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愛読書感想文 1冊目「つきのふね」

私の人生におけるバイブル、と言っても過言ではない小説です。

森絵都「つきのふね」

私の人生で最も多く読み返し、そして最も多く文庫本を購入したのは、間違いなくこの作品でしょう。「本が好き」とか「趣味は読書」という友達に出会った時、その相手がまだこの作品を読んでいないと知ったら、必ずプレゼントしているからです。累計で10冊以上は買ってるんじゃないかな?

そんな訳で、ハードカバーと文庫と、文庫は装丁違いで常に何冊か自宅の本棚にストックしていたのですが(このあたりにただならぬ愛読書感が出ていますね!)、1番好きな装丁だった濃いブルーグリーンの文庫本は誰かに差し上げたきり買い足せていません。次に本屋さんへ寄った時に見かけたら買っておきます。紺地に桜沢エリカ氏のイラストが入ったハードカバー版も、グリーンイエロー系の文庫版も、どの装丁も好きなんですけどね。

さて、そろそろ中身について語りますが、若干のネタバレを含みます。未読の方は踵を返すも良し、です。ただ、決定的な内容は記しませんので、私のネタバレを読んでから作品を楽しむも良し、です。

この作品の素晴らしさは、主な登場人物の全員に対して、どこかのタイミングで必ず共感を覚える、というトコロにあると思っています。物語を読み進めている時に「よく分かんないけど、こーいう人っているよねぇ……」と、まるっきり傍観者の立場になるのではなく「そうだよね。こーいう気持ちになる事って、あるよね。」と、必ずどこかで共感できるポイントがやってくるのです。

植物になりたいさくらも、不良グループから抜けられない梨利も、ひとりになるとぞっとする勝田くんも、船を作りたい智さんも、執念深いヘビ店長も、ひとつ間違えば危ないヤツかもしれないツユキさんにも。

ちなみに、この本の発売は1998年。おっとビックリ、20年以上も前になるんですね……!私の場合、まさに自分自身がちょうど中学生の時にこの作品を読んだので、当時の自分と重ね合わせる部分が多かった様に思います。今になって読み返すと、ノストラダムスのくだりや公衆電話から家の固定電話にかけるなんて描写が懐かしかったりします。こうした作品の時代背景は確かに20年前なのですが、主人公たちのアノ世代特有の行き場や根拠のない焦燥感や孤独、言葉にならない不安感は、現代においても通じるものがあるのではないでしょうか。

さて、この作品には全部で3通の手紙が出てきます。私は最後の1通だけは涙なしに読み切った事がありません。どうしても泣いてしまうし、なんならちょっと泣きたい気分になった時、あえてこの作品を読み返す事さえあるぐらいです。(笑)

大きく行き詰まってしまう前……ほんの少し何かに躓いた時に読み返すと、そっと気持ちをすくい上げてくれるし、自分の主軸を取り戻せるような、私にとっての"とうとい"ものです。

奇しくも、満月の夜にこのnoteを更新するタイミングに恵まれたのもまた、不思議な巡り合わせですね。

余談ですが、児童書として刊行されたこの作品。同年に発売された「カラフル」も児童書で、映画化やアニメ化などで話題にもなりましたし、こちらも大好きな作品です。そんなこんなで森絵都氏の小説は初作から欠かさず読んでいるのですが、児童書ではなく一般図書として発売されている近年の作品で、お気に入りなのは「この女」。「つきのふね」のテンションで読み始めると大変な事になりますので、是非ともキリッと切り替えてお読み下さい。

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フリーランスで企画・制作や音楽スタッフ業、インタビュアー・ライター・フォトグラファーの真似事もしつつ、都内コミュニティラジオ局のディレクター。音楽系の裏方として何でも屋さんを自称。長所は真面目なところ、短所は真面目すぎるところ。座右の銘は適材適所。元シンガーソングライター。
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