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民宿再生チャレンジ2 離島の民宿

石垣島周辺に位置する八重山諸島へは石垣島からフェリーに乗って10数分~数時間で行くことができる。
その八重山諸島の某島出身のオーナーさんから、所有する家のテナントが出てしまったので空室をなんとかしたいと相談を受けた。

まずは現状把握ということで、オーナーさんと一緒に現地へ向かうことになった。

朝7時台にフェリーターミナルで待ち合わせし、フェリーに乗った。このときが初顔合わせだ。オーナーさんは70代の女性で石垣島に在住。普段はパートでお仕事しているそうだ。私もオーナーさんも車を運転しないので、運転手として、たまたまお仕事がお休みだったオーナーさんの旦那さんが一緒に来てくれた。

この日の天気は曇り。泳ぐにはまだ寒いけど外出に快適なちょうどいい気温。

某島へ行くフェリーは2社が運航していて、それぞれが1日に3往復しているので計6往復ある。春休みとGWの中間で観光客は全体的に多くない時期だが、フェリーの乗船率はそこそこで、そのうちの半分以上は観光客のようだった。

シーズンオフでも4往復はできるようだし乗船時間もあまり長くないため、離島だけど秘境感はない。
もっともその島に住んでいる人は数百人しかいないのだ。観光客がいなければフェリーの本数も1日1往復以下になってしまうかもしれない。

乗船中はオーナーさんがいろいろと話をしてくれたのだが、近くに座っている知合いに聞かれたくないからなのか、声を潜めて話すのでエンジン音の中ではよく聞き取れなかった。半分も理解できなかったかもしれない。
もちろん、あまり良く聞き取れないことは伝えたのだが、オーナーさんには話したいことがたくさんあるらしい。

某島の港に到着した。ターミナル正面は駐車場で数十台の車がならんでいる。
そして、民宿の名前が書いてあるお迎えの車が列を成していた。
あとはレンタサイクル。
島にはタクシーがなく、路線バスもないのだ。

オーナーさんの家までは車に乗らなければ、歩いて20分以上かかるようだ。訪問する旅行者は自転車を借りるか、レンタカーを借りる。レンタカーは三台しかないので予約しないと乗れないかもしれない。

データによるとこの島を訪問する旅行者の50%近くが日帰りだ。朝7時台の始発に乗り、最終便で帰れば、ゆうゆう8時間は島で遊ぶことができる。観光名所は一日で全部見ることができるし、ダイビングやシュノーケルのツアーに参加しても帰りのフェリーには間に合う。泊まっても一泊という人がほとんどらしい。

しかし今回、GW前の旅行者数は比較的少ない時期にもかかわらず民宿お迎えの車には大勢のお客さんが乗っていることに驚いた。コロナのせいで去年の観光客数は2019年比で7割減だったそうだが、客足が戻ってきているのかな。

さて、オーナーさんが知合いから借りた車で移動すること数分間、平らな道が続き両側に見えるのはひたすら牧場。ちょっと退屈してしまうぐらい変化のない道路だ。
そのうち目指す家に到着した。旅行者が必ず訪れる人気のビーチから歩いて5分、集落の端に位置している。

正面に大きなウッドデッキを備えた平屋に到着した。家の外には広い庭と屋根付きの作業場的なところがあり、その奥にはシャワー室と浴槽まである。マリンスポーツの業務用に使えそうだ。
両横、後ろに家があるが誰も住んでいないらしい。大勢で騒いでも怒られる心配がないのは良い。

民宿としては独立した畳の個室が2つと、ふすまで仕切る6畳の畳の部屋が玄関側に2つ、裏庭側に同じく6畳の部屋が2つ。個室側とふすまで仕切られた部屋の中間はダイニング。正面が玄関と反対側はオープンキッチンと勝手口。ダイニングテーブルが中央に一つあり、6人ほど囲んで座れるようになっている。

民宿のお客さんはウッドデッキで食事をしていたのだろう。かつては無理やり20人を泊めたことがあるそうだ。大勢泊まれる合宿所として利用できるかもしれない。

オーナーさんによると、以前はテーブル・イスを置いていたけれど、前のテナントが持っていってしまったらしい。オーナーが備え付けたものなら持ってっちゃダメだろうと思うのだけどそのあたりの事情はわからない。かなり広いので食堂としても使えそうだ。
塗装がはげて古ぼけている感じだけど、割れたり穴があいたりはしていないので、塗装すれば見違えるだろう。

布団は4組しかなかったし、火災報知器が取り外されているし、宿泊施設としてはいろいろ足りないものがあるが、冷蔵庫だけはたくさんあった。
旅館業許可もなくなっているので、もし宿泊施設として再開するには消防署や保健所の検査に来てもらわないといけない。準備のために何度も通う必要がある。

オーナーさんが懸念するのは室内の床に穴がたくさん空いていること。築13年でなぜこんなに穴だらけになるのかが謎だが、調査の結果シロアリではないということだけ、わかっているそうだ。
木目のシールで上から隠すように塞いであるけれど、足がズボっとハマったりしないのかちょっと心配だ。

しかし誰も住んでいない家にしては、庭がきれいに手入れされている。聞くと、息子さんが毎週フェリーで通い草刈り等しているそうだ。離島に家があるというのは大変なことなんだな。

オーナーさんの希望としては民泊で利用してほしいとのこと。民泊ならオーナーさんたちが利用したいときには利用できるし、その他のときは旅行者から収益を上げることができる。
たしかに民泊にするのがいちばん利益になるとしても、清掃や宿泊者の対応のために我々が毎回フェリーで通うのは、コストも時間も掛かりすぎる。

「島内に住んでいる方が清掃や宿泊者対応を引き受けてくれるのであれば、民泊運営は可能だと思います。」とオーナーさんに伝えると、「〇〇さんなら引き受けてくれるかも」との返事が返ってきた。

しかし、その〇〇さんとオーナーさんが立ち話していたときに、〇〇さんと目が合ったので「こんにちは!」と挨拶したがスルーされてしまった。オーナーさんから紹介してもらえれば違ったのかもしれないけれど、現状では清掃を引き受けてくれる感じではない。

この家をどのように活用できるか良い方法をいっしょに考えていきましょう、とオーナーさんに話し、家を後にした。

つづく

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