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セクハラされる私とされない友人

”昨日、あんな強気な文章書いちゃったけど。

やっぱり自分を責めてしまう。”

下書きに残っていた。2020年6月22日に、私はこの二行だけを書いて途中でやめてしまった。

昨日どんな強気な文章を書いたのかも今となっては覚えてないけど、そうか、去年の私は自分を責めていたんだ。

続きが書けなかったのは、男性に対して友達と同じように接していても、私だけがセクハラを受けてしまう。私が気を持たせるような接し方をしちゃったんだ、私が悪いんだって自分を責めながらも、どこかで私が悪いのかな?悪くなくない?でも誰が悪いのか、怒りの矛先が見つかっていなかったからだと思う。アメリカに来て、今やっとこの続きが書けそう。

初めてセクハラを受けた記憶を思い返してみたら、それは多分小学4年生、10歳。名札をつけていないことを朝礼で指摘されて、合唱コンクールの練習をしているときに狭い列の間に担任の先生(男)が割り込んできて、名札をつけていない女子の胸元を指差して回った。10歳はちょうど胸が発育し始めてきた頃で、スポーツブラをつけ始めてるかどうか友達と話していた。だから胸への視線はかなり敏感になっていた。胸元を指で差されてメガネをクイッとあげながら、至近距離でジロジロ見られたあのときの嫌悪感は、21歳になった今でも鮮明に覚えている。

つぎは、小学6年生、12歳。この頃、私は芸能養成所に通っていた。クリスマス会の特別ゲストとして招かれた映画監督に挨拶したとき、手を握られて手の甲にキスされた。好きな人にやられたら、別に何の嫌な気もしないだろうけど、自分のおじいちゃんくらいの年齢の人にいきなりやられてゾワっとした。そのときはこれがセクハラなんて思っていなかったけど、無理やり笑うしかなかったあの瞬間はセクシャルハラスメントを受けていたんだと思う。

中学3年生、15歳。中学に上がって地元のライブハウスに通うようになった。田舎のライブハウスだから、もちろんと演者と客の距離は近くて。私の推しがいたバンドの、推しじゃないベーシスト(ロン毛のおじさん)に気に入られてしまい、ライブの情報を教えるからという名目でラインを交換させられた。でも、ライブ情報も私の推しの情報も全然送られて来なくて、「今日はこんな仕事をした」とか「風邪をひいた」とか全く興味のないラインが送られ続けた。最終的に「添い寝して」と言われてしまい、そのまま怖くなってブロックした。年上だから失礼があってはいけないと思って、必死に返事をしていただけが「こいつイケる」と思わせてしまったのだろうか。小学生の頃に受けた(今思えば)セクハラは、「キモい」というだけで片付けていたけど、このことをきっかけに私自身の男性に対する接し方が間違っているのかもしれないと思うようになった。

18歳。車の免許を取るために車校に通った。実技試験がある仮免試験の前日、最後の講習で助手席に座っていた男の先生から「明日は短いスカート履いてきたら?そしたら受かるから」と言われた。最初は意味がわからなかったけど、あー、そういうことかと理解した。先生は笑っていたから、彼には自分がセクハラをしているという認識は微塵もないんだろうな。

大学進学を機に上京した。中高を女子校で過ごして、初めて共学の大学に入学。驚いた。周りの女子の男性への接し方は、私が話を聞いているだけでも「完全に気を持たせてるやん」っていうくらい、距離が近かった。でも、私の周りでセクハラを受けた子はいなかった。

カフェバーでアルバイトを始めた。ほぼ常連さんしか来ないお店だったから、お酒を奢ってもらって一緒に飲んだりもした。「こんな仕事をしているんだ」、「若いときはこんなことをした」、そんな話をしてくる常連さんに「すごいですね」って答えているだけなのに、ほっぺを触られて2人で飲み行こうと誘われた。私以外のバイトメンバーも、よいしょをしたり、一緒にお酒飲んで就活の相談をして距離も近い。そのまま盛り上がったらカラオケにも行っちゃったりする。けど、お客さんと従業員の距離を保てている。同じような接客をしているのに、媚びを売ってるつもりはないのに、どうして私だけがセクハラを受けるのかわからなかった。セクハラをされる私に問題があるのだと思った。

大学2年生、19歳。この頃からインタビュアーになりたいという夢を持ち、いろんな講座に顔を出すようになった。そのうちのひとつで、講座運営のためのクラウドファンディングの文章を手伝う機会をもらった。講座の主催者(38歳既婚者、でも離婚届にすでハンコを押しているとかなんとか初対面のときに語られた)と打ち合わせをすることになった。その人は「二日酔いだ」と言った。私は冗談を混ぜて「しじみ汁を飲んでください」と答えた。そしたら、「今度作ってよ」って言われた。今までの経験から、この時点でこの人は私の要注意人物になった。
打ち合わせが終わって、「もう少し練りたいから火曜日に飲みにいこう」と連絡が来た。これまでセクハラを受けて学んだ自己防衛方法から、同じ講座運営の女性メンバーも交えて3人で飲めないかと提案した。「いいね、誘っておく!」とだけ返信が来て、それからなにも連絡がなかった。火曜日の夕方、「新宿駅のスタバで待ってるけど、何時に来れそう?」と通知が来た。私は怖かった。もし、その女性スタッフの人が来れないようなら断ろうと思っていたから。女性スタッフの人が今日来れるのか来れないのかも分かっていない状態で新宿へ向かう足は重かった。主催者の人の誘いをドタキャンするわけにもいかないと思った。スタバに着くと、主催者の人1人しかいなかった。その後レストランに移動した。店員さんが「2名でご予約いただいている〇〇さんですね」と言った。最初から2人きりのつもりだったんだと思った。

その人は京都から来ていた。火曜日の朝に東京に着いたらしく、まだホテルをとっていないからホテルが見つかるまで2軒目も付き合ってほしいと言われた。飲みの最中も、「今度実践したいから、今までできゅんとしたシチュエーションを教えて欲しい」、「また会いたいから彼氏を作らないで」と言われた。2軒目でさらにお酒が入ったその人は、一向にホテルを探すそぶりを見せず、「いつもは東京に住んでいる友達の家に泊めてもらっているんだ」と私が「よかったら私の家に泊まりますか?」っていうことを期待しているような気がした。次の日も授業があって早いからと、私は新宿駅まで走って逃げた。次の日、19時から講座が予定されていた。スタッフは準備のために17時に集合するよう言われたけど、会場に着いても私以外のスタッフは誰もいなかった。「着きました」と全体グループで報告したら、主催者のその人から個人に電話がかかってきた。「荷物を運ぶから○号室まで取りに来て」とその人が泊まっているホテルの部屋に来るよう言われた。

その人はもちろん、私が19歳であることも知っている。私はまだ未成年の子どもとして、大人の目上の方と接するときに相手に失礼がないようなコミュニケーションを心がけていた。でもそれが勘違いさせてしまったのか、今回も失敗してしまったと自分を責めた。
年上の人を立てようと思ってコミュニケーションしている、でもたしかに一方で、この人から自分のやりたい仕事につながるように、”女”としての言動を使ってる自分もいる気がした。自分のしてることってなんなんだろう、消費されている感覚があった。相手から向けられる性的な目と自分の中の汚い部分が混ざって、とにかくつらくて苦しくて気持ち悪かった。

結局、サークルが忙しくなったと適当なことを言って講座をやめた。無理やり抱きつかれたわけでも、直接ホテルに誘われて押し倒されたわけでもない。本当に荷物を運ぶためにホテルの部屋番号を伝えただけかもしれない。でも、相手との信頼関係が全くないうちから、配慮のない距離の詰め方をされることに耐えられなかった。他のメンバーとって私は途中で仕事を投げ出す責任感のない大学生になってしまっただろう。

大学3年生、20歳。俗に言うインターンセクハラを受けた。同じ大学の社会人1年目の先輩に「ES見てあげるから会おう」と言われた。最初はスタバでちゃんと添削したくれた。でも結局そのまま飲みに行くことなった。横並びで飲みながら、机の下で太ももに手を置かれた。そのまま無理やり恋人繋ぎをされた。店を出て駅まで向かう途中まで肩を組まれて何度もホテルに誘われた。挙げ句の果てには、無理やりキスされそうになった。初めて力づくでされそうになって、今までの何倍も怖かった。断ったら、「真面目だね」って言われた。
私はボロボロになった。
悲しかった、真剣に、純粋に先輩がいる業界で働きたいという気持ちで会ったのに。全然タイプでもないし、そういう態度をとってるつもりは微塵もないのに、こんなふうに扱われてしまう自分が惨めで仕方がなかった。女性としても、人としての自信が無くなった。

無理やりキスすることもレイプになるのか疑問に思って、ボロボロになった精神状態を、同じことをされた人のスレッドみたら落ち着くかと思って、「無理やりキス レイプ」で検索してみた。でもヒットしたのはそういうシチュエーションのAVだけだった。さらに悲しくなった。

友達に相談したら、「それは魅力があるからだよ」、「私はそういう状況になったことがないから少し羨ましい」と言われた。セクハラを受けたと助けを求めることが、自慢していると受け取られることがある。相談するのにも、勇気が必要になった。

大学3年生、20歳。ライター講座に通い始めた。忘年会が開かれて少人数で2次会に行った。恋愛の話になって、私は彼氏がいたことがないと話した。終電が無くなって私は隣駅に住んでいる男の人とタクシーを乗り合わせることになった。講座の先生に「送り狼に気をつけてね。でも女性の幸せを教えてもらういい機会かもね」と言われた。 すんごい怖い先生だったけど、この時点で私はその人を見下すことにした。女性の幸せって何?男性に抱かれることが最上の幸せなんですか?そんなにもあなたには女性を満足させられる自信があるんですねと言ってやりたかった(言えなかったけど)。

「私は男運がなさすぎる」ではもう片付けられない。
今もまだ、私のコミュニケーションの仕方が悪いんだっていう気持ちもあるけど、自分に言い聞かせるつもりで、あえてこう言いたい。

私は圧倒的に悪くない!!!

アメリカに来て、同意なしの性行為はもちろん、抱きついたりキスするにしても、すぐに刑務所行きだということを聞いた。「痩せているね」が褒め言葉にならないくらい体型に関して他人があーだこーだ言うのがタブーな環境の中で、自分の体に関して他人から勝手に言葉を投げかけられたり、触られたりしていいはずがないって思えるようになった。私の言動がどんなふうに受け止められたかどうとかじゃなくて、自分からホテルにも誘ってもいない、好きだとも言っていないのに、何言ってもいい、何してもいいって思う方が100%悪いんだと思えるようになった。

アメリカに住んでいる友達に、この私の体験談を話したら、「カウンセリング受けた?」って自然に聞かれた。アメリカに来て1番驚かされたことはカウンセリング事情だった。(次の投稿で詳しく書きます!)

日本にいたら同情しかされない。けどアメリカは情報。「かわいそうに」、「辛かったね」で終わらせたらいけない。どうしてそうなってしまったのか、次からどうすればいいのか、セクハラされたことでどんな影響が出ているのか、全て情報として記録されて学んで改善していかなかればならない。セクハラ、セクシャルハラスメント、性犯罪、、、単語で片付けるんじゃなくて内容をしっかり見て、問題として認識していかなきゃいけない。

去年までだったら、私が生きている世界はこんなもんなんだって諦めていた。でも、どんな服を着ていても、どんな風に接していても同意のないそういう行為は性犯罪なんだと信念を持てるようになった。

もっと自分がされてきたことと向き合って、これから私がどうしていかなきゃいけないのかをじっくり考えていきたい。

今回は自分のための一個のセラピーとして書いてみた。私が受けたセクハラの記録。

もっともっと学びたい、強くなりたい。

女性の体を持って女性として生きていく、これからのために。


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