見出し画像

そこ、棚じゃないんですけど。

今回のお話は
上京して初めて本当の満員電車を知った頃のお話。

高校生の時に一応それなりに満員の電車通学を経験はしたが
それでも住んでいる所が田舎だったので
いわゆる「本当の満員電車」とまではいかない位だったのだろう。
しかし当時は本当の満員電車の恐ろしさなんて知らなかったので
その田舎の程度でも「混んでるなぁ」と思って毎日乗っていた。

それから私は高校卒業を機に上京。

初めての東京暮らしは学生寮だった。
田舎者の私には丁度良かったと思う。
なんせわからないことだらけ。
ちゃんと馴染めるのだろうか。
期待と不安の中、新生活がスタートした。

学生寮から学校までは結構遠くて、徒歩→電車→徒歩で
大体一時間近くはかかっていたと思う。
寮なのに遠いなぁ…
今思い出してもやっぱり遠くないか?と思ってしまう。
これは「学校の学生寮なのになんで?」という期待が
勝手にそうさせているのかもしれないけれど…
でもやっぱり学生寮って近いものじゃないの?
まぁ完全に縛られていますね(笑)
当時その路線は、他に負けじとかなりの満員電車だったので
今更ながらちょっと愚痴りたくなってしまった。失礼。

で、本題に戻りますが。
先程言った通り当時乗っていた路線は結構混んでいたので
友達と一緒にいつもなんとか無理して乗っていた。
ぎゅうぎゅうの電車は大変だったので、あまりにも嫌な日は
少し頑張って時間を早めにずらしたりする日もあった。
でもやっぱり大抵はギリギリまで寮でのんびりちゃうんだなぁ。

そしてある日のこと。
いつもと同じく友達といつものMAX混む時間の電車に乗った。
その日は特に混んでいて、足を入れるのすら怪しい状態。
けれどその日は何としてでもこの電車に乗らなければいけなかったので
私と友達は覚悟してその車両に乗り込んだ。
もちろんぎゅうぎゅう状態。
もみくちゃもいいところ。
やや身体も浮いている。
因みに私の身長は150cmです。小さっ。
こんな身長なので、本当に埋もれてしまうのだ。

その日も完全に埋もれかけたが、懸命に顔を出し
自分なりの安全な位置を確保した。
とりあえずはこれで無事大人しくしていれば
大丈夫かな~と思っていたら、何やら私の右肩にドサッ。

肩に何かがのってきた。

「え?」
私が自分の右肩を確認すると、そこにはなぜか
「鞄」がのっていた。

え?って感じですよね?
私も思わずじっと見ちゃいました。そのよくわからない鞄を。
なぜ私の肩に?え?私の肩、棚になったわけじゃないよね?
鞄はいわゆるビジネスバッグというタイプのもの。
何じゃこりゃ。
というか誰の??

まず少しきょろきょろしてみたんです。
周りにはその鞄を持っていそうな感じの
スーツを着た会社員っぽい人が数人いる。
「絶対この中の誰かでしょ。それしかないでしょ。」
そう思い、埋もれながらでも目だけはあちこち探っていた。
すると近くにいた一人がすごいこっちを見ていたのだ。
「あ。」みたいな顔をしてこっちを見ていたのは
さっき推理していた容疑者候補の中の一人だった。
私が顔をあげそちらを見ると、しっかりと目が合ったが
すぐにパッと顔を逸らされた。

あれ、絶対そうじゃん。
おいおい、私の肩は鞄を置く棚じゃございませんよ。

そんな目で暫くの間訴えてみた。
私の視線に気づきながらも無視を決め込んでいる男性。
その間も私の肩にはずっと鞄がのったまま。
いやいや早くおろしてよ。
よくわかんないけどなんかこの鞄すごく重いし‼︎‼︎
絶対気づいたのに、なんでおろさないのーーー。


結局そのまま終点まで私の右肩は鞄置きになっていた。
終着駅に着きみんな電車からどっと降りていく。
雪崩のように私も流されるままに降ろされた。
辺りを探すと、さっき目が合っていたあの男性がやはり犯人だった。
こちらをちらっと見たが、そのまま逃げるように消えていった。
全くもって、災難だった。
30分近く私の右肩は鞄の重さで沈んでいた。
中身はよくわからないけど、本当に謎にめちゃくちゃ重かった。
何が入ってんの?と聞きたくなる位
乗車中ずっともんもんとしていた。
そして、右肩の痛みだけが残されたのだった。

なんだったんだよぉ。もう。

身長が小さいと、こんなこともあるんです。

みなさん。
自分の鞄を誰かの肩には置かないよう
くれぐれもご注意を。


ではまた。

最後まで読んでいただきありがとうございます🐨! いただいたサポートは創作の為に大切に使わせていただきます🍀