増えていそうということがわかりました。例えば、デザイナーが経営者にも見えていない未来を言語化し、可視化する「デザイン・フューチャリスト」のような職種です(デザイナーが未来を描く!的な言説は聞いたことがありましたが、実際に職能があるのは初めて知りました)

ここまでの投資はレアかもしれないですが、レバレッジを極限まで追求したその先には、右腕としてではなくデザイナー自身が起業家や事業家(ブライアン・チェスキー的な)として未来を描き、己がリーダーとして社会にインパクトをもたらす、という志向性の人も現れてくるんじゃないかと思います。

宣伝:弊社では創業メンバーとなるデザイナーを大募集しています

最後に簡単な宣伝です!

現在生成AIスタートアップAlgomaticでは、20億を調達し、複数事業をカンパニー制で立ち上げ真っ只中です。実質複数のスタートアップを同時進行で立ち上げていると言っても過言ではありません。
これから時代を代表する企業となるべく、全社としてもカンパニー内でも「デザイン経営」を推進していきます。是非事業のCXO/リードデザイナー等として一緒に会社を成長させていく創業メンバーとしての参画にご興味がある方はご連絡ください!(職種名にこだわりはないですが、多様なデザイン職種を募集してますので、気軽にDMください)

(2年前に近しいトピックで記事を書いていたのですが、解像度粗すぎて恥ずかしいですwこの記事も数年後には同じ感覚になるかもしれないですねw)

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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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