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極東から極西へ31:カミーノ編day28(Ponferrada〜Villafranca del Bierzo)

前回の粗筋
ポンフェラーダでテンプル騎士団のお城を見る。風邪をひいたというカリマさんと別れることに……。


前回


今回はビジャフランカ・デル・ビエルソまで。
カミーノの奇跡をもう一度見る事になったお話。



・Ponferrada〜Fuente Nuevas


 ポンフェラーダの街を6時45分定刻に出発するものの、15分ほど歩いてからストックを忘れたことを思い出す。
 山道のオ・セブレイロ目前で無くすのは得策ではないので引き返す事に……。無事にストックはアルベルゲの玄関で待っていてくれた。


アルベルゲの大きなホタテ貝。
再び見る事になろうとは。

 マクドナルドの看板を見ながら改めて歩き出す。街中は音が響くと悪いので、ストックを突かずに脇に抱えて行った。


これは昼間撮った看板。
マックはどの国でも一緒らしい。


 ポンフェラーダの街は大きくて、黄色の矢印は意外な所を通らせる。ブエンカミーノのマップを頼りに進んでいった。


道にカミーノの碑
まさかの建物のど真ん中を通らせるルート。
自転車の人達が通って行ったので気づけた。
通り抜けるとマリア様。
綺麗に花が飾ってある。

 やがて郊外に出たのだが、前日とは打って変わってフラットな道が続いていて歩きやすい。ただ、30分ロスしたせいか、明るくなるのが早い気がする。
 カリマさんからメッセージが届く。
 やっぱり調子が悪いようで、「明日私、ここに行くわよー!」と送ってくれた場所よりもかなり手前でのストップだった。

「大丈夫? 心配だよ」
「大丈夫よ。悪夢みたいだった昨日よりもいいわ。ビタミンCも取ってるし、ただあんまり長い距離は歩けないだけ」

 良くなっているならいいのだけれど。昨日もかなり咳をしている人がいたし、なんなら今日の道中もいた。
 私は熱はなさそうだし怠さはないけれど少し咳が出る。ただ、ハウスダストアレルギーの可能性もあるので、なんとも言えない。

 十分明るくなってから、フエンテ・ヌエファスの村で朝ごはんを食べる事にした。出発時にクッキー、明るくなってから朝ごはんのタイミングが丁度良いと分かってきた。そういえばいつも6時過ぎに朝ごはんにパンを一枚食べるくらいで食欲がわかないのだ。


看板が見えるとほっとする。

 
 人がいるお店の方が良いよね、ときょろきょろしていると、賑やかだな、と思った場所であやさん達を見つける。
 カリマさんや、少し前はカリフォルニアのマークさん、それに韓国の男の子ホンジェウン(やっと名前聞けた)もそうだけれど、一回ペースが一緒になるとよく会うし、ペースがずれる時今度は途端に会えなくなる。

 朝ごはんにトルティージャを頼み、あやさん達に同席。足元を猫が二匹行き来しておこぼれを狙っている中での朝ごはん。
 ストックを道端に寝かせて置いたら店の人? に「デインジャラス(西なまりの英)」と言われて足蹴にされた。ごめんなさい。でいんじゃらす(日なまりの英)でした。

 食べ終わって先に出発して、早々に教会の扉が開いている事に気づく。
 中見られそうだなあと外から覗いていたら、中からおいでおいでと呼ばれて近寄った。スタンプを押してくれるというので、クレデンシャルを出す。
 もうかなりスタンプは沢山。
 クレデンシャル、もう一冊いるかもしれない。
 中を見学させてもらい、お礼を言って出発した。


趣のある教会の内部
きっと昔から村の信仰の対象だったんだろうなあ。

・Fuente Nuevas〜休憩所(ドナティーボ)


 街を抜け、葡萄畑の道を進む。
 同じアルベルゲに泊まっていたいちじくのスペインのおばちゃん二人に追いつく。出かける時に見送ってくれたのに、後方にいるとは思ってもなかっただろう。ストックを取りに行っている間に二人は先に進んでいたらしい。

 そしてあやさん達にも追いつく。
 教会を観ている間に先に行っていた。

 この後、また先の街で教会見学後にストックを忘れて戻った為、どうも今日は「杖注意」の日らしい。

 あまり距離は歩かない日なので油断してゆっくり歩いていたら日が昇り暑くなってきてしまった。道端にあったワインの圧搾機の展示を見ながら、ワインじゃなくて冷たい飲み物がほしいなあと考え出す始末。


近代的な圧搾機?
古代の圧搾機


 更に、圧搾機の場所から上り坂になり、いよいよ喉が乾いてきた。ひいひい言いながら車道沿いの道を歩いていると、坂の中程に看板が。
 どうやらアルベルゲらしいけれど、飲み物や果物も提供しているらしい。

 思わず中に入る。

「飲み物はいる? ハーブティー、レモネード……なんでもどうぞ」
「レモネードで!」

 数日前のハチミツダメージを忘れて欲求に負け、危ない橋を渡る。幸いハチミツは入っておらず、酸っぱいレモン水だった。


内部が素敵
レモネード、というかレモン水
休憩所の外見

 暫し休憩。
 開け放した窓の外を巡礼者が登っていくのが見える。余裕そうな顔をしている人はあまりいない。
 トイレを借りて再び巡礼者のまばらな列に加わったのだった。

・休憩所(ドナティーボ)〜Villafranca del Bierzo


 休憩所から坂を登り切ったところで、またメインルートとオルタナティブルートの選択があった。オルタナティブは短いが車道沿い。メインの方が景観が良さそう。
 なので、葡萄畑の中を進むメインルートの方を行くことにした。
 葡萄畑は素晴らしい秋景色。
 みんな写真を撮りながら、ぶどうを観ながら進んでいく。途中、アストルガのアルベルゲで出会った完全ベジタリアンの女性と再会する。にこやかに手を振ってくれた。


ぶどうの葉っぱが枯れている。
秋だなあ。


 やや寂れた村で先を歩いていた男性が何かを断っている声が聞こえた。
 なんだろうと思ったら、停まっていた車の運転席にいた男性が私にも声をかけてきた。多分「りんごどう?おいしいよ。たったの1€だよ」的な事を言っていると思われる。どうみても、道端の木になっていたと思われる実。

「いりません」
「なんでー!」

 なんでって言われた? 1€が聞き間違え? いやでもどちらにしても美味しそうではない。

「入りません」

 もう一回言って、男性とお別れした。


 ビジャフランカ・デル・ビエルソに着き、すぐの場所にある公営アルベルゲにチェックインする。ベジタリアンの女性が先にいた。また、会ったわね、なんてやりとりをして部屋に行ったらこの日のルームメイトだった。
 あやさんひろさんも同じ部屋。これは初めての出来事。
 そして前日のルームメイトの韓国の女の子も同じアルベルゲだ。

・カミーノの奇跡再び。そして懐かしいメンバーとの再会


 ルーチンワークを終え、シエスタ時間に日記でも書こうと部屋に戻ろうとすると、スペイン?の女性、エヴァに話しかけられる。

「スペイン語、分かる?」
「ごめん、英語なら少しは」

 エヴァはスペイン語と英語を混ぜて、手に持っているノートをポンフェラーダで拾ったことを私に伝えてくれた。
 ノートの表紙はコジコジ。
 渡されて中をぱらぱら開くと日本語が。

「これ日本語!」
「そうなのよ」

 ノートの終わりの方のページに日本人の名前と連絡先が書いてあった。

「この人のかな……メールしてみるね」

 ところがうまくアドレスが入らない。

「駄目だ……メール送れない。ワッツアップも登録してないし。あ、日本人の友達がここに泊まってるから、帰ったらこの人知ってるか聞いてみるね!」
「分かったわ。私3番の部屋にいるから!」

 その後、日記を書き、部屋に戻ってきたあやさんにことの顛末を話したのだった。

「その人知ってるわ。私も日記落としたから多分困ってると思う」
「やっぱり! ノートに書いてあった名前見た時になんか聞いた事あるなって思ったんです」
「駄目や、わたし無くしたノートにその人の連絡先書いてた」

 万事休すかと思ったのだが、ノートの柄がコジコジである事を伝えると、エヴァが持っていたのがまさかのあやさんのノートだと言うことが判明した。
 まさにカミーノの奇跡!

 エヴァは帰ってきていなかったので、何か食べるものを買いにスーパーに行く事にした。
 道を歩くと子供達が珍しく遊んでいる姿が見られた。大体20時過ぎないと外に出てこないのでかなりレアな光景だ。

 DIAというスーパーは開いている頻度が高いので、地図で場所を調べながら進む。すると同室のフランス人の男性が「どこも開いてないんだ、なんか今日変だよな」と言いながら戻ってきた。

「どこも? DIAも?」
「うん、DIAもその先も閉まってる。夕飯はレストランで食べるしかないね。朝ごはん調達したかったなあ」

 なんでだろう?
 実際、スーパーだけでなく、レストランとカフェを除き店は全滅だった。

 折角だから緑いっぱいの公園を散策した。
 アルベルゲに戻る途中、なんだか見覚えのある男性と行きあった。

「やあ! また会ったね。調子はどうかな?」
「調子、いいです。あなたな?」
「すこぶるいいよ」

 うん、と頷いてにこりと笑ってくれる。カリフォルニアのマークさん。

「君に、一つお願い事をしていいかい?」
「なんですか?」
「写真を一緒に撮ってほしいんだ。我々はよく会うけど、一枚もないだろう」
「写真! 勿論です」

 会ったのはいつぶりだろう。
 マークさんと写真を撮りあった。


公園に、微動だにしない人が。
庭や、ベランダも綺麗なお家が多いスペイン。
公園もとても素敵だった。

 その後、旧市街を散策しているとまたしても知っている人が。

「リッカさん、お久しぶりです!」
「やあ、元気にやってるか?」

 リッカさんも元気そう。初めて会った頃より多分みんな少しずつ痩せて日に焼けている。懐かしいメンバーと会えて嬉しいのは、単に久しぶりだからというだけではなく、残りの日数が少なくなってきているからかもしれない。
 次はないかも、と思うから、なんだか無性に嬉しいし懐かしい。


市街地の通り。
パンが引っ掛かっている。

 韓国のホンジェウンと、サイモンさんも一緒の宿。なんとも(私にとって)贅沢なメンバーが町に集まった。

・アジアン晩餐会


 庭でのんびりしているとフランス人の男性が帰ってきた。

「パブリックホリデーだからどこもやってないんだって!」

 なるほど、だから子供が昼間からいたのか。
 しばらくするとあやさんが、ラーメンを買ってきてくれたので、呼ばれることにする。オリエンタルストアはやっていたらしい。
 辛ラーメンという韓国の麺で、ヤテコモでショックを受けていた私にとって垂涎の、ちゃんとしたラーメンだ。

「二つは焼きそばみたいにして、一つは汁ありで作ろう思って」

 そんな食べ方があるのか。
 キッチンに行くと昨日同室だった韓国のミンニョンがやっぱりラーメンらしきものを作っていた。

「汁なし!?  辛いと思うよ。混ぜるの? あ、混ぜないの。良かった。そっちのはお湯を捨てなきゃ駄目だよ」

 あやさんが作っているのを見ている。
 すごく楽しそうに、ドキドキするね、と言っていた。

 辛ラーメンは美味しかった。
 次に見つけたらぜひ買ってみたい。日本でも買えるのだろうか。ラーメン繋がりで、ラーメンのカルボナーラの作り方をあやさんに教わったので、帰ったらそれも作ってみたいと思う。

 リーさんと白さん(15kgの荷物を背負って歩いている、タフで頭のいい男の子)とミンニョン、あやさんひろさんと一緒に辛ラーメンを食べた。
 途中でエヴァが帰ってきて、あやさんの元に無事に日記は戻った。
 日記はなんと、ポンフェラーダのアルベルゲを出て右に行ったところの道に落ちていたのだと言う。


辛ラーメン焼きそば。
どこかで食べたことがあるけれど、思い出せない味。


韓国焼酎。


 韓国は山が多く、ハイキングが盛んらしい。
 カミーノのロングトレールも有名なようだ。単にTVタレントの影響だけでは無さそうだ。

 ひろさんと、あやさんはリーさんに韓国伝統のお酒の飲み方(韓国焼酎ビール割り)を教わっていた。コスパが良いのだという。
 リーさんはあやさん達とかなり前からよく会う仲だそうだ。白さんに至ってはバイヨンヌからだと言うから驚き。
 ミンニョンに、韓国語の「かっこいい」を教わったりリーさんの話を聴いたりしながら夜が更ける。ミンニョンが、あやさん達はいつでも楽しそうだと言っていたけれど、同感。
 いつも笑っているイメージで、ポジティブな印象が強いお二人なのだ。「本当だよね、楽しそうだよね!」と言ったら全力で頷いていた。

 あやさんに、辛ラーメン代を払おうとしたら、昨日誕生日だったからいいよーと言われてしまった。
 その上、ハッピーバースデーの歌を歌ってもらって(しかも、後ろの席にいたエヴァ達もスペイン語で歌ってくれた)、ものすごく思い出になった日になった。


 明日は、オ・セブレイロの前でストップ。
 山越えルート予定なので、一足先に失礼した。
 2日間に渡り、誕生日を祝ってもらった事は今までなかったかもしれない。


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