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出張先で受けた性差別と、それに対して怒ることの難しさ

3泊5日の海外出張から帰ってきた。所属する部署の代表として、社長や役員と一緒の旅である。

しかし、帰りの飛行機の中で私は悲しくて悲しくて仕方がなかった。
部署代表としての務めもしっかり果たしたのに、帰国して丸一日経った今も、自分が受けた仕打ちに怒り悲しんでいる。

そしてその怒りは、一緒に出張に行ったメンバーにはどうせ伝わらないだろうと思い、ここに書くことにする。


最終日、現地で働く日本人との交流があった。営業職と名乗るその人は、社長、役員、私と一歳違いの別部署の代表者(Aさん)に順番に名刺を渡すと、なぜか横に並んだ私をスルーして自席へ戻った。

社長は何事も無かったかのように、彼が売る製品について質問を始めた。左手で開きかけていた名刺入れが途端に恥ずかしいものに見えて、そっと背中に隠したまま、話を頷きながら聞いた。

また別の日本人。彼女は私を見た瞬間「あら、あなた紅一点ね!」と叫び(この言葉は大嫌いだ)、横のAさんに対して「あなた、この子をしっかり鍛えてあげるのよ!」と言った。私と彼の専門分野はまったく違うのだが……。

Aさんが「彼女とは部署が違いますから」と苦笑いでフォローしてくれたのは救いだったが、「部署が違っても一緒よ!」と言い返した彼女には意図が伝わっていなそうだった。


先ほど、出張報告を誰よりも先に共有した。
もちろん私がされたことなんて一言も触れず、訪問企業との会話や自社製品に関わりそうな文化の違いについてまとめた。

会社にとって役立つのはそういう情報で、私が受けた差別的な振る舞いや発言は「仕事には関係のない愚痴」として認識されるのがわかってるからだ。


でも、こういうのっていつまで続くんだろう。

女性が仕事で受けた性差別に対して怒るのは難しい。
異性が受けた性差別を理解するのは難しく、権力のある上層部には男性が多いからだ。
数年前、同僚から受けたセクハラ発言を報告した際も、男性上司は明らかに面倒臭そうな顔をした。

彼は私が怒っている理由も、どうしてそれを自分が聞かされているかもわかっていない様子だった。よほどの内容でない限り、セクハラや女性差別的な発言を男性へ報告するのは「業務中によくわからん愚痴を聞かされた」と受け取られ、ネガティブな評価を受けるリスクと表裏一体だ。


今回も、私は社内での立ち位置を守るために、表立って怒ることもできなかった。あの女性に対して「私が彼から鍛えてもらうような内容はありません」と言ったら、どうなったんだろう。おそらく後から「失礼だ」と叱責され「あの子は対外的な場に出さないでくれ」と社長から裏で指示が回る可能性すらある。

しかし、私が黙ってしまったから、彼女や営業職の彼はまたどこかで同じ振る舞いをするのだろう。自分がしたことが正しかったのか、間違いなのか、いまだに分からない。


貴重な海外出張の機会だった。
同じ場所へ行って同じ話を聞いたのに、彼らと私の中にはまったく違う感情と記憶が残ったはずで、それが悔しい。私も仕事のことだけ記憶に残して、いい気持ちで帰国したかった。彼らが羨ましい。


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