エッセイを書きはじめて3ヶ月で文学フリマに出店した振り返り
文学フリマから2日が経ち、熱気と疲労が落ち着きはじめました。
岐阜の自宅にいると、自分が東京で本を売っていたことが夢のようです。
すでに来年5月の文学フリマ東京38には申し込みました。
半年後にもっとよい本とスペースを作るために。
私のように、第一歩を踏み出そうとしている人たちのために。文学フリマ37の振り返りです。
文学フリマへの参加が決まるまで
文学フリマに申し込んだのは期日ギリギリ。まとまった量のエッセイをnoteに投稿し始めて1か月経つかどうかの時期でした。
学生時代から無料のブログでちょこっと文章を書くことはありましたが、ブログを開いては自然消滅の繰り返し。
そのため、noteを始めたときから意識していたのは「どうやったら楽しく続けられるか」でした。そのときに見つけたのが文学フリマです。
私に必要なのは、横の繋がりと締め切りだ!その場で文学フリマへ申し込みました。
でも、当選報告が来たときは正直焦りました。イベントで物を売るのも、本を作るのも初めて。何をやればいいのかも分からない……。
本を作る
片っ端から「同人 エッセイ」「ZINE 初めて」で検索し、本を作るために必要な作業を調べました。
1. まとまった量の文章
2. 表紙
3. 印刷所への依頼
ざっくり言えばこれだけ。
1については、ひたすらnoteに書き溜めればOKなのであまり不安はありませんでした。
3はあまりにも未知数で、最初に印刷所を調べ「しまや出版」さんに依頼を決めていました。
しまや出版を選んだ理由
・文学フリマ向けの文学セット(パッケージ)があり、初心者でも選びやすい
・小部数でも印刷できる
・見積もり不要で大まかな値段が確認できる
・Wordから入稿データが作成できる
・テンプレートを用意している
・PDF入稿できる
魅力的だったのは「Wordから入稿データが作成できる」「テンプレートを用意している」の2点です。ノンブル(ページ番号)や余白の作り方などの基本も分からなかったので、最低限の体裁が整ったテンプレートをアレンジして入稿データを作成しました。
最終的な注文内容は以下です。
・文芸オンデセット【2023年7月~】
・表紙のマットPPオプションあり
・文庫サイズ64Pを30部
表紙の作成
初参加者が一冊でも多く手に取ってもらうためにできること。その一つが、興味を引く表紙作りだと考えました。
Pinterestで「本 装丁」と検索すると装丁がたくさん見られます。エッセイの本文作業と並行で、文章や好みに合うものをブクマしてイメージを固めました。
本番1ヶ月前にタイトルや中身が固まったら、いよいよ表紙作業に入ります。
Illustratorやクリップスタジオは有料なので、今回はFigmaを利用しました。
FigmaはアプリのUI(画面デザイン)によく使われるツールで正直なところイラスト向きでは無いのですが、仕事で使ったことがあるので選びました。
他のツールと異なり、無料で利用できるメリットも大きいです。
表紙について決めていたのは以下の3点。
・エッセイに出る要素をイラストで散りばめる
・色を3色ほどでまとめる
・今後の表紙でも入れやすく、「鮎川の本だ」と分かってもらえる要素を入れる
0からイラストは描けないので、自分が撮った写真からエッセイに関連する要素を抜き出してFigmaのボードに配置します。
「猫が風呂場で本を読んでいる」のような写真に撮れないイメージは、AIが生成した画像を使いました。
Canvaの「Magic Media」という機能を利用しています。こちらで作った画像は商用利用が可能です。
写真を配置したら、レイヤーを変えてiPadでひたすら写真をなぞります。
配色は好きな緑・それに合うオレンジ・背景に使えるベージュに決めて、ペンで塗っていきます。
Figmaでは線で囲った空間を自動で塗ることができず、ペンで塗りつぶした箇所に微妙な隙間があるのですが、手書きっぽさが良い雰囲気になりました。
線画と塗りつぶした色をあえてずらして、ゆるさを強調しています。
「今後の表紙でも入れやすく、「鮎川の本だ」と分かってもらえる要素」としては水玉模様を入れました。少ない色でもイラストに強弱をつけられて、おとなしすぎない表紙になりました。
装丁は多くの方に褒めていただき、表紙をきっかけに手に取ってくださった方もいたようです。
構成を決める
本作のエッセイはnoteから選んでいます。特にお気に入りで「スキ」も多かった「輝くスイーツ、シャインマスカット」を最初に入れ、タイトルにも使っています。
表題作が決まったら、他の入れたいエッセイを選び順番を決めました。
・雰囲気(笑える系、しっとり系)の同じものが続き過ぎない
・最初は短め、後半は長め
・最初の数話は特に人気のもの(立ち読みでの判断材料になるので)
この3点を意識しています。
目次と奥付はネットの記事を参考に入れました。無くても大丈夫かと思いますが、目次でエッセイ全体の雰囲気を感じられるので読者のためにも入れた方が良いと思います。
入稿作業
しまや出版の「カンタンWord入稿 β版」を利用しています。
まず、本のサイズと形式に合わせたテンプレートをしまや出版の公式HPからダウンロードします。
Wordは普段使わないので「Microsoft 365 Personal」(サブスクのWord)を登録し、無料お試し期間内で入稿作業を終えました。Word入稿がとても良かったので、今後は入稿作業の月だけサブスク契約して使おうと思います。
次にWordでテンプレートを開いてnoteから本文をコピペしていきます。横書きなので縦書きになると文章の印象も変わります。
・改行や空行の調整
・誤字脱字の修正
・言い回しの細かな修正
これらの修正をしながら、目次や奥付を含めて4P単位になるように調整しました。今回は64Pです。
Wordデータが完成したら「カンタンWord入稿 β版」をダウンロードして、PDF化します。この辺りの細かい操作は、公式HPがとても親切なので読めばなんとかなります。
表紙と裏表紙はFigmaのデータをPDFでダウンロードして、同じフォルダにまとめて入稿しました。
しまや出版での入稿時は電話確認のサービスが選べます。初心者は迷わず選択しましょう。
本文の数ミリのずれや、自分では気づけなかった表紙データのゴミなど、細かいところまで見つけていただき本当に助かりました。
本が届く
会場に送っても良かったのですが、早く本が見たかったので自宅配送にしました。
SNSで実物の写真付きで告知できるのもメリットですね!
展示レイアウトを決める
本を手に取ってもらうためには、きれいに見せることも大切。これまたPinterestでレイアウトのイメージを調べました。
本を立体的に見せるために、以下のものを購入しています。
・植木鉢の台×2(100均)
・ブックスタンド×2(100均)
・布(手芸屋。1000円ちょっと)
・木の皿(100均)
・ポスタースタンド(Amazonで1000円)
また、本が30部しかなかったので目を引く何かが欲しいなと思い、サークル名にちなんで「ねぎとろ丼」を作りました。
これも材料はすべて100均です。
・樹脂粘土×5(100均)
・アクリル絵の具(自宅にあった)
・発泡スチロール(自宅にあった)
・お椀(100均)
ねぎとろ丼は特に目を引いたようで、購入の際に「どうやって作ったんですか?」と聞いてくれる方もいました。次回も持っていきますので、ぜひツンツンしてください。
ポスターと無料配布を作る
ポスター(A3)と無料配布(A6)もFigmaで作成しています。
同じツールで作ると表紙データや色を流用できるのでおすすめです。
こちらも「おしながき」と検索して出てきた画像を参考にしています。載せる要素や構成だけ参考にして、色やフォントは表紙と合わせた方がブース全体で一体感が出ます。
ポスターと無料配布は名古屋・栄のキンコーズで印刷しました。
大きめのサイズで印刷できますし、裁断機も無料で借りれます。初めてでしたが店員さんがめちゃめちゃ親切で助けられました。
お釣りの準備
色々な方法があるようですが、仕事を中抜けして銀行で両替しました。
価格設定は500円だったため、2万円を以下のように崩しています。
1000円→5枚
500円→20枚
100円→50枚
これ、多過ぎました。
500円ちょうどで払ってくれる人が多く、小銭がお釣りケースに入り切らずに財布がパンパンになりました。半分でよかった…。
文学フリマ当日!
10:10には会場に着いていたのですが早過ぎました。全体的に張り切り過ぎ。
30部であれば設営後の写真撮影や見本誌提出も含めて30分あれば余裕だったため、あと1時間遅れて入ってもよかったな〜と思います。
一人参加だと開場前にブースを見て回ろうにも貴重品を持ち歩く必要がありますし、時間が余ります。
開場
開場時の拍手、本当にやるんですね!感動しました。
開場直後に5分ほど抜けて2冊だけ購入し、あとは閉場まで店番です。声かけと接客も1人でこなせました(バイトで接客やってて良かった)。
売れた数と客層
文学フリマは出ること自体に意味がありますが、やはり売上も気になります。
今回の売り上げは23/30部。1冊500円なので11,500円でした。初参加でここまで読んでいただけるとは!
文学フリマのパワーを感じました。ご来場くださった皆様、本当にありがとうございます。
ちなみに刷るほど赤字の価格設定なので、参加費も含めると大赤字です。でも今回はいいんです。楽しかったので。
継続的に活動を続けるためにも、次回以降は参加費くらいはまかなえるように金額を考えます。
お客さんは全体を通して同年代(2, 30代)の女性が多めでした。岐阜県繋がりで買ってくださった方もいたので、ポスターで「こういう人にオススメだよ」と匂わせるのが大事ですね。
時間ごとの変化でいうと開場直後はXのフォロワーさんなど、すでに私を知っている人が多めでした。
14〜15時台は人通りが多いわりにあまり人が来ず、16時台に再びピークが来ました。
最後に近づくにつれて、立ち読みや表紙で判断して買ってくださる割合が増えた印象です。
一人で5時間ぶっ通しの接客は正直しんどいですが、最後に来てくれるお客さんもいるのでこれからもできる限り閉場まで粘ります。
やってよかったこと、もっと良くできたこと
全体を通しての振り返りです。
やってよかったこと
・早めに印刷所を決めてスケジュールを引いた
・本文を早めに書き溜めて、文章を書く以外の作業の時間を確保できた
・表紙やレイアウトなど、当日の「手に取るきっかけ」に力を入れた
・文学フリマのWebカタログやXでの告知もきちんとやった
・PinterestやXで下調べをして、先人の知恵を取り入れた(初参加の割には本もブースもクオリティ高めにできた)
・ねぎとろ丼のサンプルなど、目を引くものを取り入れた
もっと良くできたこと
・本の奥付にXやnoteのアカウント名を入れるのを忘れた
・おそらくサークル名経由で調べて連絡をくれた方がいました。お手数おかけしました。
・無配にブース番号を入れるのを忘れた
・休憩中や行列待ちで無配を読んで気に入ってもらえた時に、ブースに戻る手がかりを作れなかった
・一人参加だった
・恥ずかしくて、家族にはペンネームも本文も内緒で本を作ってます。一人参加では自分の買い物ができず、トイレにも行きづらいので水分をセーブしました。次回は旦那同伴にするか?とても悩む。
最後に
とても長くなりましたが、文フリ参加を決めてからの振り返りでした。
緊張したし、入稿直前はバタバタしましたが、自分が作った本を直接お渡しできた喜びでしんどさが吹っ飛びました。
これはね……ハマります!!
また文学フリマ東京38でお会いしましょう!
文学フリマに出品した「輝くスイーツ シャインマスカット」に掲載したnoteは、こちらで販売しています↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?