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極東から極西へ32:カミーノ編day29(Villafranca del Bierzo〜Las Herrerias)

前回の粗筋
辛ラーメンをご馳走になった!
懐かしいメンバーと会う。


前回


今回は、ラス・ヘレリアスまで。
本当はオ・セブレイロに行きたかったのだが、とある理由で手前の村で終了。



・Villafranca del Bierzo〜山道へ

 
 ビエルソを出た後で、またしてもオルタナティブルートがある。
 前日にサイモンさんに、山道と普通の道どっちにいく? と聞かれていた。オ・セブレイロまで行くなら通常ルートだけれど、実は収容人数が一番多いアルベルゲが11日から14日まで閉まっているとのこと。手前のヘレリアスが丁度良い距離かつ、アルベルゲが空いていたので、予約を入れておいたのだ。
 つまり、いつもより歩く距離は少なめ。
 一応予報では14時からの雨となっていたので……。

「山道一択でしょう」

 と、オルタナティブルートを選択したのだった。ブエンカミーノさんは、通常ルートよりも1.4kmくらい距離を歩くけど、標高が高くて、景色が良くて起伏にとんだ道だよ、と案内してくれている。

 昨日散策した公園の横を通り町を抜けるといよいよオルタナティブルートへの分岐点。
 真っ暗で正直少し怯む。時刻を確認すると7時だった。8時には明るくなってくるので、ええい、ままよとライトを点けて登り始めた。


巡礼者モニュメント。
各村や町にあるから、実は形を変えてついてきてるんじゃないかと思ったり……。
オルタナティブルートとの分岐点。
明らかに道の角度が急だし、写っている車の先が暗がり。


 正直に言えば、7時は少し遅い時間だし、誰かしら途中にいるだろうと思ったのだ。ところが暫く行っても誰にも会わない。かなりキツイ坂道で、登坂開始15分で額から汗が流れた。後悔先にたたず。眼下には、通常ルートを行く人のライトがちかちか。


段々街が遠くなるけれど、人の姿は見えず。


 
 うわー、寂しい。あっちにすれば良かった!

 でも今更降りるのも勿体無くて、栗のイガや落ち葉が沢山積もる道を踏みしめながら登り続けたのだった。

 結局稜線まで出て、あとは景色の良い道を気持ち良く歩く事ができた。にしても思ったよりハードな山登り。
 オ・セブレイロ前に体力を温存したかったのに、やっちまったなあ。

明るくなって見つけた矢印。ブエンカミーノのマップで位置を確認しながら歩いていたけれど、先達の「こっちだよ!」マークを見つけると安心できる。
こっちにも。
矢印が崩れていたので直しておいた。


・Pradela〜朝ごはん

 結局オルタナティブで会ったのは一人だけ。
 プラデーラという村でメインルートに合流したら、沢山の巡礼者がいて本当にほっとしたのだった。


牛。皆カウベルを付けている。
家の壁にホタテ貝マーク。


 ところが、この村で怪しかった空模様が一気に崩れて雨が降り始める。
 オルタナティブでもぱらぱらくらいの勢いで降っていたのだけれど、本降りではなかったし、なんなら山登りした身体には気持ち良いくらいだった。

 慌ててレインウェアを取り出して装着。
 再び本格的に歩き始めた。

 途中でどうしてもお腹が空いたのでカフェに避難。
 今日の宿までどれくらいなのか確認した。あまり遠くはないけれど、レインウェアを着ると暑くてあまりさっさか歩けない。
 到着時間は普段より遅くなりそうだ。問題は洗濯物で、無事に着いたとしても、この天気だと乾きそうにない。明日は雨が止むらしいから纏めて洗濯するしかないのかもしれない……。


石造りの建物が益々増える。
窓枠とドアが黄色。
鮮やかで、景色に映える。

 それはそれとして、カフェ・コン・レチェと朝ごはんはとても美味しく食べたのだった。
 クレデンシャルのスタンプ枠がいよいよ足りなくなってきた。

・朝ごはん〜Las Herrerias


 靴は既にぐしょぐしょだ。
 カウベルの音が響く山間に、ラス・ヘレリアスの村はあった。本来なら、ここから一気に高度を上げて、オ・セブレイロまで行かなくてはならないのだけれど、今日はここまで。
 カラコロ、カラン、と音がすぐ近くで聞こえてくる、とても平和な村……というか、集落。
 濡れた草木と落ち葉の匂いがする。

 アルベルゲはすぐに見つかった。レインウェアを着て入らないで! の表示を見て入り口で脱いでいると、あやさんとひろさんが現れた。二人とも同じアルベルゲ。
 オ・セブレイロの公営が閉まっていると、必然的にこの村に集まるのかもしれない。ポンフェラーダのルームメイトだった女性も、スペインの二人組のおばちゃんも見かけた。


川のせせらぎも聞こえる。

 チェックインして、部屋とベッドを教えてもらい、向かうと綺麗な部屋。
 シャワールームもすごく清潔だった。下のベッドの男性に挨拶すると、アジア人だからかゆっくり話してくれる。
 後からやってきた女の子も感じが良い子で、なんだか和やかな空間になった。
 
 朝ごはん用に何か買おうとシャワーの後で散策することにした。
 あれだけ降っていた雨は止んでいたけれど、空模様はまだまだ怪しい。カウベルの音だけかと思ったら、村の入り口に馬がいて、馬鈴を付けていた。そういえば、オ・セブレイロまでだったか馬に乗って行けると読んだことがある。確か、50€。いいなあとは思うけれど、乗馬できる気がしないので、却下。

 村の端まで行ってみたが、スーパーやパン屋さんは無かった。
 引き返すとあやさんに会ったので、私が引き返したところよりもう少し先まで散歩した。

 やっぱりお店は無かったけれど、長閑な景色を堪能した。

 アルベルゲに帰るとちょっとした事件が発覚! ひろさんが外にいて、偶々装備(ワークマンのアウトドアウェア)の話になった。ひろさんはワークマンで固めてきたらしい。

「サロモンでも濡れるんや」
「ゴアテクスなんですけどね。明日までに乾かないかも……」

 なんていいながら、側にあった靴箱の自分の靴をいじる。インソールを出しておくと少し乾きやすいのだ。
 ひろさんはワークマンの靴、のはずが……?

「うわああ、俺のもサロモンや! なんで? いつから?」
「そういえば、最近靴ひも気にしとったやんか。あっこからやない?」

 ひろさんの靴が、ワークマンからサロモンに変わっていたそう。形や、ソールのブロックパターン、紐まで似ているようで、暗闇の中で出発するカミーノならではの間違えだ。
 靴を間違えた、という話は聞いたことがあったけれど、まさかこんなに身近なところで起きるとは。
 多分数日前のフォンセバドンで間違えたそう。少し大きなサイズだから靴紐が緩んだような違和感があった……と。

 私もキンチョールとサングラスを無くしたし、あやさんもスカート(しかも間違えたのは多分おじさん)やタオルを無くしたり、回り回ってゲットしたりしたそうなので、モノに関してはそういうものなのだろう。

 ひろさんのワークマンシューズ、今は誰が履いているのだろう。少し気になるので、歩くときに気をつけて見てみようと思う。

・同室の二人と夕ご飯


 部屋に戻り日記を書いていると、同室の女の子に声を掛けられた。

「あなた達、ご飯食べた? 良かったら一緒にどう?」
「まだ食べてない。これから食べようと思ってたんだ。一緒に行くよ」

 お互い自己紹介しながら下のレストランに向かう。
 女の子はジェリカと言う名前でペルー出身。5年前からドイツのミュンヘンで暮らしていると言う。
 後から合流した下のベッドの男性は、マルタ島出身で現在はウェールズ在住のジョセフさん。

「私そんなに英語上手くないんだ。多分50から75%くらいは何を言ってるかわかると思うんだけど」
「いいよ、大丈夫!」

 ジェリカはスペイン語でメニューをカマレラ兼オスピタレラにお願いした。彼女はつまり、スペイン語、英語、ドイツ語が話せるということ。

「どこからスタートしたの?」
「サンジャンだよ。あなたは?」
「私もサンジャン」

 ご飯の前にそんな自己紹介。
 別のテーブルにあやさん達がいたけれど、完全に溶け込んでいて、あんまり日本人に見えないから不思議。

「何にする?」
「うーん、野菜スープと魚かなあ」
「僕も魚がいいな」
「私も魚が好き」

 ペルーも、マルタも魚をよく食べるのだと言う。そこから伝統的な料理の話になって、マルタでは魚の他にウサギをよく食べると知る。

「うさぎってあのうさぎ?」

 と、私が耳のジェスチャーをすると、マルタは土地が大きくないから、小さな動物を飼うのだと知った。

「国じゃなくて、あなたの住んでるところの伝統料理は?」
「住んでるとこ? うーん……海がないんで、川魚を食べるかなあ。鰻とか」

 鰻ですって! とジェリカに今度は驚かれた。ジョセフさんは、食べるとこもあるよ? と驚かない。

「ペルーは?」
「ペルーはね、生の魚を食べるの。白身の魚を切って、レモンとかかけて」
「カルパッチョみたいなものだね。多分ここにいる皆がそれを食べられるよ」

 確かに、このメンバーなら食べられる。
 ジェリカは5年前にドイツに移ったそう。ジョセフさんに、もう完全にドイツ人だね、と言われて否定していた。
 ドイツでは生の魚が手に入りにくいらしい。

「みんな凍ってるのよ!」
「その代わり新鮮なソーセージがきっとあるね」
 
 ジョセフさんには子供がいないけれど、マルタに沢山甥っ子と姪っ子がいるとのこと。
 カミーノ中の宿の予約は奥さんがしてくれていて、もう少し歩けそうだなと思っても、「駄目よ今日はここまで!」としっかり管理されているそうだ。


野菜スープ。
野菜不足になるよね? という話題でも盛り上がる。
サラダには必ずツナもあるある。
ヘイクのガリシア風だそう。
オリーブオイルで焼いて、パプリカをかけた魚。
かなりボリュームたっぷり!


「僕たち酔狂だよねぇ、800km近く歩こうなんて普通考えないよ」
「本当ですねぇ」
「でも、私達もうここまで歩いてきちゃったわ!」

 本当にね、と言ってみんなで笑った。
 だってもう残り一週間というところ。

 
 明日は、いよいよオ・セブレイロ。
 フランス人の道最古の教会があるとか?
 そこを越えればついに最後の州、ガリシアに入る。
 
「楽しかったね」
「うん、楽しいご飯だった」
「誘ってくれてありがとね」

 なんて言いながら、日本・ペルー(でも今はドイツ)・マルタ(今はウェールズ)出身の三人で部屋に戻る。国の位置を考えると本当にばらばら。なのに近い距離に感じたのは、多分おんなじ道を歩いてきたからだろう。


 夕食後、早めに横になった。
 明日は最後の山を越える。


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