「関西女子のよちよち山登り 6.摩耶山」(4)
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ぐうう、とおなかが鳴る。
一気に現実に引き戻された。
おなかの減りを思い出した途端、我慢できないくらいの空腹感が押し寄せてくる。登和子は空いているベンチを探して広場の中央に戻っていった。
まだ十一時前だが、ベンチは七割方埋まっている。運良く木陰のテーブルとベンチを確保でき、登和子はザックからガス缶とバーナー、クッカーを取り出した。
今日は簡単に、袋麺のアレンジをしてみるつもりだ。スープの水を半分豆乳に替え、焼豚、ねぎ、味付たまご、紅ショウガを載せる。具材は保冷剤とともに小さなクーラーバッグに入れて持ってきた。
「ガス缶とバーナーをくっつけて……クッカーに水と豆乳を半々で入れまして」
そして深型クッカーを火にかける。ガス缶とバーナーのセットは前回よりも早くスムーズにできた。まだ多少もたついているとはいえ、自らの成長を感じられてうれしくなる。
「そんでお次は二つに割った袋麺を投入します、と……」
座ったまま、麺を袋の中で二つに割る――そのとき、誤って左手の中指が深型クッカーの取っ手に当たった。
「あっつっ!?」
深型クッカーが揺れ、熱湯が登和子の左手に飛び散る。
それほど量は多くないが、じんとした痛みを感じる。冷やすべきか否か、冷やすならトイレの洗面台で流水か、などと頭がぐるぐる混乱した。
「あ、これや!」
登和子はガス缶のそばに置いていたクーラーバッグをたぐり寄せた。中から保冷剤を取り出す。
保冷剤の適切なサイズが分からず、ハガキサイズの大きめのものを一つと、小さめのものを二つ入れてきていた。予想通りまだ一部凍っている。登和子はお湯がかかった部分をハンカチ越しに押し当てた。
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