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「関西女子のよちよち山登り 2.国見山~交野山」(終)

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 これまでの人生レベルで考えても上位にランクインするピンチを乗り越え、登和子は足取り軽く続きの道を歩いていた。

 山道が途切れて車道を渡る箇所があったり、木の根が大きく張り出した階段を登ったりする。狭い階段で下山する人とすれ違うときに道を譲り、「こんにちは、ありがとう」「いえいえ」と笑顔で言葉を交わし合う。
 そのすべてが面白く新鮮で、登和子はちょっとした冒険のようだ、と思った。汗が頬を伝う。

 交野いきものふれあいの里から二十分ほどで、交野山に無事到着した。

「ははあ、これはすごいなあ」

 写真で見たから知っているはずなのに、現物を目の前にするとやはり驚嘆してしまう。

 交野山の頂上には、巨大な岩が鎮座している。地面とつながっているのか、それともどこかから降ってきたものなのかは分からない。ただ、人が何人も乗れるほどに大きい、ということだけは確かだ。

 岩の向こう側に回ってみる。

 岩は、見た目はざらついていそうだが、触ると意外にすべすべしている。滑り台のようにこちら側が低くなっており、登和子はおそるおそる岩の斜面を登った。
 子供が岩の先できゃあきゃあ声を上げている。その子がいなくなるのを待って、登和子も同じ場所に立った。

 国見山とは違う、別世界を見ているようだ。

 国見山は標高が低い分、街も若干大きく見えていたのだと気づく。青空を背景に、木々に遮られず広がる街並みはとても小さい。国見山登山口に向かう目印にしようとして失敗した第二京阪は、街を横に二分する長い川のように見えた。

「あれってもしかして、あべのハルカス?」

 視線を左に向けると、遠くの方にあべのハルカスの特徴的な建物の形が見えた。まさか交野市から大阪市の南部にある建物が見えるとは!

 その後、出来心で崖になっている岩の下の方をのぞいてしまい、じゅうたんのように広がる木々の緑の遠さに登和子はぎょっとした。そのまま回れ右してすぐに岩を下りた。

 今回の登山は及第点と言えるのではないか?

 登和子は下山しながらほくほくと考えた。
 金剛山登山のように疲れ切っていないし、面白い岩やきれいな景色も見られた。そして前回同様、ケガもしていない。

 だが、もし交野いきものふれあいの里でトイレを借りられなかったら……。

 登和子はぞっとした。

 とりあえず、今日の登山の締めくくりに、ドラッグストアで下痢止めの薬を買って帰ろうと思った。

交野山

                    
                       (2国見山~交野山-終)

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