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【オススメ小説17】世界最高峰のSF短編集『息吹』テッド・チャン著

 自由、命、時間……etc、哲学と知性の最高水準SF

 こんにちは、名雪七湯です。

 オススメ本も17回になった今記事は、今世界中から注目されているSF作家テッド・チャンによる『息吹』を紹介したいと思います。

1、本情報

 『息吹』テッド・チャン著 大森望訳 早川書房 2019

 「メッセージ」に改題された『あなたの人生の物語』1999年ネビュラ賞中編小説部門受賞シオドア・スタージョン記念賞)が映画化され、世界中に名を知らしめた、アメリカのSF作家、テッド・チャン。海外の作品は翻訳の善し悪しが作品の足を引っ張ることが時たまありますが、安心と信頼の大森望さんということで安心して読み進めることができます。

 アイデアが出て来ない限り執筆しないという、作品の数が極めて少ない彼の最新作でもある、今作『息吹』の短編集には

 『商人と錬金術師の門』ヒューゴー賞 ネビュラ賞 星雲賞受賞

 『息吹』ヒューゴー賞 ローカス賞 英国SF協会賞 SFマガジン読者賞受賞

 『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』

  ヒューゴー賞 ローカス賞 星雲賞受賞

 などが収録されており、バラク・オバマさんも書評を寄せたとあり、正にSFの賞を総なめにした作品集になります。

2、哲学と向き合う

 表題作『息吹』では、人間のいない機械だけの世界で

 「記憶」の謎や世界中で起きている「時計」のズレを解明するために、自身の体を解剖する科学者とその発見を描く。空気を機械の肺一杯に詰めて息をする彼らの体から判明する、ある真実とは……。

 『息吹』で問題にするのは「命」の問題です。

 今短編集では自由意志時間量子論、など哲学の問題を扱います。

 例えば、私が一番好きな『予期される未来』では、「押す前に光るボタン」が発明された世界で自由意志の存在が議論されます。

 と言ったように、内容は難解かつ抽象的な問題を扱います。

 短編集とあり一編は割と短いですが、ぼうっと楽しめる作品集ではありません。必死に頭を働かせ、知性と理性で本に向き合う。ページは全く進まず、むしろ進んでは戻り進んでは戻り理解を強め、頭が痛くなりつつ世界最高レベルの世界観にどっぷり浸かる。そういう楽しみ方の作品になります。

 必死に頭を悩ませる「本物のSF」に出会いたい方にはオススメです。

 最後までお付き合いありがとうございました。

 またお会いしましょう。


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