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【オススメ小説26】「孤独」を鮮烈に描くミステリ『イノセントデイズ』

 こんにちは、名雪七湯です。

 本紹介も26回目にもなる今回は、沈鬱な表紙キャッチコピーが目を惹く、早見和真さんの傑作ミステリ『イノセントデイズ』を扱います。

1、本情報、作者情報、あらすじ

『イノセントデイズ』早見和真 2014 新潮社

 著者の早見和真さんは、2008年に、自らの経験を基に書き上げた、野球部の補欠部員の話『ひゃくはち』にて小説家デビュー。同作が漫画化。今作『イノセント・デイズ』で2015年に第68回日本推理作家協会賞を受賞、第28回山本周五郎賞の候補に挙がり、2018年連続テレビドラマ化。以降、小説雑誌のライター童話作家など幅広く執筆活動を行う。

 以下、あらすじになります。

 元恋人の家に放火し、妻と双子の子供を殺めた罪で死刑を宣告された田中幸乃。あまりに凄惨な事件に、世論は彼女を激しく糾弾する。事件の背景とそして彼女の人生に一体何があったのか。彼女に関わった人物たちから語られる過去が事件の概要を徐々に形作ってゆき……。

2、徐々に浮かび上がる孤独

 この作品は、

周囲の人間が田中幸乃という人物との過去を語る

 という形式を取り、周囲の人物の語り口から彼女の人間像を浮彫にします。東野圭吾さんの『白夜行』をイメージして頂ければいいかと。

 ストーリーラインは、田中幸乃の弁護士の幼馴染が再審を求めて事実を集め始める、というところを中心に三人称の視点が次々と変わり群像劇の要領で田中幸乃の人生が形作られてゆきます。長編ミステリではあるあるですが、複雑な形式をしていて途中途中で「誰だっけ?」となるやつです。

 三人称とあり、読みやすい文章も相まって淡々と物語は進みますが、語られる事実は残酷です。帯に「3日寝込んだ」と書かれるだけあります。

 今作を通して語られるテーマは、「孤独」です。

 人は孤独を何よりも怖がると言われます。徐々に情報が出され形を見せてゆく事実、田中幸乃という人生の「孤独」。テーマも展開も重たいものですが、伏線辿り着くラスト強烈で、人の心に残る魅力があります。

3、最後に

 ミステリーとあり、多くを語れないのが残念ですが、今作の強烈なインパクトは一度読んだら忘れることができません。ミステリでありつつ、田中幸乃という人物の人生の物語でもある。長編ではありますが、文章はするすると頭に入り、独特な世界観に浸りながらの一気読みをオススメします。

 最後までお付き合いありがとうございました。

 またお会いしましょう。


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