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JFLサポよ、震えて眠れ。FC刈谷 is BACK!!【2020地域CL決勝レポ】

JFLよ、思い出したか。

かつて谷底に突き落とした獅子が舞い戻ってきたことに。

今から恐れおののくがよい!!!

これはオーバーな表現ではありません。僕は目撃しました。獅子が目を覚ます瞬間を。この事実を知らずに来年JFLを戦うと痛い目を見ると思います。僕はJFLの皆さんのために実態を書き記すことにしました。

僕が目撃した舞台は、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(通称:地域CL)です。

地域CLとは、地域リーグ(5部にあたる)のクラブがJFL(実質4部にあたる)への昇格を懸けて争う大会です。まず12クラブによる1次ラウンドがあり、4クラブに絞られます。そして決勝ラウンドを戦い、上位2クラブがJFLに昇格する権利を得られます。JFLへの道は非常に狭き門です。毎年、血を血で洗うような激戦が繰り広げられます。

ちなみにJFLを「実質4部」としたのは、日本サッカーのピラミッド構成上、J3とJFLは同格と扱われているためです。JFLはプロ、アマチュア混在のリーグであり、アマチュアチームにとってはJFLが最高峰のリーグです。一方でJFLは、Jリーグを目指すクラブの登竜門としての意味合いから、実質的に4部との見方をされることもあります。この記事では、Jリーグから見てどのくらいの位置にあるクラブかをわかりやすくするため、実質4部と表現しました。

僕は、地元のクラブである北海道コンサドーレ札幌のサポーターです。札幌は、かつて長らくJ1とJ2を行き来し、エレベータークラブと呼ばれていました。もう昔の話です。来季2021シーズンをもってJ1連続5シーズン目となります。胸を張ってJ1クラブのサポーターと名乗っていいでしょう。

2020年に入ってからは、「コンスレンテ」と名乗りラジオ配信をはじめました。「カウンセラー」という意味です。是非、一度聞いてみてください。

地域CLに行くのは今回が初めてです。僕は大学時代、サッカー観戦サークルに所属しておりカテゴリ問わず様々な試合を見てきました。しかし、地域CLは会場が非常に遠かったり、「どうせ地元の代表はすぐ負けるから」と思いあまり興味がわきませんでした。でも今回は違います。

今回の決勝ラウンドに僕の地元北海道のクラブが進出したのです!

そのクラブとは、北海道十勝スカイアースです。

僕の生まれ育った札幌とは、遠く離れた帯広が本拠地です。しかし北海道のクラブであることには変わりません。地域CLにおいて北海道のクラブは万年1次ラウンド敗退です。今回、決勝ラウンドに進出したのは、2012年のノルブリッツ北海道以来8年ぶりです。

これは応援しに行こう。そう決めました。

しかし、十勝は決勝ラウンド1日目に行われたFC TIAMO 枚方戦で0-5で敗れてしまいました。

リーグ戦なのでまだ昇格の可能性は残っています。初日でこれだけの大差をつけられて負けると、上位2クラブに自力ですべりこむことは厳しくなります。

でも、いこう!2位以内の可能性が残っている限りは!

11/21の決勝ラウンド2日目に行くことにしました。

僕には、もう一つ気になることがありました。スタジアムの立地です。会場のゼットエーオリプリスタジアム(通称:オリプリ)は、千葉県市原市にあります。かつてはジェフユナイテッド千葉が主に使っていたスタジアムでした。ジェフ千葉が現在主に使用しているスタジアムのフクダ電子アリーナ(通称:フクアリ)よりも東京から離れています。

乗り換え案内アプリで調べてみると、自宅の最寄り駅からスタジアム最寄りのバス停まで1時間15分程度かかります。

ん?1時間15分程度?僕は毎年のようにアウェイ観戦で行っている味の素スタジアム(通称:味スタ)へのアクセスを調べました。

こっちも1時間15分程度です。全然変わりません。

味スタと比較するとそう大した距離だと思わなくなりました。懸念は解決しました。あとは当日、電車とバスに乗り遅れずにスタジアムに向かうだけです。

さあ、行こう!未知なる大会へ!

東海の獅子は谷底で目を覚ます

自宅最寄り駅からJR京葉線に乗ってまず蘇我駅に向かいます。普段乗っている車両でも、初めて行く場所に向かうとなんだかいつもと心持ちが違いわくわくします。蘇我駅からJR内房線に乗り換えて五井駅に到着しました。

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バス到着まで時間があったので駅周辺を巡っているとこんなポスターに出会いました。

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市原市は、『更級日記』の出発の地です。この日記は菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が、13歳のとき市原から京都に向けて出発したときから、晩年までの約40年を回顧した文章です。

冒頭が「東路(あづまぢ)の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる人、……」から始まります。「京都から東国へ向かう道の最果てよりもさらに奥の方で育った人」という意味です。日本の都が京都だった当時は、この市原の地は果てしなく遠い場所に感じられました。今の感覚だと、東京から北海道の最北端、宗谷に行くようなものでしょうか。

バス停からスタジアムへ歩いているとき、前方に見覚えのある後ろ姿が見えました。

あ、あれは宇都宮徹壱さんだ!

思い切って話しかけてみようと早歩きで追いかけますが、なかなか追いつきません。宇都宮さん、歩くのが速いです。競歩レベルに歩くスピードを上げてようやく追いつき、ご挨拶ができました。

真っ先に伝えたのは、宇都宮さんの新刊『フットボール風土記』の感想です。同じく著書である『股旅フットボール』や『サッカーおくのほそ道』と話が連綿と繋がっているところに興奮したと伝えると、「股旅サーガみたいになっているね」と宇都宮さんはおっしゃいました。シリーズ小説のように前作、前々作に登場した人物やクラブが立場や形を出てくるのはまさに「サーガ」のようです。

ちなみに、僕が『股旅フットボール』と『サッカーおくのほそ道』について書いた書評はOWL magazineに掲載しています。是非、お読みください。

宇都宮さんには一つお聞きしたいことがありました。十勝の印象です。

「すごく楽しみなチームだけど、1試合目は普段やってきているリーグの差が出ちゃったね」

枚方が所属する関西リーグと、十勝が所属する北海道リーグ、0-5になるくらいまだまだ差があるのです。

スタジアムに到着し、まずは外観を眺めます。

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「なかなか立派なスタジアムでしょ」と宇都宮さんはおっしゃいました。

確かに歴史がありそうで立派な風貌です。後で調べたら、1993年建設でした。僕と同じ年です。一部が黄色と緑のジェフ千葉カラーに塗られており、本拠地であったことを示しています。

宇都宮さんと別れ、スタジアム内に入場します。ここで少し戸惑うことがありました。というのも、検温はもちろんのこと、応援するクラブを選択した上で体調チェックシートを提出する必要があります。各クラブで席の範囲が指定されているのと、入場可能人数が各クラブ500人と制限されているためです。第2試合の十勝vs栃木シティFCは迷わず十勝を選びます。第1試合の枚方vsFC刈谷については特に応援したいクラブはありません。結局、枚方に一抜けしてもらうことが、十勝にとって追い風になるはずだと思い枚方を選びました。

隣に並んでいたおじさんは「本当はサッカー大好き席とかあればいいのにな」とマスク越しに苦笑いしていました。どのクラブにも肩入れせずただ単にこの大会を楽しみに見に来ているそうです。

OWL magazineの仲間であるとよださんによると、オリプリは無駄に柱があることから「パルテノン珍殿」、スタジアムを取り囲むようにそびえ立つ防音壁は「ベルリンの壁」と呼ばれているそうです。どれどれと思いスタジアムの中を確認してみました。

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柱は等間隔に数多く並んでいます。壁は少しの光しか漏れてこないくらい高くそびえ立っています。これは外に音が漏れにくいこと間違いないでしょう。

この日はどこのクラブについても何も情報を入れてきませんでした。記憶をたどると、枚方は鹿島アントラーズやガンバ大阪などで活躍した新井場徹さんが作ったクラブです。また、ヴィッセル神戸などで活躍した田中英雄選手が所属しています。

刈谷はかつてJFLに所属していました。刈谷の前身はデンソーサッカー部です。デンソー時代には、北海道コンサドーレ札幌ともJFLで対戦経験があります。しかし2009年に地域リーグに降格し、それ以来11年JFLに昇格できずにいます。地決では6回涙をのんでいます。

ちなみに、会場のオリプリを本拠地としていたジェフ千葉もJ1からJ2に降格してから11年昇格できずにいます。刈谷とまったく同じです。

流れてくるメンバー紹介のアナウンスを聞くと、枚方のメンバーが非常に豪華でした。田中選手の他にも、元鹿島や神戸などの野沢拓也選手、元ガンバ大阪などの二川孝広選手、元アルビレックス新潟などのチョ・ヨンチョル選手など5部リーグのクラブとは思えないラインナップです。監督は元名古屋グランパスなどの小川佳純監督です。

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「これは枚方が圧倒する流れじゃないかな……」と密かに思いました。枚方は第1節で十勝相手に5-0で勝っています。対する刈谷は栃木に0-0の引き分けです。

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ところが予想は大きく裏切られました。刈谷がペースを握り、試合を優位に進めます。自陣から枚方ゴール前までパスがなめらかに回る様は、見ていて惚れ惚れします。極めつけはセカンドボールに対する対応です。刈谷は多くの場面でボールを自分のものにします。ただ、刈谷に強力なフィニッシャーがいないからか得点にはなかなか結びつきません。

もしかすると枚方としてはそこは織り込み済みだったのかもしれません。初戦で大勝したので無理に攻めず引き分けも念頭に置いた試合運びだったのでしょう。

試合は劇的な幕切れとなります。終盤、ずっと押していた刈谷がゴールを挙げます。慌てた枚方が攻勢に出たアディショナルタイム、道上隼人選手の美しいボレーシュートが決まり1-1の同点で試合終了しました。

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刈谷は勝ちきりたい試合、枚方は最低限の勝ち点はとれて計画通りでした。

びっくりしたのは刈谷の強さです。地域リーグ降格後、今回で地域CLは7度目の挑戦です。地域CLの戦いをわかっているというべきでしょうか。あなどれないと思いました。

試合が終わるといったんスタジアム内から退場し、再度受付して入場します。少し面倒ですがこれも感染対策の一つです。仕方ありません。

2試合目の十勝と栃木もほとんど情報がありません。十勝には元札幌の曳地裕哉選手、永坂勇人選手、内山裕貴選手、元U-18の松尾雄斗選手や工藤竜平選手がいます。また、北海道出身の選手が多いことをOWL magazineの仲間であるさかまきさんのラジオで聞きました。

栃木は、以前天皇杯で東京武蔵野シティFCと激闘を繰り広げていたのを生中継で見ていました。3-0でリードしながら、終了間際に3失点して延長戦、PK戦までもつれこみ、栃木が敗れた試合です。

びっくりしたのは栃木が自前のバスでやってきたことです。おそらくユースの選手達を応援に動員するためでしょう。4クラブの中では一番会場に近いとはいえ、規模の違いを感じます。

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この試合は不安でいっぱいでした。そもそも高校や大学でも北海道の代表は全国大会では力を出し切れなかったり、思いっきり力の差を見せつけられることが多いからです。しかも十勝は前節枚方に0-5で大敗しています。果たしてどうなるでしょう。

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またも予想は裏切られます。大敗から気持ちを切り替えた十勝が落ち着いたディフェンスで栃木の攻勢を防ぎます。なかなかチャンスを作れてないのは気になりますが、無失点で抑えれば最終節まで昇格の望みをつなぐことができます。このまま試合が終わってくれれば……。

その願いもむなしく後半途中にCKから栃木に先制点を許してしまい、そのまま試合は終了しました。0-1で十勝の負けです。十勝のJFL昇格の可能性はなくなりました。

寒い。夢中になっていると気がつきませんが、応援しているクラブが負けた途端、寒さが身にしみます。十勝にとって明後日行われる第3節は消化試合です。正直、この2試合で地域CLは充分堪能した。そう思いました。

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東海の獅子は勝利の雄叫びを上げ、駆け登る

が、

しかし、

3日目も来てしまった……。

地域CLは充分堪能したと思ったのにいったいなぜ……?

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ここからは、有料公開にさせていただきます。

僕はもう一度地域CLを訪れた理由、獅子となった刈谷の雄姿をお読みください。

OWL magazineでは毎月700円で個性あふれる執筆陣による記事を毎月12~15記事程度読むことができます!

是非ご購読を!

また、2日目の観戦の感想は、ラジオ番組でも配信しています。ぜひこちらもお聞きください。

それでは、決勝ラウンド3日目編スタートです!

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