僕は男の子にもなれない(どのトイレに入ればいいのか)

以前、自分は女の子になりたいのではないのか?と考えていた時期があったことを書いたが、では男の子ではあったのかというとそう単純でもなかった。

その時に象徴的なこととして困っていたのが、というか今も少し困っているのが、トイレ問題である。

男子トイレで性別を間違えられる日々

5年ほど前に、ガウチョパンツを履いて男子トイレにいたところ、入ってきた50代ほどのサラリーマンが、洗面スペースで私の顔をみて固まったあと、入り口まで後退りして、体を反らして何かを見たあと、もう一回私の顔を、そしてまた入り口の外の何かを見た。
そのときに「あー、入り口の男女のプレートを確認してんのか」と納得して「合ってますよ」とお伝えした。男性はビクつきながらトイレに入ってきた。「まじかー、性別を勘違いされたかー」と思いつつも、「まあ、ガウチョパンツ履いてる男子っていないもんなー」(2016年当時)と反省した。

それからしばらく経って、今度はオーバーサイズの服を着ているときに、また男子トイレの洗面台と入り口の表記とを往復された。「またか」とは思ったものの、「女と男を見極められないなんて」と謎の勝利感があったことを覚えている。
しかし、この変な勝利感は最初の5回くらいまでだった。回数が増えていく事にストレスが大きくなっていった。しかも、50代40代だけでなく、徐々に30代20代までにも勘違いされるようになってしまった。

これではあかんと、身体のラインがでる細めのメンズの服だけで男子トイレに入ったのだが、それでも起きてしまって、「あー、まじか、これでダメならどうすればいいんだ」と手詰まりになってしまった。

相談と対策

同僚(女性)に相談したところ、「女子トイレに入ればいいんじゃない?言われるまで私、なむなむさんのこと女性だと思っていたぐらいだし」とのこと。「えー、それはなんか超えたらあかん一線な気がするなあ」とそのときは答えておいた。
しかし、後日判明したのだが、職場で自分のことを女性だと勘違いしているのは、把握しているだけで片手で収まらなかったらしく、ついに「もう男子トイレに入るのはなるべく止めよう」と決意することになった。

とはいえ、トイレに行きたい緊急度が高いときや多目的トイレがないときは男子トイレに入らざるを得ず、そのときはいろいろ対策して入ることにした。
まず、髪をかき上げつつ入った。自分のボブ(肩にはつかない)のヘアスタイルが問題だから、おでこ見せつつ入ればいけるだろうと踏んだからだ。あとは、顔を下に向けながら入ることにした。顔が女顔なのかもしれない。そして、他の男性と対面する時間をなるべく少なくするためとしてトイレは個室を使用して、出る時は周りに人がいなそうな時を見計らって出た。さながら侵入ミッションをしている気持ちである。

これで大分改善されたが、今でも25%程度は男子トイレで性別を勘違いされることがある。

多目的トイレの気楽さ

レディースの服を着るようになってからのある日、はるな愛さんが多目的トイレを使っていると話しているのをテレビで見た。記憶が確かではないが、3、4年前だったように思う。

この話を聞いて、僕も多目的トイレを使ってみることにした。
多目的トイレはいい。誰が入っても変な顔をされないし、そもそも一人で入るから、トイレ内でビクビクしなくてもいい。使用時間は気にしないといけないが、非常に気が楽だ。

最初は、レディースの服の比率が高いときにだけ多目的トイレを使用していた。しかし、メンズの服を着ても勘違いされることが分かってからは、つまりここ2年は、服によらずなるべく多目的トイレを選ぶようにしている。

個人的には、多目的トイレがもっと増えるといいなと思っている。
トイレ使用時の回転率や異性が怖い人が存在するため、男女別でトイレを設けることはあって然るべきだが、同性が怖い人や上記の理由で気まずい人も存在すると思うからである。

***

トイレの件で思ったのは、私は女の子にはなれないが、同時に男の子にもなれない。なんとも狭間で生きているような気がする。
とはいえ、私は何かに帰属意識を持ったことのない人間なので、つまるところ、適応していくというよりは、自分の身体と気持ちを活かして生きるほかない。多目的トイレのような狭間を見つけるのか作るのかはわからないが、こうした狭間と向き合うことが、自分の人生の課題なのかもしれない。

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