ペン・ムラサキ

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ペン・ムラサキ

👾👾不思議なお面作成企業(架空)👾👾 ショート小説垂れ流し用、秘密の裏アカウント 🛸ポップでハピネスでライトな小説書いてます🛸 https://menmurasaki.thebase.in

マガジン

  • 【ショート集】コタンの雌ぎつね

    ショート小説集第二篇

  • 【ショート集】草原と枕

    ショート小説集第一編

  • 死人と銀河の哲学

    オリジナルマスクに纏わるストーリーを届ける短編集

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【ショート小説】踊り子1号

薄灰色のライブハウスを無数の電飾が瞬いていた。 黄、赤、紫、いくつも不規則に点滅する光に頭はぐるぐると回る。玉虫色のステージでは、踊り子が一人アメリカ仕込みのステップを踏みながら、甲高い歌声を鳴り響かせていた。 光が彼女を照らす度に、白いドレスは色を変え、赤いバレエジュースはしなやかに曲がっている。 元来、暗闇であるはずの地下の空間は大勢の人々でごった返している。 ステージからは、ぼんやりと薄闇の中にこちらを見つめる目線だけが異様に輪郭をはっきりとさせているのがわかる。 踊り

    • 【ショート小説】裏・見ます

      日中にひとしきり降り落ちた雨は、その水分を空気中に漂わせて存在している。すっかりと暗くなった帰りの一本道を歩いていると、自分の足元に白い花弁が一面に落ちている事に気がついた。それを踏まない様にやや爪先立ちになると、まるでダンスを踊っているようになった。花弁はコンクリートと雨に打ち砕かれ、その白い色に所々灰色とも茶色ともつかない濁った色を浮かび上がらせていた。今日は本当におかしな一日であった。特別に何があった訳でも無い。只、朝から今まで脳内に濃い霧が立ち込め体温をゆうに超える熱

      • 【ショート小説】Thank you, my twilight

        バチんと水分を僅かに含んだ炸裂音が響いた。レースのカーテンを揺らす風が真夏の湿度を外から止めどなく室内へ運んでいる。僕はコップの底に染み込んだ黄色い液体をわざわざ持ってきたストローで吸い出しながら母を見た。浅黒く日焼けした肌は、やけに赤みを孕んで腫れ上がって見える。母は整った顔を醜く歪ませながら、一心不乱に自らの腕をバチバチと叩いていた。どうしたのとゆっくりと聞くと、蚊がね、いるのよ。と渇いた返事が返ってくる。殺すの?僕は母の顔を見ながらそう聞き返した。そりゃあそうよ。薬炊い

        • 【ショート小説】パスコードみたい

          「明日の東京は雪になるわ。」 静かな微笑みを床に落として、娘はベージュの鞄を引き寄せた。細く白い腕には幼い頃の危うい脆さが今でも見る事ができて、思わずふっと息を零した。 「そうか。」 病室の窓から外を見ると燦々と降り注ぐ太陽の光が、僅かばかり夏の香りを残して遥か彼方まで真っ赤に染め上げているのが見える。私は窓辺に置かれた水を一口含んで、娘を見返す。娘は目を挙げる事無く、そのまま無言で病室を後にした。もう一度、窓の外へ視線を移すと、つい先程まで紅葉していた太陽はすっかり青黒い染

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        【ショート小説】踊り子1号

        マガジン

        • 【ショート集】コタンの雌ぎつね
          11本
        • 【ショート集】草原と枕
          13本
        • 死人と銀河の哲学
          13本

        記事

          【ショート小説】止まんない愛を1・2・3

          人知れず八重咲きの竜胆が季節に似つかわしくない、水色の花弁をたわわに開いていた。鏡を覗き込んで襟を正すと、神父は無言のまま明るく照らされた廊下を歩いている。胸には真鍮で出来た神の像を忍ばせ、奥にある一室の扉を開けた。必要以上に日の光の入る部屋には、アクリルの境越しに一人の男が座っていた。男は神父に目を合わせる事もせずに、部屋の隅から只鉄柵に遮られた窓から差し込む暖かな日差しを眺めている。 「おはよう。気分はどうかね。」 神父は手にした聖書を机の上に置くと、ゆっくりと腰をかけて

          【ショート小説】止まんない愛を1・2・3

          【ショート小説】ジリジリと夜になる

          勾留者の朝は早い。充分な睡眠からぱちりと目を覚ますと、夜と同じく減灯された電球の黄色い灯りだけが世界を照らしていた。自分はばっと掛布を剥ぐと、染み入るような冬の寒さに体を放り出した。そそくさと布団を畳むと、その気配で同室の何人かが目を覚ましたようである。 時刻は午前七時。この部屋にいる五人は並べられた人形のように一列に正座をしている。数分もしないうちに、目の前の廊下に病的な灯りが灯る。聞き慣れた金属を擦り付けた解錠音がした後、湿り気の無い渇いた空気に四つの革靴のカツカツとした

          【ショート小説】ジリジリと夜になる

          胃腸炎なう、、、

          胃腸炎なう、、、

          【ショート小説】偽りの花

          整然と管理されているカフェのテラスは、優しい午後の日差しが差し込んで秋に差し掛かる時間を彩っている。インタビュアーは、目の前に座る演劇評論家に質問を投げかけていた。 「それじゃぁ、逆に今まででこれは一番ダメだって言う芝居ってありますか?」 評論家は口元に運びかけたコーヒーカップの動きを止めて、それをテーブルへ置き直すと、真っ直ぐインタビュアーを見つめ 「本物だ。本物はいかん。最低だ。」 と言うと、それ以上口を開こうとはしなかった。 「光とはこの胸の中に」 日差しの入る稽古場

          【ショート小説】偽りの花

          【ショート小説】宿命さえ運命さえも、どうぞ輝かせて

          僅かに冷え込んできた空気を喉に入れ、微かな張りを感じると、意識は鮮明に色を付けていく。顔を上げて、いつもの景色を見ると顔面に張り付いた風が優しく髪をかきあげて、冷気を残したまま何処かへ消えていった。5年は乗っているアレックスモールトンの小振りなペダルに力を入れて、出来る限りの最速を保ったまま、僕は幼い頃から通い慣れた道を走っていた。田んぼの間を縫って広がる道路から、細い砂利道に入っていくと、再び突き当たりに舗装道路が顔を出す。辺りは相変わらずの田んぼと用水路ばかりで、茶色く汚

          【ショート小説】宿命さえ運命さえも、どうぞ輝かせて

          【ショート小説】好きだったのよ、あなた

          木材の断面から湧き出る粉っぽい香りと、鉄材の張り詰めたような香りが混じり合って鼻頭を刺激した。自分は誰かに気付かれないように、それを肺の奥まで吸い込んで、すぅと吐き出す。開店したての平日のホームセンターは、数人の業者がまばらに各々の必要な道具を探し当てる姿以外は、まだ眠りから覚めていないように暗く静まり返っていた。自分は並んでいる木材に頬を擦り付けると、光悦の表情を隠し切れず思わず、おぉと声を漏らした。許されるならば、全裸になってここの木材全てに自分の全身を擦り付けたい心持ち

          【ショート小説】好きだったのよ、あなた

          【ショート小説】わたし少女A

          目には見えないほどの巨大な団扇を振り下ろすように、身体を吹き飛ばそうとする風が背中から足早に通り過ぎて行った。僕は不意にそれを掴みに全速力で走り出した。9月も半ばに差し掛かった午後の2時頃である。車も見ずに道路を横断すると、立ち塞がるフェンスを鷲掴みにしてグイグイと上へ登り、いとも容易くそれを乗り越えて、日常の向こう側へ降り立つ。誰もいない場所には希望に満ちたような鋼が遥か遠くまで伸びている。その上に飛び乗り、ふと空を見上げると恐ろしい程澄み渡った青い空に、ぐにゃぐにゃと形を

          【ショート小説】わたし少女A

          前を歩くおばちゃん。 背中にガチの前田慶次プリントT 傾(かぶ)いている。 さういう人にわたしはなりたい。

          前を歩くおばちゃん。 背中にガチの前田慶次プリントT 傾(かぶ)いている。 さういう人にわたしはなりたい。

          【ショート小説】夢中で致して

          ペンを握る右手に力がこもった。切先は紙を突き破ると、腕が誘導するまま目の前の原稿用紙を斜めに引き裂いて鈍い音を立てていた。はぁと聞こえるように大きな溜息をつくと、無惨にも破れ去った紙を重ねてゴミ箱に放り込む。ここ数週間の天気は曇りのち雨が続き、窓辺から臨む景色は自分の気持ちとリンクしている様に思えた。 コンコンと扉をノックする音が聞こえたが、どうにも応える気力も無く、そのまま机に突っ伏して目を閉じた。コンコン、コンコンと数回ノックが続いた後、悪魔のような聞き慣れた声が扉越しに

          【ショート小説】夢中で致して

          【ショート小説】政治家とギャングの違い

          まだ夏の残り香の漂う空気に混じった朝日が、校舎を浮き上がらせていた。職員室を出て、薄く埃の舞う廊下を曲がる。ふと、大窓から差し込む朝日が目の前の埃をキラキラと輝かせているのが見えて、自分は塞ぎ込んでいた気持ちに更に大きな蓋がされた様な気がした。9月1日、火曜。今日は長かった夏休みも終わり、真っ黒に日焼けした生徒達が一斉に登校しだす二学期の始まり。 夢の残像の残る脳を振りながら歩いていると自分の教室の扉に手を掛けた。 一年2組の教室には既に生徒達が席に着き、各々隣の子と話をし

          【ショート小説】政治家とギャングの違い

          なんか一区切りついた感あります。 とりあえず、何者かも分からない私の稚拙なお話を読んで頂きありがとうございます。 奇特な方がもしいるならこれからもよろしくどうぞ。

          なんか一区切りついた感あります。 とりあえず、何者かも分からない私の稚拙なお話を読んで頂きありがとうございます。 奇特な方がもしいるならこれからもよろしくどうぞ。

          【ショート小説】素数0号

          CQCQと打ち込んだ画面を落として部屋に一つだけある窓から外を見た。鼠色の雲からは、はらはらと黒く濁った汚い雪が舞い始めている。眼前にはかつて栄華を誇ったであろう真っ赤な鉄骨の塊が全身に苔の緑を生やしながら食い散らかされた死肉の様に物を言わずに横たわっていた。 僕はキッチンに行くと夏の間に備蓄した水を取り出して、近場で取れた樹液を入れてかき混ぜる。暖炉の火で温めてレモンを一欠片その中にいれると、そのままうとうとと眠りにつきそうになった。もう五年、僕はこの惑星で来るはずの無い

          【ショート小説】素数0号