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140字小説【酒忘術】

 酒の味を覚え始めた頃からずっと、何杯呑んでも酔わないことが自慢だった。

 だけど、お前が俺を置いて先に逝っちまったあの日だけは、酔えない自分を憎んだ。

 今になって思う。どうして俺は《酔っ払う》以外に、嫌なことを忘れる術を知らずに生きてきたのか……知ろうともしてこなかったのかって。

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