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極東から極西へ14:カミーノ編day11(Redecilla del Camino〜Villafranca)


前回の粗筋
しまった! ドミンゴでドミンゴだった。


前回


今回は、ビジャフランカまで。
なんだか見たことのある面子が歩いているよ?



・Redecilla〜Belorado


 起きるとなんと6時50分。
 普段の起床時間は6時なので大分寝坊した。フランチェスコさんも、リッカさんももういない(35km歩くから早起きは当たり前)。日本人の男の子もパッキング中だ。

「寝坊した〜!」
「マジっすか」

 なんてやり取りをして、速攻顔を洗ってパッキング。あっという間に荷造りを終えたら、「マジっすか、準備早すぎません? 」と言って驚かれた。
 7時台でも星空なので、ライトを点けて男の子に「またねー」と言って歩き出す。意気揚々と矢印を見つけつつ歩いていたのだけれど、段々と周囲の様子が怪しくなってきた。工事車両が行きかっている。道ですらない。どうも工事現場に迷い込んだらしい。モホン(道標)も矢印も当然無い。
 Google MapとBuen Camino アプリで場所を確認すると大分離れてしまっている。
 前日のフラグ回収。
 猫に言った迷うんじゃないよ、が盛大なブーメランになって帰ってきた。


モホン。道路沿いにあると、ちょこっと迷う。
矢印は何処を指しているのか?
そして工事現場に突入した怪しい日本人になったのでした。

 昨日の夜にUKのサイモンさんが「明るくなってからじゃないと迷う」と言っていたのを思い出した。
 慌てて来た道を戻ったけれど、1時間の痛いロスタイム。
 幹線道路沿いの正しい道を進んだ。
 正しい道には前方に無数の巡礼者の姿が。かなり遠くに男の子の姿が見えた。まさか後ろにいるとは思うまい。

・Belorado〜Tosantos

 ベロラドの街を通り抜けたところで再びカリマさんと会った。彼女はバッグパックを常に次の村に送り、軽装で旅を楽しんでいる。

「ハロー、カリマ!」
「ハロー、ツネ。また会ったわね!」

 少しばかり一緒に歩いた。
 カリマさんは脳腫瘍の手術をしたのだと言う。痙攣予防の薬を処方されたが、強すぎると言っていた。マッシュルームの粉やサプリメントで状態をコントロールしているらしい。痙攣予防の薬は幾つか覚えがあるけれど、マッシュルームがその代わりになるのかはイマイチ分からない……が、今のところ2年間は発作を起こしていないらしい。
 道理で、タバコを辞めていたり、オーガニックやサプリメントに詳しいはずだ。彼女なりに再発をしないように努めているのだ。

「一度痙攣起こしちゃったのよ。もう2度とごめんだわ」

 そんな風に言って顔を顰めた。
 カミーノでは、結構持病を抱えて歩いている人が多い。

「オーストラリアの親子に会った? 二人ともすごく速いのよ。お父さんは足を怪我してて……でも感じないんだって。糖尿病だから」
「本当に!? いいのかな、それ」

 感じないってことは、糖尿病性の神経障害だ。日本では、フットケア外来なんてものがわざわざあるくらい、糖尿病患者さんの足の怪我は治りにくい。治らないのでは? と思ったが、カミーノで1日激しい運動をするなら、血糖値がコントロールできて治るのか? とも。糖尿病は、血管が傷つきやすく、傷の治りが悪くなる弊害がある。傷が酷くならないことを祈る。


旧市街はこんな通りが沢山ある。
ポーチに花が沢山の家。


 道を歩きながら、ポーターサービスについてカリマさんに詳細を聞く。封筒に6€入れて名前、電話番号(念のためメールアドレス)、次の街とアルベルゲ(泊まりたいとこ)を書いて、決められた場所に翌朝8時までに荷物を置いておけば良いらしい。

「次は使ってみますね」
「それがいいわ。次の行程は山登りだもの!」

 次は初ポーターサービスにチャレンジだ。荷物が無くなったら嫌で使わなかったが、楽に行動できるならそれに越したことはない。普段は荷物を夢中で運ぶから、街を十分に見学する暇がないのだ。

・Tosantos〜Villafranca


 カリマさんが、日本人(アイルランド住み)の友達に見せるのだと言って、種いっぱいのひまわり畑の写真を撮るためにストップしたので、先に歩いて行くことにした。
 別に一緒じゃなくていい。多分それがカミーノ流。


サンティアゴまであと550km。
いつの間に200km以上あるいていたのか。
小さな教会があった。
一つの村に一つの教会。日本の鎮守様みたいな。


通り沿いの可愛いガーデニング
何かよく分からないけど、上に草が生えていて良い感じ。
ビジャフランカに辿り着く。
手前のカフェが、気取りすぎず良い感じ。

 さかさか歩いて、ビジャフランカに辿り着く。一応足の小指にプロテクター代わりの絆創膏を貼っているけれど、ひょっとしたらもう必要ないかもしれない。

 ビジャフランカの街の入り口でカリマさんと再会、というか追いつかれ、一緒にホテル兼アルベルゲに行く事に。
 外見が豪華でちょっと尻込み。

「私、別のとこにした方がいいみたい!」
「大丈夫よ。中でホテル、ドミトリー(個室)、アルベルゲに分かれてるだけだから!」

 と言われて恐る恐るホテルのフロントへ。フロントクラークさんがちゃかちゃか手続きをしてくれた。


ホテルの素敵なポーチ

「夕飯はここで食べるのがベストみたいよ?」
「?」

 あんまり周りにレストランがないのだろうか? じゃあ、食べてみよう。

 アルベルゲに案内されてホッとする。
 いつもの二段ベッドが並んでいた。シャワーと洗濯を終えるとUKのサイモンさんもいて、手を振ってくれた。前回の夕飯時は硬い感じだったが、今回表情が柔らかい。何度か会う内に親しくなる人がいるけれど、サイモンさんもそういう人の一人な気がした。

ホッと一息。そりゃあホテルは素敵だけど、アウトドアな格好じゃ入りにくいよね。


 洗濯物を干しに外に出ると、プエンテ・ラ・レイナやサント・ドミンゴや他の幾つかの街で出会った韓国人の夫婦がいた。流石にお互い顔を覚えていて、会うと嬉しい。笑顔で手を振ってくれて、手を振りかえした。
 フィリピンの男性に、以前言われた通り「ご近所さん」だもの。同じ極東から来たもの同士、極西で出会いを繰り返せば嬉しいものだ。

 庭には、アソフラのアルベルゲで同室だったイタリア人の女の子。ウェールズのガイさんもサパーで一緒だったオーストリアの男性もいた。なんだか嬉しくなる。

 お昼を食べていなかったので、街を散策ついでにカフェに寄った。

「Zumo de naranja y este bocadello, por favor(オレンジジュースと、このサンドイッチお願いします)」
「Si!(はいよ)」

 言えた。
 頑張った。


でっかいボカデージョ

 大きな生ハムとオリーブオイルのみのサンドイッチとオレンジジュースは空きっ腹にめちゃくちゃ美味しかった。一人の食事は偶には良いもので、英語と常に格闘中の日々の中で良い休みになった。

 お腹いっぱいになったらお昼寝と日記。
 その内に夕飯の時間になった。レストランに案内されて、メニューを選ぶ。

「何にする? 私はサラダが良さそう」
「私はガスパチョかな」
「僕はニンニクスープ!」

 そんな感じでメニューから前菜、メインを選ぶ。レストラン併設のアルベルゲだけあって、料理はとても美味しかった。
 茄子の肉詰めを頼んだら、お皿に半分はありそうな大きな肉詰めがやってきた。

 ガイさんとカリマさんはネイティブのスピードで喋るので聴き取りが大変な時もあるが、段々と理解できるようになってきた。ただ、会話にがしがし参加するには私の言葉が足りない。もう少し、いや、昨日のオスピタレロのホセさんが言っていたように、段々とでも話せるよう、単語やニュアンスを覚えていこう。

 お腹いっぱいに膨れたので、この日はもうおしまい。明日は初のポーターサービスと、12kmの山登りが待っている。

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