見出し画像

【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 3月20日~3月26日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。
やっと自分自身の考え方のしばりから逃れられるようになりました。暑かったり寒かったり、いろんなことがあって大変ですよね。
今週もそんな中ですが、お付き合いいただけるとうれしいです。

3月20日

今日は友人とお茶をしてきました。
詩を読んだり書いたりする友人がいると心強いです。新作1編。
夕方、渡辺スケザネさんのYouTubeチャンネルから、川本直さんとスケザネさんの対談を視聴していました。カポーティや、海外文学について知りたくなりました。
フレキシブルに動くことができるようになったので、友達と会う前に書物の旅へ。


・バーナード・マラマッド 青山南訳『テナント』みすず書房

本を書く生活は、孤独です。
その中で出会った二人の小説家志望の男性。
彼らはお互いを尊敬し合っていましたが……。
本を書くことの不穏さ、それに取り憑かれてしまう呪縛。
それから逃れるには、本と暮らすことしかありません。
それでも書きたくなってしまうというのがわたしたち書き手でもあるんです。
ああ、この気持ちわかるなあと思いながら読んでいました。
なかなか、本を書く生活をしていない方からすると、こういう生活はエキセントリックかもしれませんが、本当にのめり込んでしまうんです。
それが呪縛になるか、日々の糧になるかは、自分次第。

・三浦綾子『夢幾夜』角川文庫

みなさんはよく夢を見るでしょうか。
わたしは本当に、天啓のような夢を一度見たら、
あとは全然見ない日が続きます。
三浦さんはすごくよく見るタイプだそう。
三浦綾子さんの小説はかなり肩肘張って本気で読まないと対峙できないのですが、
彼女の夢は緩やかな気持ちで読むことができます。のほほんとしたい時、夢につかりたい時におすすめです。

・寺山修司『幸福論』角川文庫

以前、書を捨てよ、街へ出ようという寺山修司の著書のタイトルが少しもじられていましたよね。
もちろんそれは今でも変わりませんが、
流行病というものは怖いです。
それでも人は人に会いたいと思う。
誰かと直接画面越しではなく会いたいと思う。
なんだか、ここ2年でそういうことが増えてきたように思うのです。
わたしは職場が家の仕事部屋なので、もっとそう思うのかもしれませんが……。
自分の知らなかった世界を見るという点でも、気をつけて、外に出てみる。
それでも人に会うことが、やっぱり幸福につながっていくのかもなあと思いました。
また当たり前のことが当たり前にできますように。

・太宰治『もの思う葦』新潮文庫

太宰治がエッセイを連載していたのは、
彼が生き続けていくため。
だったそうなんです。まあ、大変な人生でしたから……。
わたしたちはここまで大変な人生を送ってはいませんが、それでも今ここでなにかと立ち向かっていることはみんな一緒だと思っています。
だからこそ、生きるために書く。
わたしたちは、書くことにより生きることができる。
そう再発見させられた本でした。

・群ようこ『まあまあの日々』角川文庫


作家って世界のことに全然気がつかないと思われがちですが、
実は外に出ている人より敏感だったりします。
友達や元々の同僚との些細な会話にも、
社会や外の世界というものを見出して書きますし、そのアンテナを張って、情報をキャッチできるまで待つというのが仕事でもあったりするんだなあと群さんのエッセイを読んでしみじみ思います。

・柳田邦男『言葉の力、生きる力』新潮文庫

ことばって、力が大きいように感じます。
今は本当にネットでいつでもどこでも誰にでもことばを届けられる時代。
だからこそ、責任も重いです。
わたしたち詩人、あるいはわたしなりには、
ことばというものを書く
ということについて、常日頃から考えています。
ことばに触れて元気が出る時。
ことばに触れて落ち込む時。
どちらも持っているのがことばだと思っています。
そんなことばと感情の揺れ動きについて、柳田邦男自身が感じた臨床での出来事が綴られているエッセイです。


3月21日

春分の日! 色々なものが芽吹きだしましたね。
ちょっとびっくりするくらいうれしいこともあり。
昨日はとても楽しかったので、今日は仕事に専念します。
新年度からは朗読関係に多くでかけたいので、色々と予約したり連絡を取っていました。新作1編。

ウォーキングコースの桜。

・望月遊馬『燃える庭、こわばる川』思潮社

広島という土地、そしてそこに伝わる伝承。
受け継がれてきた物語は、そこに根付いていないとわからないものも多々あります。
わたしもちゃんと、いつか自分の育った実家周辺のことを調べて書きたいという思いがあるのですが、なかなか叶わず……。
わたしの中でも場所とそこで書けることはアツくて、例えば望月さんのご実家の広島でもたくさんの物語があります。
それは、とてつもなく大きなものから、ちょっと見逃すと見えなくなってしまうものまで。
そういったものと現在の自分を重ねて詩にしていくのは大変な努力が要ります、ただただ読んだ後にドキドキと胸が震えました。

3月22日

今日は一日雨だったので仕事をしていました。
新年度からどんどんオープンマイクにチャレンジしていきます。
朗読のための原稿を書いていました。新作3編。
今週はゲラの確認作業が多いと思うので、今日の雪が止んだら確認作業中の楽しみとして、パウンドケーキに挑戦しようと思います。
型など買って来よう。ちょっとの贅沢。

3月23日
オープンマイクの予約を1件入れ、テキストでのmtg。新作1編。
4月17日の千葉詩亭、ワタリウムから9年ぶりの(たぶん今のペンネームでは初の)オープンマイク参戦となります。
作業が終わったら散歩に行きました。

ここの桜はもうそろそろ満開。
雪を被った山を見ながら体操をしました。
青空に映えてきれい!

いつも執筆や作業をしていると、気づかずカロリーを使ってしまうので、
最近は白ご飯を一気に炊いて、半合ずつに分けておにぎりにして冷凍しているのですが、なんだか物足りないのでパウンドケーキを焼きました。

パウンドケーキの型は100均のシリコン製。
なんとか……!

3月24日

昨日の夕方、ちょっと大きめの仕事のゲラが届いたので、集中して読んだり赤入れをしたり。
昨日パウンドケーキを焼いてよかった!
集中して本を読みました。新作2編。
散歩にいつもの森へ出かけました。色々なことを考えてみたくて。

・ほしおさなえ『紙屋ふじさき記念館 春霞の小箱』角川文庫


ふじさき記念館、閉館。
それでもこのシリーズは続いてほしいなと思います。三日月堂とのコラボ、そしてワークショップでの人がいる町の楽しさ。
町には人が生きている実感がわかないと、その町ではないような気さえします。
そこで、和紙や紙小物、小冊子を作ることに人々と邁進していく百花。
いままではワークショップも、イベントも普通に開けていたけれど、そんな中やってきてしまった緊迫する事態。
わたしも思いました。11年前と似てるって。
それでも、霞の向こうにきっと通路はある、と信じたいです。
わたしたちの前には春霞のように先の見えないもやが立ち込めているけど、きっとそこに通路はあるから。
なんでなんだ!
という怒りももちろんあるのですが、
きっと。きっと。

・原田ひ香『三千円の使いかた』中公文庫

何度も読み返したい本だと思います。
買ってよかった!
解説にもありましたが、わたしはわたし、他人は他人と割り切れていない部分ももちろんわたしにもありました。
みんな価値観も違うし、お金の使い方も違います。
中学時代の時にお嬢様学校と呼ばれるところに通っていたのもあって、少女時代を共に過ごした周りの友達がどんどん大人になって、どんなお金の使い方をしているのか、気になっていました。
やっぱり大人になってもブランド物にこだわる子もいるのですが、当時わたしが見つけてきた友達は、わたしと似たような価値観を持っていて少し安心するというか。長く使えるものに大切に使っているのでとてもほっとします。
この物語に出てくる女性たちはたいがいが節約思考。
でも、女性同士集まると、何かにつけて自分の稼いでいることとか、家族からの贈り物だとか、何を買ったとか、そういう集まりになりがちで……。
正直、わたしはそういうのが苦手で、自分のお金の使い方は自分のものだからときっぱり割り切れたらすごく楽なんです。
もっと、自分の仕事のやりがいについてとか、読んでいて面白かった本の感想を語り合うとか、そういう集まりにしたいんです。
だからこそ、わたしはそういう気持ちのいい友達と付き合い続けています。
自分の価値観に合わない集まりに長くいて苦しむ。そういうことが募るとかなりのストレスになったりします。
そのモヤモヤは、自分から解決していくしかなくて。
賢く上手にお金とつきあうことで、自分の人生が豊かになるのなら、お金をかけることが全てではないように感じるのです。

一週間ぶりの森へ。
ユートピアがいつまでも守られますように。


3月25日

作業中に昨日のラジオのアーカイブ。
宮スケ今週本という、わたしがかなり応援しているスペースラジオがあるのですが、
宮崎智之さんと渡辺スケザネさんが毎週お忙しい中、渾身の選書をしてくれるラジオを聞いて一つ、リセットされるというか。
わたしどんだけ勉強不足なんだろと思うところも多々。
今日こそは書物の旅へ。
ゲラの初校に赤入れをして郵送しました。新作1編。もうそろそろツバメノートを使い切りそうです。
今日で第一詩集、インカレポエトリ叢書Ⅷ『聖者の行進』(七月堂)を刊行して1周年になります。
まさか1年経たないうちに次の新刊の準備をするとは思っていませんでした……すごいですね。
こちらから購入できます。どうぞよろしくお願いいたします。


・ランボー 小林秀雄訳『地獄の季節』岩波文庫

なんていうんですかね、若い詩人の男の子ってこういう悩みを常に抱えているし、
もしかしたら若い詩人のみんながこうなのかな
と思う気持ちもあります。
あのね、日本も変わらないような気がするんですけど、美学と老いていくことには時にそれがレイヤーを重ねて深まっていくことって、あるんですよ。
それが誰かとの出会いだったり、ご縁だったり。
美を一人で求め、部屋の中で詩を書く詩人ももちろん書き方としてはいいんですけど、仲間を見つけていくというものも、もしかしたら美学かもしれないなと思います。
孤高は強さではありません。それなりに弱さをさらけだしてこそ、誰かとまた詩や芸術について語ることができるんじゃないかと、わたしは思うよ。

・カポーティ 河野一郎訳『遠い声遠い部屋』新潮文庫

そうか、これがカポーティの長編としてのデビュー作なんですね。
すごく気になってはいたけど踏み出せなかった作家、カポーティ。
でも、彼の著書はやっぱり読んでおくべきかなと思って読んでみました。
確かにこれを若い頃書かれたら震憾が走りますね。
すごく完成度の高い「若さ」だと思います。
少年特有の屈折とした気持ちとか、ぐちゃぐちゃになってしまう心。13歳。
そういうものを多分彼はリアルタイムで感じていて、13歳の普遍的な少年の思いのリアルを結晶化した物語だと思いました。

・カポーティ 川本三郎訳『夜の樹』新潮文庫


不穏なところを抱えつつ、それでも書きたいという気持ちが止まらなかったんだろうなと思います。
これはオー・ヘンリーにかなりよく似た手法で書かれていますが、ヘンリーよりももっと独特な手段で書かれている短編集だなと思います。
ヘンリーは最後に色々な気持ちに、
それこそハッピーエンドのものが有名ですが、
そういう気持ちにさせてくれるのだけど、
カポーティはもっと複雑として絡み合った気持ちになるなあと思いながら、はまっていく自分がいました。

・カポーティ 佐々田雅子訳『冷血』新潮文庫

ランボォと一緒に読んだからですかね、
カポーティが生きて書き続けていてくれてよかったなあと思うところが多くあるノンフィクションでした。
人を見つめる目って、作家にはなくてはならないものだと思っていて。
それでも、実際に会える人数なんて生きている年数のうちでしか、自分で動かない限り限られているんです。
だからこそ、わたし自身は今年度からオープンマイクにチャレンジすることにしました。
もっと、文藝というものを場所にしていきたかったからです。
ある種、文藝は手紙に似ています。
誰かとの架け橋にならない限り、それが書かれる意味とか、そういうものの題材になりません。
そして、その中で、カポーティはカンザスを中心に取材を深めて、このノンフィクションを書きました。
わたしはカンザスというと拙いながらオズの魔法使いを思い出すのですが、
あの地で起こった惨劇の殺人事件から見えてくる、人間の本質を追い求めているように感じます。
わたしたちは誰かに憎しみを抱く。
でもそれが、誰かをいなくなるまで追い詰められるほどの憎しみに変わるまでは、かなり変化が必要だと思うし、本当はそうであってはいけないはずなんです。
でも、そうなってしまうまでの過程を追う、となると読者もすごく大変なのですが、
それがある種冷静に書かれているからこそ、今読みたいものなのかなと思いました。

・ランボオ 中原中也訳『ランボオ詩集』岩波文庫


早熟な二人の詩人のぶつかり合い。
確かに! と思いながら読んでいました。
中也のことも好きで読んでいるけど、中也のことばで書かれたランボォもまた、惹きつけられるものがあります。
透明で結晶化されたことばは、ある種強い輝きと氷のような静けさを持って読者に伝わっていきます。
でもそれは、若いからこそできることでもあります。
わたしがこれから詩を書きたい、あるいは詩人を目指したい学生さんたちには、もっと生きている詩人に会うことをすすめています。
だからこそ開いているのがオンライン合評だし、わたしはそういうところにどんどん先輩後輩関係なく、若い書き手を呼びたいと思っているんですね。
あまり人と会わない時代が続いているけれど、そういう意味で新しい刺激に出会ってほしい。
詩人って生きているし、どの町にもいる。
だからあなたは孤独じゃない。
そういうことをすんなりわかる場所にしていきたいと思うんです。詩を。

・東直子『階段にパレット』ポプラ社


装画を東直子さんご自身が描かれているというのもあるのですが、描くことについて最初の方では読者にわからないのに、なぜか不思議なご縁によって場所を見出し、そこで子どもたちに絵を教えていくというストーリーが見事に展開されています。
ことばを感覚的に掴み取るのが東直子さんのすごいところで、それが短歌にも表れていくような気がしているのですが、あたたかな気持ちになれる小説をいつも楽しみに拝読しています。
わたしの大好きな『とりつくしま』もそうですが、何かひとに寄り添うものを書かれているなと思いました。

3月26日

ツバメノートを使い切りました。
これで5冊目です。ノートに詩を書いてからクラウドメモに書いてWordに保存しています。
今日は絵をデータ化していました。
差し迫った仕事は少し落ち着きを見せたので、少し部屋の片付けなど。新作1編。
知り合いの方たちのお子さんが次々卒園式を迎え、なんだか感慨深いです。


5冊目!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?