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留学。海外でファッションを学ぶ本当の幸せとは。[セントマ=セントマーチンズ]

ロンドン留学時代の友人から突然連絡があった。

彼女の会社のボスが日本にリサーチトリップに行くので、東京にある良いヴィンテージショップについて教えてくれないか、とのこと。私の自分の仕事が繁忙期だからアテンドはできないけど、リストくらいは作れる。いわゆるヴィンテージショップと、着物ヴィンテージに分けたリストにしてみた。喜んでもらえたら良いな、と思う。

昨晩彼女に連絡をもらってからずっと、ロンドンでの生活のことが頭をぐるぐるしている。

私は25歳で渡英、Central Saint Martins Art&Design(いわゆるセントマ)でファッションコースに在籍。BAとMAを卒業。合計8年弱をロンドンで暮らした。

物心ついた時から服が好きだった。

10代の頃、アントワープ王立芸術アカデミーの卒業ショーで活躍する日本人や、セントマMAに在籍する日本人の記事を装苑で読み漁り、「私が知らないことを私が行ったこともない国で学んでいる人がいる、ずるい。」と愛知の田舎で憤りながら、英語の授業だけはきちんと受けた。いつか必ずこの雑誌に載っている人たちと同じステージに立つ、この人たちが見ているものを私も海外に見に行く、と信じて全く疑わなかった。パスポートも持っていなかったのになぜそんな風に信じられたのかは今となってはわからないけど、おそらく無垢な若さと、あまりに酷い(と思っていた)ど田舎に産まれた理不尽な気持ち&自分への自信の無さのイライラが、無茶な信念を温める決断を後押ししたのだと思う。
中学生って怖い。

だが、その後普通科高校を卒業し、ファッションの専門学校へ行った後、地元愛知で就職した。いつか海外に行きたいという気持ちは薄れてはいなかったけれど、冷めていた。
一丁前に大人になった気持ちで。
夢ばかり見ていてもダメだよね、と、理由もなく。

正直にいうと、就職した先で懸命に仕事に打ち込みながら、気持ちがどんどん仕事と離れていくのを感じてもいて、その気持ちがとても怖くもあった。これが本当に一生かけて勤めていく仕事なのか。小さな頃から夢見ていたのはこの毎日で間違っていないか。通勤電車で、オフィスで、生意気な自問自答を繰り返して4年、ある日突然思った。

あ、そうだ。留学だ。

イギリスだ。

そこからは早かった。会社のお昼休みに母に電話をかけ来年留学すると伝え、(母は、唐突すぎて、私が悪い覚せい剤か何かを始めたと思ったらしいけど)会社を辞め、英語の試験を受け、入学試験用のポートフォリオを作った。不安だったけど気持ちだけはただただ元気。やっと私の本当の人生が始まるような、高揚感が指の先まで満ちているような毎日だった。

遠回りをしてたどり着いたイギリスはとても素敵な国だった。
ロンドンの気候、人、セントマという特殊なコミュニティ、受け入れてくれた職場、全てが大好きで、8年はあっという間に過ぎた。

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通勤時いつもみていたグラフィティ

日本に戻った今、留学は何のためだったか、とふと思うことがある。

私にとって留学とは、私のようにファッションに熱烈に恋い焦がれる人たちとの出会い、何よりファッションが好きな友人とのあの毎日、その出会いと日常に尽きる。
国籍も言語も違うけれど、好きなものが一緒だというそれだけで仲間になれた。心の底から大真面目に、世界で一番のファッションデザイナーになるんだと思っている人がセントマには山ほどいた。嫌な奴もいたし、ソリが合わない人もいた。だけど、その人が作っている服が凄ければ、素直に尊敬できた。
そんな友人たちとの日常を通じて、愛知の田舎生まれの自分に自信がない私は、自分の人生に夢を見ることは決して変なことではないのだと教えてもらった。そして、いつか私もデザイナーとして理想の人生を歩める日が本当に来るのではないかと、何年もかけて徐々に自分を自由にすることができた。

今はその友人たちが、世界のあちこちで活躍している。そんな友人でありライバルの存在を、昨晩のようにふと感じることがあると思う。海外でファッションを学ぶ本当の幸せは、まだ終わっていないのだと。
夢を見ることを教えてくれた人たちに、一つでも良いニュースを響かせようと思えることこそが、わたしが留学で得た財産だ。



セントマでの毎日のことも、また書けたらいいです。(theネタの宝庫!)

毎日雨なのでみなさん風邪に気をつけて・・・


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