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【エッセイ】第1詩集出版を「20代最後」にこだわったわけ

こんにちは! 長尾早苗です。
今週も中日になってきました。今週はみなさんどんなことがありましたか?
わたしは今週、ひたすら詩を書き、読むことに専念していました。今週末までまたがんばりましょう!
午後に集中力が落ちて何も書けなくなるのはつらいですが、なんとか午前中がんばっています!
今回は「第1詩集」についてお話ししようと思います。

詩集を出すために

わたしのペンネーム、20代はじめは全然違いました(笑)
20代の最初の方、大学3年の時に「詩集を出してみないか」と言われて、色々な表現者の方に相談していた時期でもありました。
出すなら有名な出版社から、と言われたのもありますし、その頃新聞や大学の文芸コンクールに入選したりしていました。
個人としてはとても不安定な時期でした。
恋愛に失敗し、投稿欄でめげそうになり、ゼミのみんなやサークルのみんなに泣きつく、頑固な子どもだったなあと今では思い返してくすっと笑いたくなります。
その頃は今の大学生の詩人さんのように私家版でもいいんじゃない?
と言われていましたが、第1詩集はわたしにとってとても大事でした。
同年代の詩人たちの第1詩集が素晴らしかったのもあります。彼女たちが出版社から出していたのに、本当に憧れがありました。

20代の特権

20代の特権は、「若さゆえのことばのみずみずしさ、鮮烈さ」にあると思います。
もうわたしはそこまで暴力的なことばの選び方をしなくなった……はずだけど、緊張感を保つためにはとにかく体力が必要でした。
以前わたしの詩は短距離走というお話をしましたが、詩集を出すには体力が要ります。
ことばの体力、そしてことばを受け止める体力。そういったものが必要でした。

ガールではなくレディへ

わたしがある先生に「20代最後に出しなさい、何を言われても」と言われたのは、両親からも先生たちからもゴーサインを押されて出そうかと悩んでいたある日。わたしには、何もなかった。何にもなれなかった。新人賞も取れなかったし、働いてもいなかった。
その先生に「人生経験を重ねてから『若さ』以外の何物かを手にしなさい」と言われて、7年が経ったときに、インカレポエトリ叢書の話がふっとわいたのです。
大御所の詩人たちから推薦OKのゴーサインが出た時。本当にうれしかった。
わたしは職場で働いていたのを体調不良でやめていて、新たに恋をした方と結婚もしていました。そして、それと同じようにして祖母をうしない、流行り病の時代が始まっていったのです。
わたしは、きっとその時、どんなに願ってもかなわないと思っていた幸福と、心の支えになっていた人を手に入れること・うしなうことを同時に経験していました。
そんな中で、わたしは現代詩の会に入っていて同人誌も好評で。
その時わたしは28歳になっていました。

もっともっとと願うこと

先日スピーチでもお話ししてきましたが、わたしは29歳になって、書き手の幸福と個人としての幸福、それが何にあるかとても考えさせられていました。

名声、そしてそれがもたらす副作用。

そういったものを詩人たちに会うことで、学んでいったように思います。
できるなら、うしなうことで書くのではなく、何かを吸収して受け止め、それをみなさんとわけあうような、少しでも「長尾さんの詩を読めてよかった」と思えるような生き方・詩の書き方をしたいと思っていました。

もちろん名声を得ることはとても大事ですし、わたしもそういう機会があったらいいなと思っていますが、もう「詩集」として評価され始めてしまったからには「なかったことにできない」というのが紙媒体です。
あとは評価だけがついている。

しかし、わたしが30歳になる直前に、様々なご縁がありました。孤独ではなかったように感じます。もちろん詩人のみなさんもありますし、書店の店主さんや書店員さん、様々な書き手のみなさんとリアルでお会いする機会がありました。
文芸誌への寄稿、書店さんとのつながり、即売会での出会い、そういったものと同時に、わたしは「詩」とは関係のない友人たちもできていました。
そこには20代~80代まで、さまざまな年齢層の友人がいます。
それはコミュニティコワーキングスペースならではというか、「場所」というものが作りだしたものだと思います。

第1詩集はそれまで書いて発表していたものを編みました。
主にわたしがかかった整形外科の大病や、どうしようにもない理不尽、そして一生をこの人と共に歩もうという決意や、全てのものに対するあたたかなまなざし、大人になることについて、を描いていたように思います。
朝の明るさを知っていながら、夜の暗さも知っていた。
だからこそ、最後に春が来ている。
そんな構成です。

インカレポエトリ叢書Ⅷ『聖者の行進』(七月堂)はそんな背景もあったのですよ。

ここまで、若い書き手のみなさんには少し耳が痛い話だったかもしれませんね。でも、自分の中に何があるか、自分が何を経験し、そしてどんな道を歩みたいか、がしっかりしていれば、若いうちのみずみずしさをそのままに詩集を出してみてもいいのかもしれません。
出しなさいなんて恐ろしいことは言えないです苦笑
「詩集を出す」=「プロになる」こととほとんど同じなので、その詩の世界の中でどうやって生きていくか、問われ続ける人生を歩まなくてはいけません。

もしかしたら、自分のことばにがんじがらめになることもあるかもしれません。
でも、自分がたどってきた道をもう一度振り返ってみたら、たくさんの人やたくさんのご縁や詩誌や同人が、あなたを詩人にさせてくれているような気がします。

がんばって、でも無理をせず、創作に励んでいきましょう!

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