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UXデザインを学び実践してみてゲームUIデザイナーの自分はどう変化したか


スマホゲーのUIデザイナーをやっています。いたくらです。

ゲームのUIデザイナー名乗ってますが、半年ほど前からUIのグラフィックやアニメーション関係の制作からは一旦離れて、UXデザイングループという名前のグループで(グループと言いつつ私とマネージャーの2人だけですが)プロト制作や情報設計、ユーザーテストなどを仕事のメインとして運用タイトルに関わらせて頂いてます。

3年ほど前に同じタイトルにUIデザイナーとして関わっていた時期がありましたが、その頃と比較して業務内容や考え方変化があったので、note復帰してそのあたりの話を今後少しづつ書けていけたらなと思います。

本題


今回はUXデザイングループの一員として、グラフィックなどの見える部分のデザインではなく、設計など見えない部分のデザインの仕事をメインとしたことで自分の仕事の進め方や考え方がどう変化したかについてです。

※ゲーム開発でプレイヤーのことを「ユーザー」って言うのは場面によっては違和感あったりなかったりするのですが、ユーザーテストに関する話もあるので、手法の名前にに合わせて今回は「ユーザー」で統一してます

1. 感情だけでなく、事実を捉えて比較分析しようとする癖がついて課題が整理しやすくなった


実践の結果、直近伸びてよかったと思うスキル第1位。

自分はこのスキルをユーザーテストを設計する側の体験を通じて学びました。

ユーザーテストでは、学びとして特に印象に残ったことは自分がユーザーインタビュー設計やインタビュアーを初めて経験時に体感したこの3つの視点です。

・自分自身の経験の視点
→「自分はこう思う」「こう感じた」という主観
・自分以外のユーザーを観察する視点
→ 自分と同じ経験をしている他者を観察するという客観
・自分の経験とユーザーの経験を比較しギャップを見つける視点
→ 観察から得られた事実を元に比較分析し、同じ体験でも自分と他者にはどんな差があったのかを考えるメタ認知的な視点

主観だけだと議論が平行線になりやすいですが、この3つの視点を使い分けて分析や議論をするクセをつけたことで、自分の課題整理するときのパターンができてきました。

ざっくりと考えていることとしてはこんな感じです。

1. 自分のユーザーとしての経験を整理(主観)
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・改めて施策ターゲットのランク帯で改修対象範囲をプレイ
・実現したい体験に対して、自分の経験からまず他のユーザーにも起こってそうな課題を予測
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課題仮説としては「この辺りかもなー」ぐらいのあたりをつける感覚。この時点で自分が感じたことがユーザーの中でもマイノリティなのかマジョリティなのかわからない状態なので、解決「するべき」とか優先度をすぐに決めつけない。
2. 自分以外のユーザーの経験の情報を集める(客観)
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・ベンチマークやプロトなど客観的な情報を吸収しブラッシュアップしやすくするためのアウトプットを作る
・アウトプットを元に担当プランナーやステークホルダーなどにヒアリング
・必要ならさくっとできる小規模なユーザーテストを行う
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優先度を決めるための課題分析の軸についてみんなで認識そろえていく感じ。「早く仕様決めて開発進めなきゃ」と慌てない。慌てて進めると後々つらい。(仮にうまくいかなかった場合、後々の判断が「ここまでせっかくやったのに」みたいに「自分たちがどれだけコストをかけたか」がいつの間に決定軸になり、バイアスかかって戻るに戻れなくなる可能性が高まる気がするので・・)
3. 課題仮説を立てる
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・1と2を元に自分の予測と客観的な情報の比較
・担当者/ステークホルダー/ユーザーテストのFBや操作時の行動に関してそれぞれの情報を比較
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情報を集めてから主観の情報と客観の情報を比較したり、複数ある客観の情報同士を比較し、作りたい体験に対しての阻害要因などをみて優先度を切ってタスクに落とし込んでみる。

こんなことを考えながら自分の経験則や様々な客観的事実を元に分析し、その結果とプランナーの実現したい体験の間にあるギャップが何かを知ろうとすることで、課題が何かを俯瞰できる状態にしていきます。

実現したい理想と現在の事実を比較した結果、課題はレベルそのものかもしれないですし、レベルを体験し学習する過程がユーザーに正しく伝わっていないからかもしれないし、それ以外かもしれない。

起こっている事象に対して色んな立場で捉えると「何が課題なのか」はそれぞれ違った視点(表現)になるのは当たり前という前提で、いかにギャップを分析できる状態にして、複数人で軸の認識をぶれないようにしながら検討できる状態に近づけていくかをユーザーテスト設計や分析結果を共有する場面で考えさせられました。

自分が「UXデザイン学んでよかった」と思えたり「ちゃんと学ぼう」と思ったのはこの辺を現場で体感し気がつけたからだと思います。
(細かく書くとこのトピックだけでも記事書けるかもしれない・・)

2と3は1の学びの副次的な要素。

2. 自分が仕事でパフォーマンスを発揮しやすい場面・パターンを理解し、そのための準備ができるようになってきた


1のような考え方で進めるに当たって、以前と比較してプランナーへのヒアリング内容や方法が変化してきました。

以前であれば、プランナーからの要件や仕様の説明などは割と受け身な感じで聞いてしまう場面もあったのですが、それだと後で色んな問題がぽろぽろとでてしまうし、その問題を局所的な対応でなんとかしようとしてしまいがちになり、作るものもスケジュールもブレます。

「いかに軸がぶれないようにしながら、課題を比較分析できる状態にして制作進めるか」が自分の仕事のパターンのひとつになった結果、そういう状態にするために序盤に抑えたい部分も理解できてきました。

・実現したい体験はどんな体験なのか
・どんなユーザーがターゲットなのか
・実現したい体験に対して現時点でターゲットユーザーに起こっているであろう課題の予測(数値があれば数値もセットで)

・どうなったら成功でどうなったら失敗か
・制作する上で仕様など必ず守らないといけない条件が何か

ざっくりこの辺りについてプランナーと確認し、ここから「今はどんなアウトプットが必要な場面なのか」を考えたりしながらスケジュールを引いたりタスク化したりします

個人である程度この辺りを理解し行動できるようになってきたことで、仕様を待って制作するのではなく、場面ごと必要な忠実度を見極めた上でアウトプットの相談や提案がしやすくなりました。

3. 話すスキル(説明・説得)ではなく、聞くスキル(引き出す・受け入れる・分解する)を伸ばすことに集中できた


そんな感じで自分が仕事を遂行していく上で知りたいことがちゃんと聞けるよう、最近では自分が会議のファシリテーターを行う場面が増えました。

その過程で学んだのは、自分にとっては自分が「話をする」場面以上に「話を聞く」場面の方が難しいということでした。

例えばタスク化をゴールとし、プランナーと「どんな案件から対応するか」を議論する場合。

色々と思い入れがあり主観が先行しすぎるとつい「自分が思う優先度」を話してしまいますが、優先度を話すのではなく優先度を「どんな軸で整理するか」でプランナーの話を引き出す方が建設的に話が進みやすかったです

この場合、主観の優先度から話すと「その優先度があってるか間違ってるか」的な軸の会話になってしまいがちなので、議論が収束しづらいです。

一方で「どんな軸で優先度を整理するか」「プランナーからどんな話を引き出し、思いを理解するか」などを前提に会話をすると、仮に後で優先度の間違いに気がついたとしても軸を検討しなおせばいいので、方針転換もスムーズ。

ただ、後者のような議論をするには、話を聞く側が議論のゴールやポイントを理解し、ある程度会話を先読みしたうえで、どう話をするのがベストかを考える必要があります

ファシリテートは苦手ですが、ここを理解してからは聞くスキル伸ばそうと、会議のゴールを意識してアジェンダ引く癖をつけていきました。

UXデザイングループという場所で、ゲームUIデザイナーとしてできるようになりたいこと


そんなわけで現在は「UXデザイングループ」という名前の部署に属してますが、UXデザイナーになりたい訳ではないので肩書きはUIデザイナーのままです。

今はUXデザインの領域から「ゲームデザインやレベルデザインの意図を汲んだ上で、事業目標も理解し、いかにゲームサイクルにもユーザーにも最適なUIデザインに近づけていくか」をテーマに、そのために必要なスキルを磨いてる段階です。

情報設計の段階ではいつも様々なニーズに対してどう設計したらよいかを考える必要があり、そういう部分を考えるのが好きな一方で「このUI設計で大丈夫だろうか・・」と作りながら不安に思ったりもしますし、レベルデザインの側面、ユーザビリティの側面、エンジニアリングの側面、などなど、、それぞれを考慮し整理しながら作っていくには私個人での判断だけでは限界があります。

それらの視点をどう吸収し混ぜながらより精度を上げていく努力ができるか、その手段をどう身につけていくかにフォーカスするために、しばらくグラフィックやアニメーションの制作からは離れて、設計段階に集中するためにUXデザインの領域でトライ&エラーを繰り返してみることにしました。

(ただ、UXデザインでやってることは併走できる人がいないと手探り状態のまま1人で推進していくのは超超むずかしいので、UXデザインの基礎を教えてくれる方がいるのは本当にラッキーでした。今のマネージャーには感謝感謝です・・。)

新規開発の経験はまだまだ足りていないのと、ゲーム開発でUXデザインという組み合わせ自体事例として決して多いわけではないので前途多難ですが、まずは今の仕事に集中して楽しみながら吸収できたらいいなと思います。

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