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VRChat同時アクセス9.2万人を記録! コロナ禍とQuest2で人口急増! メタバース人口統計レポート【2023年1月最新】

コロナ禍とVRゴーグルの低価格化を受けて、近年「メタバース」として注目の集まる世界最大のソーシャルVR「VRChat」のユーザー数が急速に拡大しています。ソーシャルVRというのは、VRゴーグルで没入しオンラインの三次元仮想空間でアバターの姿でコミュニケーションができるサービスの総称です。VRChatは年末年始に世界中のユーザーが集まり、瞬間最大同時アクセスが新記録を更新することが通例なのですが、今年はいったいどうなったのでしょうか。また、ソーシャルVR全体のユーザー数はどの程度で、そのうち日本人はどれくらいいるのでしょうか。

ソーシャルVR「VRChat」での夏祭りの様子 - メタバース進化論(技術評論社)

本記事では、メタバース解説書『メタバース進化論(技術評論社)』の著者である私「バーチャル美少女ねむ」が各種統計データをまとめて考察します。約5,800字、書き下ろしです!

※2/2 追記:本記事はエンタメ×テクノロジーのニュースメディア「リアルサウンド」様、「Yahoo!ニュース」様にも転載して頂きました!


VRChatの瞬間最大同時アクセス、2023元旦に新記録「9.2万人」を突破!

スウェーデンのVRChatユーザーFoorack(風楽)さんが主導してVRChatのAPI情報を記録しているコミュニティプロジェクト「VRChat API Metrics」のデータによると、年末年始のVRChatの瞬間最大同時アクセスは2023年1月1日14:56(日本時間)に「92,319人」に達しました

VRChatの瞬間最大同時アクセス、2023元旦に新記録9.2万人を突破 - VRChat API Metrics

昨年の年末年始における記録だった「89,300人」を上回り、史上最高値を更新しました(Foorackさんにもこちらが最高値である旨確認して頂きました)。また、VRChatはSTEAM(PCVRとデスクトップ)とQuest単体でのアクセスに対応していますが、そのうちのちょうど半数の49.9%(46,044人)がSTEAMユーザーによるアクセスでした。

※出典:昨年2022年の年末年始における瞬間最大同時アクセス数は「89,300」でした → New World Notes: VRChat User Concurrency Hit Nearly 90,000 Last New Year's Eve!

STEAMによるアクセスだけに絞ると(Quest単体を除くと)、全体の史上最高値更新からわずか5分後、2023年1月1日15:01(日本時間)にこちらも「46,663人」の史上最高値を達成しています。

VRChatの「STEAM経由」の瞬間最大同時アクセス、2023元旦に新記録4.6万人を突破 - VRChat API Metrics

なお、STEAM側の公開している別データ(参照元:VRChat - Steam Charts)を見ても、VRChatの瞬間最大同時アクセスが最高値を記録したのが2023年1月1日の「46,509」とほぼ同じ値になっていることから、かなり正確な数字と言えそうです。

VRChatの「STEAM経由」の瞬間最大同時アクセス、2023元旦に新記録4.6万人を突破 - Steam Charts : VRChat

コロナ禍とQuest2登場でVRChatのユーザー数は5倍以上に拡大

過去5年間のVRChatの同時アクセス数の推移を見ると、2019年頃は平均1万人程度だったのが、2022年は5~7万人程度と5倍以上に急拡大しています。背景としては2020年からのコロナ禍拡大と、2020年10月に発売したVRゴーグル「Meta Quest2」の爆発的な普及が考えられます。図中青線がAndroid版(Quest単体、モバイル版等)やMeta Store版を含んだもので、オレンジ色の線はSteam版(PCVR、デスクトップ)のみのアクセス数です。Quest2の発売後Steam版以外のアクセス数が爆発的に増大し、現在は全体の半数以上を占めていることがわかります。

過去5年間のVRChatの同時アクセス数の推移(2018年1月~2023年1月) - VRChat API Metrics

「Quest2」は「6DoF+PCVR対応のフルのVR体験」が可能な4K解像度の高性能VRゴーグルでありながら、それまでの常識を根底から覆す超低価格でVRを大きく普及させました。Metaは出荷台数を公開していませんが、2022年6月時点でなんと「1,500万台」という推計もあります。

※参考:新世代VRゴーグル分類マップ&解説【PICO4・Quest Pro・VIVE XR Elite・MeganeX】

なお、2022年は7~8月にかけてSTEAMによるアクセスのみ大きく数字が落ち込んでいますが、これは7月27日にVRChatがMOD(改造クライアント)撲滅のために「Easy Anti Cheat(EAC)」というセキュリティを導入したことに反対して一部ユーザーが別のソーシャルVRに移動したことが理由だと考えられます。

過去2年間のVRChatの同時アクセス数の推移(2021年1月~2023年1月) - VRChat API Metrics

※参考:VRChatのセキュリティアップデートに、一部ユーザーが猛反発 原因はなにか? - MoguLive

今回なんとか最高値を更新したものの、昨年と比べて大きく数字が伸びなかったのは、これによるユーザー減少が影響していそうです。

VRChatの月間アクティブユーザー数(MAU)は?

瞬間的な数字ではなく、「利用者全体の数」はどの程度なのでしょうか? VRChatは月間アクティブユーザー数(MAU)を公開していないため正確な数字はわかりませんが、今回の瞬間最大同時アクセス9.2万人の数十倍だと考えて、「数百万人程度」の規模感だと私は推定します。

メタバース事業コンサルタント「Nic Mitham」氏の推計では2022Q1時点で「400万人(図中"4m")」となっており、私も概ねこれくらいの規模感だと考えています。これから1年が経っていることと、今回の記録更新を加味して考えると、2023年1月現在の最新の値はもう少し多く、既に「数百万人台の後半(500万人~)」に到達しているのではないでしょうか。

Nic Mitham : Introducing The Metaverse Universe(2022Q1)

※出典:Nic Mitham : Introducing The Metaverse Universe

2023年のメタバース業界予測として海外のメタバースメディア「New World Notes」は「VRChat公式がMAU (月間アクティブ数) 1,000 万人を発表するのでは」と予想しています。こうなってくると、もはや小国家なみの人口ですね!

※出典:New World Notes: My Metaverse-Related Predictions for 2023, Plus Readers' Own

全世界のソーシャルVRのユーザー数は?

VRChatを含む全世界の「各種ソーシャルVR"全体"のユーザー数」はどの程度なのでしょうか? 私がスイスの人類学者 Liudmila Bredikhina と共同で実施した「ソーシャルVR国勢調査2021」では、VRゴーグルを使ってソーシャルVRを利用しているユーザーの91%(北米)から99%(日本)がVRChatを「よく利用する」と回答していました。従って、ソーシャルVR全体のユーザー数も先程のVRChatより「やや多い程度」だと考えられるため、2023年1月時点で「数百万人程度、多く見積もっても一千万人程度」と推定します。

よく利用するソーシャルVR - ソーシャルVR国勢調査2021

ちなみにこの調査の対象には含まれていませんが、RecRoomやclusterではVRゴーグルを全く用いずに利用しているユーザーがかなり多いそうなので、それらも含めるともっと大きい数字になります。

日本のVRChatのユーザー数は?

そのうち、日本のユーザー数はどの程度なのでしょうか? 全世界のwebのアクセス状況を集計しているsimilarwebによると、「vrchat.com」の2022年12月の訪問数870万人のうち、国別では日本が「12.3%」で2位となっています。

vrchat.comの訪問数870万人(2022年12月)- Similarweb : vrchat.com
vrchat.comのアクセス数、日本が「12.3%」で2位(2022年12月)- Similarweb : vrchat.com

1. アメリカ - 35.4%
2. 日本 - 12.3%
3. カナダ - 4.1%
4. イギリス - 4.1%
5. ブラジル - 3.8%
その他 - 40.3%

vrchat.com国別アクセス数トップ5(2022年12月)- Similarweb : vrchat.com

2019年の時点では日本人の割合はわずか「3.6%」で国別では8位でしたから、ここ数年で日本人のVRChatユーザーの割合が急増したと考えられます。念の為2022年10~12月の三ヶ月間でも割合を集計してみましたが、概ね近しい数字だったので、どうやら間違いなさそうです。

※出典:New World Notes(2019年5月23日): VRChat Site User Demographics: 430,000 Uniques, Mostly Male and Over 25

これはあくまで「vrchat.comのwebアクセス数」の比率なのでこれがそのまま「VRChatユーザー」の比率と全く同じではありませんが、概ね近しい数字ではないかと考えられます。この数字を適用して推定すると、日本におけるVRChatの月間アクティブユーザー数(MAU)は2021年1月時点で「数十万人程度」の規模感だと考えられます(数百万人×12.3%)。

実際にVRChatは、急拡大する日本のユーザーへの対応として、2021年6月16日に日本専用サーバーを実装しています。

※参考:ソーシャルVRアプリ「VRChat」に日本サーバー実装! 低Pingの快適環境が実現 - MoguLive

ちなみに、性別別では「女性」が20.5%に対し「男性」が79.5%とかなり多め、年齢別では「18~24歳」が32.2%で最多と比較的若めになっています。この傾向は2019年から大きく変化していません。

vrchat.com性別・年齢別アクセス数(2022年12月)- Similarweb : vrchat.com

男女別
・男性 - 79.5%
・女性 - 20.5%

年齢別
・18-24歳 - 32.2%
・25-34歳 - 31.4%
・35-44歳 - 15.6%
・45-54歳 - 9.7%
・55-64歳 - 6.5%
・65歳以上 - 4.6%

vrchat.com性別・年齢別アクセス数(2022年12月)- Similarweb : vrchat.com

Horizon Worldsの月間アクティブユーザー数(MAU)は20万人未満

Horizon Worlds(出典:公式動画

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、Metaが現在総力を挙げて開発中のソーシャルVR「Horizon Worlds」の月間アクティブユーザー数(MAU)は2022年10月時点で「20万人に満たない」とされています。現在はアメリカ・カナダ限定での提供ですし、VRユーザーのみを対象とした新興サービスのユーザー規模としてはかなり大きい部類だと言えますが、Metaの目標を大きく下回っていて事業としては苦戦していると報道されています。

しかし、VRChatは「瞬間最大同時アクセス」だけでその約半分の「9.2万人」ですから、改めてその熱狂ぶりが伺えますね。

※出典:米メタのメタバース、成果は期待外れ 社内文書 - WSJ

まとめ:メタバースは新たなステージへ

いかがだったでしょうか。ソーシャルVRは身近な人とプライベートなコミュニケーションを楽しむことが多いため、普段仮想世界で暮らしているVRChatのヘビーユーザーの方も利用者数が急拡大していることに驚いたのではないでしょうか。

これまで「ソーシャルVR」と言えば人と人とのコミュニケーションの観点が着目されることが多かったですが、これくらいの規模感になってくると、それに加えて、徐々にユーザー同士で価値の交換を行う「メタバース内での経済」が成立し、本当の意味で「メタバースで生きていく」ことが当たり前になっていくのではないかと考えています。

コンテンツの数も増え、一般ユーザーの参入もこれまで以上に増えていくでしょう。2023年、これから新たなステージを迎える「メタバース」ソーシャルVRの世界から目が離せませんね!


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この記事でも登場した「Quest2」をはじめ、ぞくぞく登場する新世代VRゴーグルについて、こちらで解説しています。

注目が集まる仮想空間「メタバース」について、その定義や由来、よくある誤解、現在と課題、そして可能性をこちらで解説しています。

参考図書:『メタバース進化論(技術評論社)』

バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論(技術評論社)』は、メタバースに興味を持った幅広い読者の方を対象に、現在のメタバースの真の姿、そしてその革命性をわかりやすく伝える「メタバース解説書の決定版」です。自身も黎明期のメタバースで暮らす"メタバース原住民"の一人である著者・VTuber「バーチャル美少女ねむ」が、自分自身の体験、数多くのユーザーへのインタビュー、そして全世界のユーザー1,200名を分析した大規模調査「ソーシャルVR国勢調査」を元にメタバースのリアルを明らかにする、世界初の「仮想世界のルポルタージュ」です。

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バーチャル美少女ねむ/Nem⚡メタバース文化エバンジェリスト
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