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【短編小説】大樹

ここはキョート共和国の、ある のどかな街…
昔は一面畑だったこの街も、今では都市化が進み、干拓と伐採が進んでいる。
去年、街の全ての木が切り倒されそうになるという悪夢のような悲劇が起こった。
だが、木こりが最後の一本を切り倒そうとすると、木の匂いに誘われて寝てしまった。
切り倒そうとすると誰もが寝てしまうので、その木は残してある。
その木がとんでもない大樹で、少なくとも1000年は生きていると予測されている。
大樹すぎてビルが見えなく、景観を損なうので、多くの人々が大樹を切ろうとした。
そして失敗した。
もはやこの街に大樹を切らないで欲しいという人は一人もいないくらいだ。
いや…一人いる。それがこの僕だ。
僕の名は近里将。
僕は唯一、大樹を切ろうとしても寝ることはない。
しかし、それはこの大樹から愛されているということなのだろう。
なので僕はどれだけ人に頼まれてもこの大樹を切らない。というか自分から切ろうとしない。
そんなこんなで街を追い出され、たまに大樹の様子を見に来ては、追い出されるの毎日だった。
でも僕幸せだったよ。幸せだったけど、まさか大樹が切られるとは。
土ごと紐で引っ張られて、それと一緒に大樹も動いてしまって、そのまま崖からポイさ。
僕はそのまま落ちてぶっ壊れたかと思った…、でも奇跡が起きたんだ。
なんと無傷で大樹が残っていたんだ。
それから色々あって、現在その大樹は、僕の家として我が家を支えています。

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