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医師の視点から見る感染症対策としての鼻洗浄とは?

ウィルス感染症への鼻洗浄・高張食塩水の役割と可能性

今回は感染症予防に対しての鼻うがいの可能性について、みらいクリニック 院長の今井一彰先生より医師の視点からのお話をお伺いしました。

○鼻洗浄による新型コロナウィルス感染予防への期待

新型コロナウィルス(以下COVID-19)の猛威がいまだ全世界を覆っている中、抗体の獲得につながるワクチン、治療薬の開発への期待は高っていますが、実用化はまだ先になりそうです。そのため、まずは、感染予防がとても大切な鍵となります。

広く行われるようになったPCR検査により、無症状あるいは軽度のケースもあることも分かってきました。自覚症状がない時も注意が必要です。

COVID-19は肺炎を起こすまでは風邪のような急性上咽頭炎(急性鼻咽腔炎)の症状が主体です。感染経路も、飛沫感染を含む空気媒介感染を起こしますが、すぐに生体内に侵入するインフルエンザと異なり、数日かかることからウィルスが上咽腔に付着しても、その日のうちに、「鼻洗浄・鼻うがい」で洗い流してしまえば、感染成立を防げるのではないかと期待されます。

「鼻洗浄・鼻うがい」はこれまでも、上気道炎予防や副鼻腔炎や花粉症の補助治療として推奨されています。普段行うような「喉うがい」のみでは鼻腔、上咽頭の洗浄ができません。

「手洗い」「喉うがい」とともに「鼻洗浄・鼻うがい」は感染予防効果が期待できるのではと考えています。

○鼻洗浄の役割と注意点

COVID-19の感染予防対策として、石鹸や手指消毒用アルコールを使った「こまめな手洗い」と人にうつさないための「マスク」、口腔内の「歯磨き・うがい」、そして人との距離をとり3密回避が推奨されています。

これに加えて「鼻洗浄」は上咽腔内に侵入したウィルスを感染成立前に洗い流すことにより、鼻腔内の繊毛を活性化して免疫機能・異物排除機能を保つことに大きな役割を果たします。

さらに鼻うがいをするときは少量の洗浄液で鼻をすすぐより十分な量で洗浄する方がより良いでしょう。

ただし、無症状者が使用した洗浄液や洗浄器具、もしくは水道設備周囲がウィルスの感染源となる可能性もあるので、ウィルス粒子を不活化する対策と、適切な手指衛生を実践し、周囲の表面の汚染除去と鼻洗浄器のボトルを滅菌する事で汚染除去対策となる事と、これら安全性を担保し、特に患者と医療従事者に奨励をしていきたいと思います。

感染予防

○鼻うがいを新しい生活様式に

COVID-19はパンデミック感染症として大きな脅威ではありますが、従来のウィルス性呼吸器感染症(風邪・インフルエンザ等)と同様にCOVID-19は上気道炎とも言えます。ウィルス性呼吸器感染症に対して、海外では「鼻洗浄・鼻うがい」が感染予防や症状軽減につながる手法として認知、実施されて来ました。日本ではあまり周知されていないこともあり、感染症予防としては新しい予防法となります。

COVID-19への「鼻洗浄・鼻うがい」の予防効果有効性については、科学的に証明する国内データは残念ながらまだありませんが、手軽に導入出来て、コスト面からもメリットが多いので、毎日の「鼻洗浄・鼻うがい」を習慣化していただきたいと思います。

現在鼻うがいの国内人口は推定で100万人程度が実施しているとされますが、新しい生活様式としていろんな方が鼻うがいを取り入れることを提案していきます。

○COVID-19対策におけるハイパートニックの有用性

鼻うがいは、生理食塩水で洗浄し、鼻腔内を灌流させることで、ウィルスの軽減効果と粘液線毛機能障害および炎症反応が続発して起こるウィルス性呼吸器感染症に対して、有効であることは、前段にてお話ししましたが、このほどの最新の研究では、高張食塩水(ハイパートニック・生理食塩水の3倍ほどの濃度(2.5~2.7%))による鼻洗浄(HSNIG・高塩鼻洗浄)が新型コロナウィルス感染症の症状と病気の期間を軽減する役割を果たす可能性があることが示唆されました。

これまで、「鼻洗浄・鼻うがい」はウィルスのみならず花粉などの微粒子や炎症物質を含む微絨を機械的に洗い流すことで、その効果を示すと思われてきましたが、粘膜上皮細胞に取り込まれた高濃度の塩素イオンを鼻腔に送り込むことで、細胞内で抗ウィルス作用をもつ次亜塩素酸が作られることがわかりました。

抗ウィルス免疫として、各種ウィルスに対して効果がある次亜塩素酸は感染とウィルス排出を制御する対策として注目を集めています。

さらに高張食塩水は生理食塩水と比べても粘膜浮腫改善や炎症の軽減に優れているとの報告もあります。

大量の生理食塩水を必要とする「鼻うがい」も有効ですが、市販されているもので、ハイパートニックのスプレータイプの製品があり、屋外や水が使えず鼻うがいができないときは、であれば持ち運びもしやすく、洗浄後の水による周囲の汚染も防ぎながら適切に上咽頭に高張食塩水を吹き付けることができます。

家庭では、生理食塩水の高張食塩水を用いた「鼻うがい」、屋外や水が使えない場所ではハイパートニックスプレー使用すれば、鼻腔ケアが行うことができます。

生理食塩水を使った「鼻うがい」は、ほとんど違和感、痛みなく鼻腔洗浄できますが、高張食塩水でも、ほとんどツンとした痛みを感じることがなく洗浄できるので安心して使用できます。

鼻うがい


記事監修

みらいクリニック 院長 今井一彰先生

メディカルエンターテイナー
みらいクリニック 院長
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長

  • 平成 7年山口大学医学部卒業

  • 平成 7年山口大学医学部救急医学講座入局

  • 平成 9年麻生飯塚病院 総合診療科・漢方診療科

  • 平成13年山口大学医学部附属病院 総合診療部

  • 平成15年(医)清仁会 林病院 内科・東洋医学専門外来

  • 平成17年(医)樹一会 山口病院 漢方と痛みの外来

  • 平成18年11月 みらいクリニック開院

息育、口呼吸問題の第一人者として全国を講演で回る日々。
一般向けから専門家向け、幼稚園小学校から行政・企業向けなど幅広いジャンルの講演を行う。

あいうべ体操、ゆびのば体操の考案者でもあり、Tv出演、マスコミにも広く取りあげられる。漢方治療のほか上咽頭炎治療(Bスポット)も行う。

みらいクリニック 院長 今井一彰先生


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