小説『ネアンデルタールの朝』⑫(第三部第3章-2)
2、
月明かりの下、一人の男が前方を歩いている。時にフラフラと足がよろめく感じになるのは酔っ払っているからかもしれない。ヨレヨレの着古したオーバーを羽織り、頭には灰色のハンチングをかぶっている。
民喜はしばらく前から、この男性のあとにつき従っていた。
二人で歩き続けているのは、線路脇の狭い道だった。周囲の景色から何となく、吉祥寺の辺りではないかと感じる。
男は民喜が後ろからついてきているのに気づいているのか、気づいていないのか。一切後ろを振り返ることはない。少し前かがみの恰好