詩:きみの涙を舐めたい
きみの涙を舐めたい
光をたたえた一筋のその体液は
細いうぶ毛の上をすべるように落ち
終着点を探しながら唇をつたう
噛み締めた唇は でも柔らかく
涙はもう一度つるりと光って
落ちた
ぽ、ぽと
きみの涙を舐めたい
ソーダ水のような懐かしい刺激
ケチャップのような甘酸っぱさ
ポテトチップスを食べたあとの指先の塩気
どんな味でもいいから
舌のぜんぶで味わいたい
きみの思いを舐めるように
きみの涙を舌でぬぐいたい
悲しみもよろこびも怒りもやるさなさも
すべて味わってみたい
飴玉をころがすように
舌の先から頬の内側をつかって
硬い音を立てて歯にぶつけて
かちりこちり
きみの思いの先になど行かないから
軌跡をたどって舐めていくだけだから
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