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【詩】ただ結びあわせよ

――ただ結びあわせよ。……(' Only Connect……’)
(E・M・フォースター『ハワーズ・エンド』の扉より。長田弘氏による訳)

日常意識のすぐ下層
無意識の海中でとぐろを巻く蛇
ときにそれは幾重もの不透明なイメージで対象を囲い
――硬質なウロコで――
あるがままの在りようを見失わせ やがて私たちから生気を失わせる
私たちホモ・サピエンスの内から

日常意識のすぐ下層
無意識の空中でとぐろを巻く蛇
ときにそれは幾重もの透明なイメージで対象を包み
――柔らかな羽毛で――
果てのない想像の宇宙に遊ばせ やがて私たちに新たな息吹を吹き込む
私たちホモ・サピエンスの内に

いずれも
私たちのみが有する無意識のなせる業
私たちを生かし 私たちを隠し
私たちを疲弊させ 私たちを刷新させる

頭蓋骨の闇の中を飛翔してゆく
羽の生えた蛇よ
虹色の火花を明滅させながら
お前が私たちに語る言葉は元来
《ただ結びあわせよ》
との一言

(初出:季刊詩誌『舟 184号』、2021年8月15日発行)


*お読みいただきありがとうございます♪

noteに『ネアンデルタールの朝』という小説も掲載しています。2015年の福島と東京を舞台に、原発事故後の世界を生きる若者の姿を描くことを試みた作品です。

物語の軸となる要素として、ネアンデルタール人と私たちホモ・サピエンスの秘められたつながりや、人類の意識の進化についての私見を織り込んでいます。

宜しければご覧ください。


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