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短歌に加担(有料版)

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短歌×テキスト×音楽。バックナンバーすべてを掲載している完全版です。バックナンバーが増えるにつれ値段は変更予定です。
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2014年5月の記事一覧

第二首-廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て

第二首-廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て

第二首目。自分でもどうしてここまで強く惹きつけられるのかわからないのですが、出会った瞬間から胸の奥の方に貼りついて離れない、そんな歌です。あるいは、それはもともとわたしの中にあったものだったのかもしれません。

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「廃村」、「活字」という前半の強いことばと、「桃」、「にじみゆく」という後半の柔らかいことば。

強いことばに柔らかい

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第三首-さようならいつかおしっこした花壇さようなら息つぎをしないクロール

第三首-さようならいつかおしっこした花壇さようなら息つぎをしないクロール

三首目。春。それは出会いの季節でもあり、別れの季節でもあります。大人になってしまうとそれは単に人の出入りの問題に終始しがちですが、わたしたちは幼いころ、もっと小さなはじめましてとさようならを繰り返して生きていたような気がします。

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この懐かしさはいったいなんなんだろう。

わたしは花

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第四首-その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった

第四首-その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった

四首目。死。ということで、死について書かれた短歌の紹介です。
GWも終わっちゃいましたね。。

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一読するとわかるように、通常「5・7・5・7・7」、三十一文字で綴られる短歌の世界のリズムが、ここではかなり意図的に崩されている。
すっと流れるようにはいかない、絶えずタイミングをずらされ

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第五首-書くことは呼吸だだからいつだってただただ呼吸困難だった

第五首-書くことは呼吸だだからいつだってただただ呼吸困難だった

五首目。ちょっとずつ、夏が近づいてきます。

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脚本でも小説でも、書いているときはまるで水中に潜っているみたいになる。
苦しい。書けない苦しみが畳みかけるような「た」と「だ」に表れている。

声に出してみるとよくわかるのだけれど、その姿はぱくぱくと息つぎを繰り返しているみたいにも見える

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第六首-かいだんのいちばんうえをあたためるひかり内側だけが放課後

第六首-かいだんのいちばんうえをあたためるひかり内側だけが放課後

六首目。ロックロック。バンドっていいですね。自分もはるか昔にギターを手に取ったことはあったのですがバンドを組むことはありませんでした。あのときギターを手放さずにバンドを組んだりなんかしていたら、今とは全然違う景色を見ていたのかもしれません。

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すごくけいおん!!を感じる。けいおん!!

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第七首-はじめからゆうがたみたいな日のおわり近づきたくてココアをいれる

第七首-はじめからゆうがたみたいな日のおわり近づきたくてココアをいれる

七首目。陽がだいぶ長くなりましたね。一息つこうと外に出て、まだ明るかったりするとちょっと得したような気持ちになります。

そのまま公園のベンチでぼんやりしているとゆっくりと陽が落ちていって、夕暮れ。あの時間の何とも言えない懐かしい感じはいったい何なんでしょうか。

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はじめからゆうがた

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第八首-呼び出した目的だった愛はもう全部出したし帰っていいよ

第八首-呼び出した目的だった愛はもう全部出したし帰っていいよ

八首目。タイミング的に今かな、と思ったので今回は佐々木あららさんの歌にしました。ときどき無性に露悪的なことをしたくなるのはきっとたぶん創作者の常で、だからあれを口角泡を飛ばす勢いで怒っている人たちの多くはただの傍観者なんだろうなと思います。

まぁ、それでも決して気持ちのいいものではないですけどね。とはいえ「ファンだったのに裏切られた気持ちだ」みたいなコメントをどっかで見かけたときはより不快な気分

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第九首-白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

第九首-白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

九首目。ずっとひたむきにそれを続けているっていうのは強いもので、作家になった彼もアイドルになった彼女もやっぱり続けることだけは止めなかった人たちでした。

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生きていると、様々なものに影響を受ける。兄や姉に、父や母に、あるいは友人や教師たちに。それは人に限ったことではないだろう。小説や

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第十首-夕凪の渚でしりとり「ささ」「さかさ」「さみしさ」なんて笑いとばせよ

第十首-夕凪の渚でしりとり「ささ」「さかさ」「さみしさ」なんて笑いとばせよ

十首目。いよいよ二桁! いつも読んでくださっている方、ありがとうございます。はじめましての方、怖くないからこっちにおいで。

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たぶん、お互いなんとなくわかってる。
もう駄目なんだろうなってこと。

怒りだったり哀しみだったり好意だったり敵意だったり。
ふたりはそういう空気をつかむのが

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第十一首-飲食ののちに立つなる空壜のしばしばは遠き泪の如し

第十一首-飲食ののちに立つなる空壜のしばしばは遠き泪の如し

十一首目。もう金曜日ですね。いや、24時回ったからもう土曜日か。
今はあっという間に過去になって、過去は勝手に美化されていきます。
色んなものに、追いていかれないようにしなきゃな。

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生活。

起きて、食べて、電車に乗って、働いて、食べて、こっそり居眠りして、働いて、電車に乗って、本

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第十二首-日程を決めない限り かなわない大人の遊びはどれひとつとして

第十二首-日程を決めない限り かなわない大人の遊びはどれひとつとして

十二首目。かつてあった時間割。嫌いな数学が2コマあったりする水曜日は前の日の夜から憂鬱で、体育や音楽のある木曜日の帰り道はいつもより景色がきらきらしていたような、そんな気がします。

あれから十数年、今や社会人となったわたしは限りなくブラックに近いグレーな会社で畜生ってます。

働いていると曜日の感覚がぼんやりしてしまうのは、もしかしたら時間割がないからなのかもしれないなぁ。

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第十三首-いつもより遠心力の強い日にかるくゆるめたままの涙腺

第十三首-いつもより遠心力の強い日にかるくゆるめたままの涙腺

十三首目。いったいいつ頃からそうなったのか定かではないですが、まるで冷たいものを食べ過ぎたお腹のようにゆるゆるになってしまったわたしの涙腺もかつてはきゅっと強く締められていて、あれは本当に高校生でした。

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ぐるぐるぐるぐるぐるぐる。

公園のあの、ぐるぐるするやつをあたしは回していて

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第十四首-読了の日に職退くと決めてをり半頁づつ読みゆく聖書

第十四首-読了の日に職退くと決めてをり半頁づつ読みゆく聖書

十四首目。どんなものにも終わりはあって、それは突然起こるものだったり、はたまた徐々にやって来るものだったりします。果たしてそのどちらが幸福なのかはわかりません。だけど、少なくともわたしはその終わりをちゃんと手の中に、あるいはそこから零れ落ちそうになったときはそっと手を伸ばせるように、その準備だけはしておきたいと思うのです。

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第十五首-形容詞過去教えむとルーシーに「さびしかった」と二度言はせたり

第十五首-形容詞過去教えむとルーシーに「さびしかった」と二度言はせたり

十五首目。ことばには常にそのことば以上の意味がついてきて、意味は意味を切って貼って足して引いて裂いて縫って繋がって、繋がったら最後、なかなか離れなかったりします。

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さびしさは鳴る。
とかつて書いたのは綿矢りさで、わたしはその音をずっと聴きたいと思っていた。

さびしさ。
そう口に出

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