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無職放浪記〜トルコ編〜

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無職放浪記・第2章 【期間】2022年8月1日〜28日 【ルート】イスタンブール→アンカラ→カッパドキア→エイルディル
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2022年8月の記事一覧

首都アンカラへ【無職放浪記・トルコ編(9)】

首都アンカラへ【無職放浪記・トルコ編(9)】

 イスタンブールの宿を引き上げた私は、地下鉄でオトガルに向かった。
 オトガルとは、トルコのバスターミナルのことだ。バス大国であるトルコでは一つの都市に一箇所はオトガルがあり、ここに行けばひとまずどこかには向かうことができる。

 オトガルではバス会社の看板が所狭しと並んでいた。これだけ選択肢があると、逆にどのバスを利用すればいいのかわからなくなる。
 私はとりあえず窓口の前に立っていたワイシャツ

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サバサンドでサヨウナラ【無職放浪記・トルコ編(8)】

サバサンドでサヨウナラ【無職放浪記・トルコ編(8)】

 私は珍しく悩んでいた。
 この日の夕飯を何にしようか、という問題ではない。
 イスタンブールを去って次の街へ行くべきか否かという問題である。

 最初から日数が決まっている旅ならともかく、明日の予定も決まっていないような旅の場合、気に入った街を去るタイミングというのが見つけづらい。居心地がいいのならば、いつまでも滞在していればいいのだから。

 イスタンブールに来てから10日近くが経とうとしてい

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イスタンブール新市街へ【無職放浪記・トルコ編(7)】

イスタンブール新市街へ【無職放浪記・トルコ編(7)】

 イスタンブールという街はボスポラス海峡によって、大きくヨーロッパ側とアジア側に分かれている。
 さらにヨーロッパ側でも金角湾を境に新市街地と旧市街地に分かれており、二つの地区をガラタ橋が繋いでいる。

 私はイスタンブールに来てから旧市街地のスルタン・アフメト地区を拠点としていたが、5日目になって新市街地に移ろうかなと考えるようになった。

 旧市街地にいると、どうしても歴史的建造物と古い石造り

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「5リラ50クルシュの優雅な船旅」は現代ではいくらかかるのか?【無職放浪記・トルコ編(6)】

「5リラ50クルシュの優雅な船旅」は現代ではいくらかかるのか?【無職放浪記・トルコ編(6)】

 旅人たちの“バイブル”として、時代を超えて読まれ続けている名著『深夜特急』。

 著者の沢木耕太郎氏はロンドンを目指す旅の途中でイスタンブールにも訪れるのだが、その章で「5リラ50クルシュの優雅な船旅」という過ごし方を紹介している。

 まずイスタンブール旧市街のエミノニュという港でフェリーに乗り、15分ほど船に揺られてアジア側のハレムという地区へ行く。ハレムでは発着所の横にある売店でドネル・ケ

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プディング・ショップ【無職放浪記・トルコ編(5)】

プディング・ショップ【無職放浪記・トルコ編(5)】

 かつて、世界を旅するヒッピーや貧乏旅行者の間で語り継がれた、伝説とも言うべき店がイスタンブールにはあった。

 いわく、あそこに行けば何でも手に入る。
 いわく、あそこに寄ればどんな情報も手に入る。
 いわく、そこで待っていれば誰にでも会える……。

 その店の名前は『プディング・ショップ』。

 ヨーロッパからアジアを目指す者と、アジアからヨーロッパへ目指す者が交わるイスタンブールで、貧乏旅行

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ドミトリーの効能【無職放浪記・トルコ編(4)】

ドミトリーの効能【無職放浪記・トルコ編(4)】

 エジプトではどの街でも1泊1000円台の宿はすぐに見つけられたが、イスタンブールでの安宿探しは難航した。

 シングルルームなら中心地からやや離れた場所でも1泊3000円はなかなか切らないし、お手頃なホテルを見つけてもオンシーズンのため空き部屋がないという状況だった。

 そんな時に私のような格安旅行者が利用するのが、ドミトリー(相部屋)のある宿だ。

 多くのドミトリーは大部屋に二段ベッドが複

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うまくいかない日に思うこと【無職放浪記・トルコ編(3)】

うまくいかない日に思うこと【無職放浪記・トルコ編(3)】

旅をしていると——
いや、旅をしているかしていないかに関わらず、人には「何をやってもうまくいかない日」というのがあると思う。

 その日は出だしから思うようにならなかった。
 ちょっとした遠出を計画したので、ホテルを出る時にオーナーに延泊する旨を伝えた。延泊は了承されて料金をクレジットカードで支払ったのだが、支払いが完了した後で「今の部屋はチェンジする必要がある。12時までに戻ってきてくれないか」

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アヤソフィアと人と猫【無職放浪記・トルコ編(2)】

アヤソフィアと人と猫【無職放浪記・トルコ編(2)】

「うっわ、マジかよ……」

 一人旅を続けていると、どうしても独り言が増えてしまうが、その光景を見たときは思わず口に出さずにはいられなかった。

 ブルーモスクから広場を挟んだ向かい側に、アヤソフィアという建物がある。
 東ローマ帝国時代に建設され、当初はキリスト教の大聖堂だったが、オスマン帝国がコンスタンチノープル(イスタンブールの当時の名前)を占領すると、イスラム教のモスクへと造り替えられた。

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青のイスタンブール【無職放浪記・トルコ編(1)】

青のイスタンブール【無職放浪記・トルコ編(1)】

 カイロ国際空港を午前3時に出発した飛行機は、朝の6時半にイスタンブール空港に到着した。

 トルコの首都イスタンブールには2つの主要空港があり、私が降り立ったのは2019年に開設された新しい方の空港だった。
 オープンして数年しか経過していないためか、小綺麗な内装をしている。しかし、私はとにかくベンチを見つけてもう一眠りしたかった。何しろ、この日は飛行機の中で2時間程度しか寝ていないのだ……

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