極東から極西へ13:カミーノ編day10(Azofra〜Redecilla del Camino)
前回の粗筋
とうとうSさんと別れた。
前回
今回は一人で歩いてみる話。
アソフラから約26km離れたレデシラへ向かう。途中、サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダという鶏の街があったので、観光したかったが……?
・Azofra〜山の上のお店
アソフラの街を6時半に出発した。
ちらっと振り返るとカフェがオープンしていそうだったけれど、先を急いだ。昼間になると直射日光が酷く、体力を消耗してしまうからだ。
街を通り抜け、畑に入る一歩手前で人懐っこい猫が鳴きながら寄ってきた。餌は無いよと言ってみたところで通じるはずもなく、どんどん着いてきてしまう。
森の手前で漸く帰ってくれた。
迷子になるんじゃないよ(フラグ)。
飛行機雲なのか、空に線が走っていて、思わず写真を撮る。
ずっと山を登って行く。
最初の頃より息が切れない。多分気温が下がっているのも理由だと思う。
山の途中で手作りの看板を見つけた。あと100mで頂上だよ! 頑張って! なんて書いてある。すたこら登ってみたら、お店を広げている人が。果物やチョコバー、それにピンバッジなんかが置かれていた。
美味しそうな桃を手に取って、1€払う。
ベンチで、桃と、汲みたての水。そしてチョコの朝ごはん。変な朝ごはんだけどこれがすごく美味しかった。
見晴らしが良く、遠くに気球が2、3浮いているのが見えた。
・山の上の店〜Santo Domingo de la calzada
山を一気に降りて、サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ。実はカミーノをスタートする前から、この街の観光をすごく楽しみにしていた。
サント・ドミンゴ(聖ドミンゴ)は、この村に施療院を建て、街道を整備した人。その人の名にちなんで名前がつけられている。
この街には鶏のお話が伝わっていて、鶏グッズが売られていると何かの本で読んでいた。動物が好きな甥っ子に是非買って行きたいが……。
因みになぜ鶏かと言うと、以下昔話。
とある巡礼中の両親と息子。
その息子に街の娘が恋をしたが、息子に振られてしまう。娘は息子のことを泥棒だと言ってしまい、息子は絞首刑になる。
ところが、息子は吊るされたまま生きていた。
巡礼を終えて戻ってきた両親はびっくり。その両親に向かって、聖ドミンゴ様に誓って泥棒はしていないから、どうか無実の罪だと証明してくれと訴えた。
両親は、判事の元に向かう。
判事はまさに食事中。
「お前の息子の無実は、今私が食べている鶏が鳴き出すくらいあり得ないことだろう?」
……そして鳴き出す鶏。まさに聖ドミンゴの奇跡。息子の無実は証明されたのでした。ちゃんちゃん!
と言う事があったから。
サント・ドミンゴは他の街とは違う鐘の音でとても素敵だった。
鶏の絵のショーウィンドウがあったり、高い鐘楼があったりで見応え抜群。お店も沢山あるけれど、うっかりしていたのだが、今日はDomingo(日曜日)だ。サント・ドミンゴでドミンゴとは。日曜日は、ほぼ店舗が開いていないのだ。
仕方ないからお菓子屋さんでラムネを見つけて、食べながら次の街に急ぐ事にした。本当、残念すぎる。
・Santo Domingo de la calzada〜Redecilla del camino
グラニョンの街でオレンジジュースを飲み、先を急ぐ。今日はレデシラ(レデシジャ?)に滞在予定。
グラニョンの街からすぐで、街の手前にある評価の良いアルベルゲにチェックインした。
「キョウ、トマレマスカ?(辿々しい西語)」
「あるよ! 勿論だよ(英語)」
そう言えば、オスピタレロになるには、英語や他の言語が喋れることが条件だと読んだ事がある。
オスピタレロは、ホセさんと言う方。チャーミングで、「今夜はここが、君の家!」と言って案内してくれた。
シャワーと洗濯のルーチンを終えて街を散策。Sさんと連絡を取ってみるが、バスもタクシーも使わずに未だ歩いているらしい。LINEの返事は元気だが、状態は分からない。アソフラ止まりと言っていたので、公営アルベルゲが良かった事を伝えた。
日曜日だけに、街のどこも静かで店も何もない。ぐるっと一周した後、アルベルゲに戻った。
部屋にはアジア人っぽい男の子がいた。お互いに、間。
「ひょっとして」
「日本人ですか? わー、初めて。あ、違う二人目っすね」
なんとプエンテ・ラ・レイナぶりに日本人に会った。そう言えば誰か、確かクリスティンだったかが、日本人に会ったと言っていた。多分彼だろう。
他にも日本の男の子がいるらしいね、と話をした後、ホセさんにディナーの予約をしにいった。
同室者は他にフィンランドのリッカさん、イタリアのフランチェスコさん。二人はグラニョンの友達を待って明日35km歩くらしい。
「26足す12は…….いくつだ?」
「えーと、三十……うーん」
「38ですよ」
思わず答えを言ったらフランチェスコさんに、僕ら歳だからさ、計算出来なかったよ! と笑われた。
お互いの名前をスマホのメモに打って、名前を覚えあった。日本語でどう書くの? と言われたので一瞬漢字で? と思ったけれど「夜露死苦」的な当て字になりかねなかったので、普通にカタカナで書いてみた。
喜ばれた。
・多国籍晩餐会(年齢層高めバージョン)
ホセさんに言われた通り19時に食堂に降りるとUKのサイモンさんと、デンマークの男性がいた。
「はじめまして、どこから?」
「日本からです。常(便宜上)と言います」
日本からかあ! とやっぱり一瞬盛り上がる。日本人はレアらしい。フランチェスコさんとリッカさんも席に着き、年齢層が高めな夕飯が始まった。
ホセさんがたっぷりスープをお皿に入れてくれる。少しだけワインを注いでもらい、後は水を飲むことにする。
話題はNATOや、イギリスの国内の問題、金融政策、酒税とちょびっと硬派。フィンランドの男性が熱心に時事問題についてUKやデンマークの男性に訊ねている。
ちょっと難しいので、部分的に訳して男の子に教えてあげた。
兎に角ここのアルベルゲはご飯が美味しかった。ホセさんのタイミングの良いサービスと、会話も相まって、楽しい(けどちょっと硬派な)ディナーを楽しむ事ができた。
ホセさんは離婚していて一人でアルベルゲを経営しているそうだ。3月から10月末までアルベルゲで働いて、冬の間は違う仕事をしながら語学を勉強するそうだ。数年前まで英語を喋れなかったと言う彼は、そんな事を微塵も思わせないくらい流暢に喋っていた。
離婚は寂しいけれど、幸せな暮らしだそうだ。
ホセさんは、アルベルゲを経営していると、色んな国民性が見えてくると言っていた。巡礼者は、ユーロ圏やスペイン国内からの人が多いとも。日本人は1〜2%。韓国の人はもっと多いらしい。
ジェスチャーとトークで各国の人の特徴を話してくれた。それと格言も。
「最後の1、2kmはゆっくり歩いた方がいい。楽に、楽しんで歩く方がいいんだよ!」
サイモンさんはそれについて一言ありそうだったが、私は概ねホセさんに同意だ。楽に楽しく、の方が時間の使い方が良い気がする。
素敵なディナーの後、洗濯ものを取り込んで、1日が終わった。
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