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【#4】経歴と経緯(中編)

転機

私には、観て衝撃を受けた映画があります。
1998年に日本でも放映されたアメリカ映画、『パッチ・アダムス』をご存じでしょうか。
ロビン・ウィリアムスが、実在する医師パッチ・アダムス役を演じました。
自殺未遂の上精神病院に入院したアダムスが、ユーモアが人間のこころを癒すと知り医師の道を目指すお話です。
観てからパッチの本を読み漁っていた私は、日本にはパッチのようなお医者さんは居ないのか気になりました。
そんなある日、夕方の報道番組で特集されていたのが山口県周防大島の医師、岡原仁志先生だったのです。
早速訪れたHPの採用ページに保育士の募集がなかったことにちょっとショックを受けつつも、医療法人だもんなぁと思ったことを今も覚えています。

東日本大震災後、フリーランスの生活から安定した仕事への転職を考え始めます。
保育園や乳児院など検索しているなかでふと、以前調べたことのある岡原先生の法人のHPを訪れてみることにしました。
すると、夏に複合型介護施設を開所する予定で職員の募集要項が載っていたのです。

「え!!??」
まさかの…保育士の募集がありました。

すぐ指示通りにハローワークへ行き、面接のため新幹線のチケットを取りました。
その後ありがたいことに内定をいただくことができ、その夏には神奈川県から山口県に移住することになります。
このスピード感に、チャイルドマインダーとしてお世話になっていた方々には多大なご迷惑をおかけしたことはご想像できるかと思います…。
他人事のようですが自分自身が、その事の重大さに気付けないでいました。


医療法人 事業所内託児所(保育士として)

複合型介護施設という環境が、私に多くの影響を与えました。
就職を希望した時期から高齢者と子どもとの交流について自分なりに勉強し、なにより大事にしたいと考えたのは 自然で継続的な交流です。
敬老の日など、保育園では高齢者施設に伺ったりすることがあると思うのですがどうしてもイベント的で、お互い戸惑って終わってしまうように感じていました。
せっかく出逢うことができたのに、なんだかもったいない…。

小さな子が来たな、かわいいな。ーここはどこ?このひとだぁれ?
あら泣かれてしまった、そりゃそうか。ーふあんだよ~。
今日は大人の後ろからだけど手を振ってくれた。ーこわくなかった。
みたいに両者のこころの動きの変化まで私は見たいなと思ったのです。

実際に子どもたちと施設内の事業所にお邪魔してみると、自分が予測していなかったこともありました。
まず、みなさんが子どもを歓迎してくれるわけではないということ。
冷静になって考えてみればわかることなのですが、私はお年寄りみんな子どもが好きだと勝手に思い込んでいました。
自分の周りにだって子どもが苦手という人はいる、それに苦手でなくてもどう対応したらよいかわからず困ってらっしゃる方もいるはず。
施設は住まいです。
静かに、ご自分の心地良いように過ごす場所です。
謙虚さ、私に足りなかったものの一つです。

次に、『子どもの力』は職員も癒すということ。
事業所内託児所は、主に施設に勤務する職員の子どもさんをお預かりする場所です。
オープン時から訪問看護ステーションの看護師さん、ディサービス介護士さん、小規模介護施設の看護師さんのお子さんが利用してくれていました。
託児所は職員通用口、訪問部門(居宅介護・訪問介護・訪問看護)の事務所の並びにありましたので、お散歩に出かけたりトイレに出たりするだけで職員の誰かに遭遇することは普通のことです。
また先ほど述べたように他事業所に遊びにいくことも多く、利用者さん以外…職員や利用者さんのご家族にもとてもよくしていただいていました。
そこで、子どもに声をかけてくれるみなさんが笑顔になる瞬間をたくさん見てきたのです。
もちろんみんながどんな気持ちになっていたかなんて私に分かるはずがないのですが、少なくとも声をかけてくれる、笑顔になってくれる、その姿は好意的に感じていました。

保育士の研修で最近、保育士の仕事は「感情の仕事」と形容されることを知りました。
先生曰く、だから疲れるのだと。
命に係わる仕事である介護・看護の世界も日々緊張続きの時間を過ごしていると思うのです。
そんな時、一瞬でもホッとできる瞬間ができたら…
そんな風に思いました。

最後に、安全・衛生管理について。
誤解を恐れずに言うと、保育では「菌に触れてなんぼ。」みたいなところがあると思うのです。
よく言われる免疫力、というやつです。
感染症予防のためのおもちゃの消毒や排泄物の取り扱いなどには注意をしていますが、自然界にある菌から守りましょうということではないと思います。
だけどもお年寄りの環境はそうじゃない。
私の場合は極端だと思うのですが、保育士の感覚でお年寄りの生活の場に入ってしまうのは危険なんだと怖くなったことがあります。

余談になりますが、その時お邪魔していた事業所の管理者が私に言ってくれた言葉「たみちゃんは子どもを見てればいいのよ。ここのことは職員がやればいいんだから。」は今も私のこころを支えるとともに『プロとは、専門性とは』の答えだと思っています。



中編は、ここまで。


*たみちゃん*


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