雪男の季節

 なんだろうね。こうして君を待ち続けた日々。それが全て無駄だと思え始めた二月さ。僕は大雪の中ずっと君を待っていたんだ。だけど君は戻ってこなかった。君はなんで飛び出したの?ここには君の冷え切った体を温める暖房も、君の乾いた喉を潤す一杯のお酒もあるのに。君はもう戻ってこないのかい?だけど僕は待つよ。この大雪の中、ずっと君の帰りを待っているんだ。子供たちが僕に石を投げる。僕の顔にへのへのもへじの落書きをする。僕に木の枝を突き刺して笑いながら写真を撮るよ。いい恥晒しさ。だから早く戻っておいでよ。僕は君の家の玄関でずっと待ってるんだから。

「あの、あなたいつものストーカーさんですね。あの、もう通報があったんであなたを逮捕しに来ました。こんな雪だるまになるまでストーカーしたって彼女はあなたに振り向いてなんかくれませんよ。だからもういい加減諦めなさい。とりあえず取り調べ室はここよりかは暖かいから私たちと一緒に来なさい」

「お断りします!彼女が僕を警察に訴えたなんてどうしてそんなデタラメを言うんですか?デタラメじゃないんだったら彼女呼んできてくださいよ!彼女の口からあなたをストーカーで訴えましたって聞くまでここから動きませんからね!」

「先輩どうしますか、これ?俺、こんな雪だるま車に乗せたくないですよ。しばらくほっときましょうよ。どうせ朝になれば溶けるんだし」

「いや、そういうわけには行けないんだ。お前予報みなかったのか?今夜は大寒波の大雪でこのまま放っといたら確実にこの男死ぬぞ。こんなバカストーカーなんてどうでもいいけど死人が出たら怒られるからやっぱり連行しないと。……いやあのストーカーさん。あなたのストーカーの対象さんね、もう今日限りでこの家出て彼氏と同棲するって話だよ」

 

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