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エッセイ八彩帖・お婆


 山を車で走っていて必ず遭遇するのが、「お婆」という種族(?)である。彼女らは決して「お婆さん」でも「お婆ちゃん」でもない。「お婆」としか呼びようがないのである。理想的な「お婆」の姿はこれだ。

 その1・上下柄on柄の服を着ていること。農協(JAではない)で買ったと思われる、なんとも形容しがたいプリントのかっぽう着にモンペを着用していれば最高だ。お婆のコーディネートは想像の斜め上を行く。ペイズリー柄にタータンチェックを合わせたりという自由奔放なそのセンス!なぜ多数ある柄からそれを選んでしまうのかは、お婆に関する永遠の謎である。

 その2・頭にはかぶり物をしていること。使い古した手拭いを姉さんかぶりしているのも味があるが、周りにヒラヒラのついたボンネット状のものをかぶっている姿はまことにキュートである。あれはお婆がかぶっているからこそ可愛らしく見えるのであり、ワタシなぞがかぶっていたら気でも触れたのかと思われるだろう。

 その3・背の高さは手の中に収まるかのように小さく、身体は「くの字」に折れ曲がっていること。さらに杖(ただの棒)や手押し車などの小道具があれば、お婆のチャーミングさがますます引き立つ。

 長年農作業に携わって中山間地域を支えて来たであろう「お婆」。彼女たちに敬意を評して。

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