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「関西女子のよちよち山登り 2.国見山~交野山」(1)

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 交野山は大阪府交野市に位置する、標高三四一mの山だ。『かたのし』にあるが、山の読み方は『こうのさん』という。

 決して高い山ではないが、山頂に登山者を驚かせるあるものが鎮座していることから、府外から登りに来る人も少なくない。もちろん地元民から愛される山で、週末となると、老若男女で狭い山頂がにぎわう。

 今回登和子は、手前にある国見山を経由して交野山に登ろうと予定していた。

 国見山は交野山の北側に位置する山で、標高は二八四m。しかし景色はなかなかだとガイドブックに書かれていたので、せっかくだから行ってみることにした。
 国見山の登山口の最寄り駅はJR・津田駅。
 登和子が住んでいる京橋駅からだと、JR線を使って乗り換えなしで向かえる。
 
 五月最終週の土曜日。空は晴れ渡り、少し汗ばむほどの陽気だ。
 津田駅まで順調にたどり着いた登和子は、プラットホームの隅にザックを置き、しっかり準備体操をした。
 そして駅から出て、早速頭が真っ白になった。

「目印の第二京阪はどこにあるん?」

 コピーしたガイドブックの地図によると、登山口は津田駅から見て、巨大な第二京阪の高架道路の向こう側にある。
 その大きな目印を目指して歩こうと考えていたのに、目の前にはバスロータリーが広がり、その奥には一戸建てやマンションが建つばかりだ。肝心の高架道路が見当たらない。

 出口を間違った?いや、出口はひとつしかなかったから間違えようがない。

 登和子は地図を手にしたまま、しばらくあっちに行ったりこっちに来たりを繰り返した。
 右手の突き当たりにコンビニがある。あそこで道を尋ねれば問題が解決すると分かっているのに、人見知りでなかなか決心がつかない。

 何か買い物をしがてら道を聞く、大人なのだからためらっている場合ではないと観念し、登和子は重い足取りでコンビニのほうに向かった。

「あっ!」

 歩き出してすぐ、コンビニから向かって右側に小さなトンネルがあるのを見つけた。
 JR線の高架の下に設けられており、そこを通れば向こう側に行けそうだ。

「私、第二京阪の反対側に出とったんかも?」

 問題が解決しそうだと喜んでトンネルを抜けた。
 しかし、そこからも高架道路は見えない。
 登和子はしゅんとした。持参したペットボトルの麦茶を飲んでから、大きくため息をつく。

 あれほど巨大な目印がどこからも見えないとは誤算だった。

 こちら側と元いたトンネルの向こう側と、どちらが進む方向として正解なのだろう。

 電池節約のために使いたくなかったが背に腹は代えられない。登和子は地図アプリを起動し、国見山登山口までの道を調べた。
 その結果、登和子が今いる場所はスタート地点として正しく、ここから真正面の方向へ一kmほど進めば良いらしい。

「最初から使っとけばよかった」

 そして登和子は地図アプリにすべてを託し、改めて一歩目を踏み出した。

 しかし過大な期待に反し、頼みの綱である地図アプリのナビはうまく作動せず、あっちへこっちへと翻弄され、登和子はしばらく住宅街の中をさまようことになる。

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