カリムスメ
こうして手を繋いでいると、本当の娘のように思えてくる。
「ねえノゾミちゃんあれ買って」
おもちゃを指差す。
本当の娘ならわがままにねだるのを「ダメ」と叱りつけるのだろうけれど、私は可愛がるだけ可愛がる。
「いいよ。どれがいい?」
「んーと、ぜんぶ」
「ぜんぶかー。よしぜんぶ買っちゃおう」
「ノゾミちゃんありがとうー!大好き」
大好き、この言葉は今の私にはとっては何よりの薬だ。
会計を済ませて、おもちゃを渡す。
「あそこにいるお母さんのところ一人で戻れる?」
「うん」
「えらいね。じゃあね、バイバイ」
「ありがとー!バイバイー!」
母親の元に走り去る後ろ姿を見て安心する。
遠くの方で母親の声が聞こえた。
「どこに行ってたの!心配したじゃない」
「ノゾミちゃんにおもちゃ買ってもらったの」
「ノゾミちゃんて誰? なんなのこれは?」
そういえばあの子の名前なんていったっけ?
聞いたはずなのにまた忘れてしまった。
まあいいか。次の子は忘れないようにしよう。
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