観測者SS④ 『笑顔の少女』
ガタンガタンと、暗い夜道を黒鉄の塊が走ってゆく。当の昔に廃止された蒸気機関を搭載したSLが石炭を燃やし、水を蒸発させて力強い音を立てながら疾走する。闇夜を切り裂くように汽笛を上げながら走る姿は、コアなファンが見たら垂涎ものだろう。
「ん・・・?」
そのSLが曳いている客室の一室で、彼女は目を覚ました。起きたばっかでぼーっとする思考だったが、自分の置かれている状況をゆっくりと理解しだす。
「ここは・・・汽車の中かな?」
視界を動かせば、昔ながらの木で造られた車内が目に入る