見出し画像

【note】夫が亡くなってからはじめて

ひとりカラオケに行ってきた。
夫が亡くなる前は月に1〜2回、ストレス解消で2時間ほど行ったりしていた。

夫が亡くなってからはもちろん、そんな気になれなかったし歌を歌うことなんて不謹慎だと思っていた。
でも今日は歌っても良い気がした。自分の価値観を自分ではみ出ることをしてみたかった。

夫が亡くなって約7ヶ月が経とうとしている。
亡くなった日から10ヶ月以内に相続を終えなくてはならないが、各所の審査や郵送でのやり取りなど、一度のやり取りでは終わらないのが相続。何をするにも日数がかかる。
あと3ヶ月…無事に終わるのだろうか。

夫のいない生活に慣れるのはそんなに時間を必要としなかった。元々仕事で朝から夜遅くまでいなかったし、週末も土日どちらかはサービス出勤していたからだ。私も子供もそういう生活は通常運転で、夫がいないと思い知らされるような毎日を過ごしていないことが救いかもしれない。

でも、ふとした時に困ることがある。

その①私は車の運転ができない。
ドペーパーのゴールド免許所持者だ。
子供が体調不良で病院へ連れて行くときや雨の日の休日、買い物、習い事の送り迎えなど、運転できたらな〜と思うシーンがたまにある。

元々運転に慣れないままペーパーになってしまったのに今から運転しても良いのだろうか?ペーパー教習は予約したが、それを受けたからといって急に次からひとりで運転なんてできる気がしない。

その②子供に関するちょっとした心配事を話せる相手がいない
小学校高学年ともなると人間関係で難しい問題があったり、親が無力な領域が出てくる気がする。
心配性な私は毎日のように胃が痛い。

夫がいたときは、夜仕事から帰って来たらちょっとだけ「こういうことがあってさ〜。なんかね〜。」みたいな話しをすることがあった。
まぁ、夫はいつも決まって「あんまり考えすぎない方がいいよ」としか言わないんだけど。それで子供の心配モードから夫に対するモヤモヤモードにスイッチングするワケで。自分の子供のことなのになんでそんなに無関心でいられるんだろうと内心憤慨していた。

今はそのスイッチング作業ができないため、心配事が寝ても覚めてもみぞおち辺りでモゾモゾしている。終わりがないのだ。ひとりで子供のことを背負っているという重圧のようなものも両肩にのしかかる。今の私はひょっとしたらムキムキかもしれない。

そしてムキムキとは裏腹に、突然の夫の自死に対する心の傷と子供に対する責任感と心配事とで機能性ディスペプシアになった。今くらいの時期に張り詰めていたものや疲れなどが心身ともに不調として出てくるものらしい。そうだよな。ここまで必死に「普通」の毎日を送ってきたし。


こういう書き方をすると私はとても薄情だし、夫婦仲が悪かったように印象を与えるかもしれない。でも良好とは言えなくとも、特段不仲とか憎み合ってるとかそういう訳ではなかった。
子供が休日の習い事へ行ってる間は、夫婦で買い物などへ出掛けたりしたし、家族でTVゲームをしたりもした。周りはそんな私たちを見て仲良し夫婦と言っていた。
まぁ、言うほど仲良し夫婦ではなかったとは思うけど、夫は少し変わっていたので結婚後も子供が生まれた後もずっと独身感覚を半分纏っているような掴みどころのない人だった。入籍に向けて同棲を開始した当初は「同じ家に一緒にいるのに、まるで独りみたいで辛い」状態になった。家にいるとこんな人だとはわからなかった。結婚をとり止めたいと友達に泣きながら電話したこともあった。
ネットで検索すると「カサンドラ症候群」と出てきた。この違和感、そういう事だったのかと腑に落ちた。もちろんこれは私の中だけで留めている話である。(夫については今後)
でも入籍日も迫っていたのもあり、結婚を白紙にする勇気もなかった。実家に戻ることも絶対にしたくなかった。そして腹を括ったのだった。(実家についても今後)
そこからひとつずつ私の個人的な理想の家族像を手放していったら、夫婦でも家族でもない、他人でもない形が出来上がった。それが私たちだった。そう思っていたのはもはや私だけかもしれないが。

世の中の平均的な夫婦はどんな感じなんだろう?
隣の芝は青く見えるとは言うけれど、ちゃんとお互いが関心を持って子供を協力して守っているように見える。もちろん、見えている部分がすべてではないし、どちらかというと見えない部分の方が大きいことだって解っている。

もし、夫と結婚していなければ。
寂しい思いをすることなく心通わせてあたたかい家庭を持てていた。(かもしれない)
もうひとり子供を産めていた。(かもしれない)
自死遺族となって一生消えない傷を心に負うことはなかった。(かもしれない)

言い出したらキリがないけど、でも他の人だったら今いるわが子に出会えていなかったワケで。そんな人生考えられないワケで。
そのたったひとつの理由で夫と出会って結婚したことは正解になってしまうのだ。

結婚式で使った曲は今日のカラオケでは歌えなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?