2022年7月の記事一覧
【ショート小説】Thank you, my twilight
バチんと水分を僅かに含んだ炸裂音が響いた。レースのカーテンを揺らす風が真夏の湿度を外から止めどなく室内へ運んでいる。僕はコップの底に染み込んだ黄色い液体をわざわざ持ってきたストローで吸い出しながら母を見た。浅黒く日焼けした肌は、やけに赤みを孕んで腫れ上がって見える。母は整った顔を醜く歪ませながら、一心不乱に自らの腕をバチバチと叩いていた。どうしたのとゆっくりと聞くと、蚊がね、いるのよ。と渇いた返事
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