見出し画像

ボロボロの靴下を、また履きたくなったワケ。

お気に入りの靴下がボロボロになってしまった。

残念ながらこの子は引退した。

いつもは穴が開かないとさよならは言わないのだけど
ゴムのゆるゆる具合と毛玉具合が凄まじいことになっていた為
泣く泣く引退していただくことになった。

いつもこういったものは少しまとめて処分するので
それまでの間、引退決定済みの保管場所へと移動することにした。

しかし、まさかこうなるとは…

今私は頭を下げて、お願いしている。
目の前には、先程説明したもう引退をしていただいたはずの
あのお気に入り(ボロボロ)の靴下がいる。
一度引退が決定したのに、今私はこうして頭を下げている。

「お願いします。また履かせていただきたいのです。
よろしくお願いします。」

その子はゆっくり頷き、快く受け入れてくれた。

なんて勝手なのだろう。
自分でもそう思う。
こちらから引退通告をしておいて、なんという始末か。
申し訳ありません…
なんだ?私はまた頼りにしているのか⁉︎
…でもね、何が何でも
復活していただかなければならなかったのです。

急に、どうしても履きたくなってしまったのですから。

新しい靴下は縫い目がしっかりしているので締まりもよく
とても素敵なのだけれど、このボロボロの靴下…
いや、つまり私にとって長きに渡る相棒なのだが
ベテランの風格とも言えるこの安定感と懐かしさには
どうしても敵わないのだ。
そうは言っても穴までは開いてないにせよ
かなりボロボロだったので、処分対象引退予備軍にはなっていたわけで。
そんな元相棒が今になりなぜ復活したのか。

なぜだろう。
なぜまた急に履きたくなったのだろう。
私はこの靴下に何を求めているのだろう。

それは恐らく、私の不安で怯えている心を
優しく包み込んで欲しかったのではないだろうか。

ゆるゆるに伸びた柔らかい靴下。
他にはない温かみ。
この子はそれを持っているのだ。
私との思い出や歴史。
ボロボロになった毛玉いっぱいの姿を見て思う。

私はこの優しさに甘えたかったんだな。

こうしてまさかのカムバック。
しかし、これから他の物にもカムバックキャンペーンが
適用にならないようには気をつけねば…
このキャンペーンが続いたら、それはそれでよくないのだろう。
私の場合、もしかするとどんどんこうして
カムバック量がすごくなるかもしれない。
しかし、愛着のあるものを処分するのにいつも勇気がいる。
普段はこんなことはないのだが
こんな風に甘えたくてしょうがない時もあるのだ。

久しぶりの再会のはずなのに、この素晴らしい履きやすさ。
そうだ、こんな感じだった。
変わってないね、君は。
安定感のある包容力。
やはり抜群ですな。

そんなわけで、元相棒に甘えたくなってしまった私は
ボロボロの靴下をまた履くことにした。
ゆるゆるでも毛玉いっぱいでもいい。
今度は穴が開くまで履こう。
そうでもしないと私は、卒業できそうもない。

私の勝手な都合で一度は離れたけれど
どうかまた、どうかまた
何卒宜しくお願い致します。


ではまた。


最後まで読んでいただきありがとうございます🐨! いただいたサポートは創作の為に大切に使わせていただきます🍀