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野村喜和夫『スペクタクル――そして最後の三分間』を読んで

圧倒、されました。

読め! 書け! というような気負いを感じるほど、ことばがほとばしっている。

ナンセンスなところと音が楽しい所は、先日ご紹介した詩集と同じなのですが、対になっているぶん、こちらではある種の狂気と冷静のはざまを意識している感覚がありました。

野村さんが折に触れていっているのは「ウォーカーズ・ハイ」と呼ばれるもの。確かに、稼働しながら詩を作っていくとこういうものになるのかも……と思います。

私は吟行というより、歩くことそのものを楽しんで、その結果起きる精神の安定性だったり、詩への情熱だったりするものが足から来るように思います。私も歩いて読まないと書けない、です。

よく詩人の詩は「汲む」「編む」と表されることが多いです。足から汲んでいく感覚もよくわかりますし、その汲んだ言葉を重層的に多層に満ちたものにしていくには、織物のように編まないと詩ではないのかなと思ったりします。

狂気と冷静の境目、ぎりぎりのところで音を楽しむという、刺激的な読書体験でした。

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