VRChat同時アクセス10万人突破! 5年で人口7倍に! メタバース人口統計レポート【2024年3月最新】
『メタバースは終わった』… 一時の劇的なメタバースブームも一旦の落ち着きを見せ、各種メディアではそんなショッキングな見出しも目立つ2024年の昨今ですが、実際のメタバース人口はブームによりどのように変化したのでしょうか? また、そのうち日本人はどれくらいの割合を占めるのでしょうか? ユーザーの性別や年齢構成はどうなっているのでしょうか?
本記事では、メタバースの革命性を論じた著書『メタバース進化論(技術評論社)』で「ITエンジニア本大賞2023(翔泳社)」を受賞し、MoguLive VTuber Award 2023「今年最も輝いたVTuber」にも選出された筆者「バーチャル美少女ねむ」が各種統計データを元に徹底解説します。約5,500字、書き下ろしです!
※4/11追記:こちらの記事、ゲームメディア「電ファミニコゲーマー」様・「Yaboo!ニュース」様に転載頂きました!
2024年元日、VRChatの同時アクセスが「10万人」を突破
メタバースの定義については識者からさまざまなものが提案されていますが、現時点では定まったものがある訳ではありません。筆者は「そこで人生が送れるレベルの三次元仮想空間」を想定しており、「創造性」「経済性」「没入性」などを要件として提案しています。
本記事では、それら要件を満たしており、近年特にメタバースとして注目の集まる「ソーシャルVR」を対象に議論します。ソーシャルVRとは、VRゴーグルで没入しオンラインの三次元仮想空間でアバターの姿でコミュニケーションができるサービスの総称です。ソーシャルVRの代表例はアメリカのベンチャー企業・VRChat社が2017年から提供している「VRChat」というサービスです。
筆者がスイスの人類学者リュドミラ・ブレディキナと共同で実施した「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」によると、VRゴーグルを使ってソーシャルVRを利用している回答者約2,000名のうち90%以上が地域に関わらずVRChatを「よく利用する」と回答していました。一番低い北アメリカでも92%、一番高い日本では96%が「よく利用する」と回答しており、VRChatの圧倒的な人気ぶりが伺えます。
VRChatでは世界中のユーザーが集まる年末年始に瞬間最大同時アクセス数が新記録を更新することが通例となっていますが、今年はどうなったのでしょうか。
スウェーデンのVRChatユーザーFoorack(風楽)さんが主導してVRChatのAPI情報を記録しているコミュニティプロジェクト「VRChat API Metrics」のデータによると、VRChatの同時アクセス数は、2024年1月1日元日の14:27(日本時間)に105,991人に達し、遂に「10万人」の大台を突破しました。
ピークに達した直後に数字が大きく下がっていますが、VRChat公式の発表(Developer Update)によると、想定を超えるアクセス数急増の負荷に耐えられずサーバーが落ちてしまい、サービスが45分間停止してしまっていたそうです。昨年2023年元日にピークに達したのは約30分後の14:56ですので、サービスが停止しなければ12万人程度に達していたかもしれません。ともあれ、かなりの規模感になってきたことは疑いようがありません。
VRChatの人口は5年で約7倍に
VRChat API Metricsで近年の同時アクセス数の推移を見ると、2019年頃は平均1万人程度だったのが、2024年1~3月現在には6~8万人程度になっており、直近5年間で約7倍に急拡大していることがわかります。
背景としては2020年3月頃からのコロナ禍拡大、2020年10月に発売したVRゴーグル「Meta Quest2」の爆発的普及が考えられます。図中青線がAndroid版(Quest単体、モバイル版等)やMeta Store版を含んだもので、オレンジ色の線はSteam版(PCVR、デスクトップ)のみのアクセス数です。Quest2の発売後Steam版以外のアクセス数が爆発的に増大し、現在は全体の半数以上を占めていることがわかります。
※なお、2022年7~8月にかけてSteam版(オレンジ)のみ大きく数字が落ち込んでいますが、これは2022年7月27日にVRChatがMOD(改造クライアント)撲滅のために「Easy Anti Cheat(EAC)」というセキュリティを導入したことに反対して一部ユーザーが別のソーシャルVRに移動したことが理由だと考えられます。現在ではSteam版も当時とほぼ同じ程度に回復しています。
Quest2は「6DoF+PCVR対応のフルのVR体験」が可能な4K解像度の高性能VRゴーグルでありながら、それまでの常識を根底から覆す超低価格でVRを大きく普及させました。Forbesの記事によれば、Quest2の出荷台数は2023 年第 4 四半期時点で1,800万台を超えているそうです。
さらに2021年10月28日、ザッカーバーグ氏がFacebookの社名を「Meta(メタ)」に変更してメタバース事業に社命を賭けて推進すると発表した、いわゆる「Meta宣言」により世界的な「メタバース」ブームが巻き起こりましたが、ブームが収束した2023年以降も同時アクセス数は落ち込んでいない事がグラフを見るとはっきりとわかります。
VRChatの世界人口は数百万人規模
瞬間的な同時アクセス数ではなく、VRChatの世界人口はどの程度になるのでしょうか?
VRChatは月間アクティブユーザー数(MAU)を公開していないため正確な数字はわかりませんが、今回の瞬間最大同時アクセス数が10万人だったので、その概ね数十倍程度だと考えて、「数百万人」の規模感ではないかと私は推定します。
比較のため、全世界のwebのアクセス状況を集計しているsimilarwebを確認したところ「vrchat.com」の2024年2月の月間訪問数は760万人でした。この数字とも概ね符号していると言えそうです。
また、メタバース事業コンサルタント「Nic Mitham」氏は、詳しい算出方法を明らかにしていませんが、VRChatのMAUは2022Q1時点で「400万人(図中"4m")」と推定しています。仮にこれが正しいとすると、これからさらに2年経っており、当時(2022Q1時点、4~6万人程度)と現在(2024年1~3月、6~8万人程度)を比較すると同時アクセス数が約4割増になっているので、現在では560万人程度になっていると考えられるかもしれません(400万人×140%)。
ソーシャルVR全体の世界人口は数百万人から一千万人程度
VRChatだけでなく、ソーシャルVR全体の世界人口はどの程度になるのでしょうか?
先述のとおり、ソーシャルVRユーザーの90%以上がVRChatを「よく利用する」と回答しているので、VRChatを含むソーシャルVR全体の人口(MAU)は、VRChat人口一割増し程度だと仮定して「数百万人から一千万人程度」の規模感ではないかと私は推定します。
VRChatの日本人割合は「12.9%」で2位
VRChatのユーザーのうち、日本人は何割程度なのでしょうか?
similarwebによると、「vrchat.com」の2024年2月の月間訪問数760万人のうち、国別では日本が「12.9%」でアメリカに次ぐ2位となっています。これはあくまで「vrchat.comのwebアクセス数」の比率なのでこれがそのまま「VRChatユーザー」の比率と全く同じではありませんが、概ね近しい数字ではないかと考えられます。ちなみに昨年は12.3%でしたので微増しています。
2023年の国連の世界人口ランキングによると、世界人口に占める日本人の割合は1.5%程度なので、VRChatでは日本人の割合がかなり多いと言えるでしょう。
VRChatの日本人人口は数十万人規模
先述のVRChatの人口(MAU)の推定値「数百万人」に日本人の割合「12.9%」を適用すると、VRChatにおける日本人の人口(MAU)は「数十万人」の規模感ではないかと考えられます(数百万人×12.9%)。
ソーシャルVRでは女性が増加傾向
ソーシャルVRにおけるユーザーの性別の割合はどうなっているのでしょうか?
同じく「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」によると、ソーシャルVRユーザーの回答者のうち男性が82%で女性が16%でした。2021年に行った同等の調査では男性が87%で11%が女性でしたから、すくなかった女性の割合が増加傾向にあることが分かります。
検証のためsimilarwebによる「vrchat.com」の訪問数の内訳を確認したところ、男性が76%で女性が24%とかなり近い数字を示していました。こちらも同じく女性の比率が増加傾向を示しています。
ソーシャルVRでは20代以下が過半数
ソーシャルVRにおけるユーザーの年齢の割合はどうなっているのでしょうか?
同じく「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」によると、年代については、VRChatの場合、20代以下が53%(19歳以下が7%、20代が46%)と過半数を占めていました。
検証のためsimilarwebによる「vrchat.com」の訪問数の内訳を確認したところ、24歳以下が60%と、こちらも同じくかなり近い数字を示していました。
まとめ:経済の本格化で『メタバースで生きていく』がますます当たり前になる
いかがだったでしょうか。実際に各種統計データを見ると、ブームに関わらず人口は着実な増加を続けていることがはっきりとわかります。また、女性が微増傾向にあるなど、ユーザーの多様化の兆候もみられます。『メタバースは終わった』とはかけ離れた、『メタバースで生きていく』が当たり前の世界がすでに訪れている事実が浮かび上がって来たのではないでしょうか。
現在VRChatはユーザーの収益化を促進する「クリエイターエコノミー」導入を進めるなど、今後メタバース内経済が本格化する動きも大きくなってきています。
「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」でも、回答者のうち現在ソーシャルVR関連の活動で収益を得ている人の割合が26%、さらに「将来的にソーシャルVR関連の活動の収入を主軸に生活していきたい」と答えた人の割合が34%と、住人も経済活動にある程度積極的な様子が見て取れました。
経済活動が活発化するとコンテンツの数も増え、一般ユーザーの参入もこれまで以上に増えていくでしょう。2024年、『メタバースで生きていく』が着実に広がりつつあるソーシャルVRの世界。機会があればぜひ実際に訪れてみてください。
世間のブームとは関係なくそこで力強く個性的に生きている人々の姿が、黎明期の今でなければ見れない景色が、そこには必ずあります。
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メタバースの革命性を論じた著書『メタバース進化論(技術評論社)』で「ITエンジニア本大賞2023」ビジネス書部門"大賞"を受賞しました。窓の杜様による受賞記念の約2万字のロングインタビュー記事をこちらで掲載頂いています。
この記事でも登場した「Quest2」をはじめ、ぞくぞく登場する新世代VRゴーグルについて、こちらの記事で解説しています。(こちら2023年版ですが、そのうち最新版を書きます)
VRChatの「クリエイターエコノミー」について、こちらの記事で解説しています。
注目が集まる仮想空間「メタバース」について、その定義や由来、よくある誤解、現在と課題、そして可能性をこちらで解説しています。
関連して、セカンドライフの人口統計はこちらにまとまっています。ユーザーのさぶろーさんにお願いして書いてもらいました。
昨年2023年に公開したメタバース人口統計レポートはこちらです。
参考図書:『メタバース進化論(技術評論社)』
バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論(技術評論社)』は、メタバースに興味を持った幅広い読者の方を対象に、現在のメタバースの真の姿、そしてその革命性をわかりやすく伝える「メタバース解説書の決定版」です。自身も黎明期のメタバースで暮らす"メタバース原住民"の一人である著者・VTuber「バーチャル美少女ねむ」が、自分自身の体験、数多くのユーザーへのインタビュー、そして全世界のユーザー1,200名を分析した大規模調査「ソーシャルVR国勢調査」を元にメタバースのリアルを明らかにする、世界初の「仮想世界のルポルタージュ」です。
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