見出し画像

小物ルシファー

 公金横領の罪に問われたルシファーは天国から追放されて堕天使となった。彼は天国から追放されるまで何度も弁明書を書いて天国裁判所に身の潔白を訴えたが、そのたびに文章が下手すぎて何書いているかわからないと裁判所から突き返されていた。

 天国から追い出されたルシファーはひたすら天国を恨んだ。隠れてキャバ通いに行っている天使なんて自分の他にたくさんいる。お金を頂いたのだって給料が少なすぎるからだ。自分は悪くない。ルシファーはこう犯罪を犯す人間にありがちな思考でひたすら自分に都合よく考えるのだった。

 天国から追放され地上を彷徨っていたルシファーは天国に復讐する計画を練った。自分を公金横領の罪で告発した天国商社の同僚のミカエル、自分に天国追放の処分を下した天国裁判所の裁判官ども、自分をこれまでこき使ってくれた神をはじめとする胸糞悪い天国連中ども。復讐だ。俺がサタンとしてこの地上から人間を引き連れて連れてお前たちを襲ってやる。お前らを天国から叩き出してサタンの俺が新たな神になってやる。

 そんな決意を胸に渋谷にたどり着いたルシファーはさっそく東京生まれ悪魔育ちっぽい奴をスカウトした。

「あのさ、俺ルシファーって言うんだけど俺と一緒に天国ぶち壊さない?ちょっと金ちょろまかしたぐらいで一人の天使を天国から追放するなんて頭おかしいと思わない?」

「思わない」

 と言うとこの東京生まれ悪魔育ちっぽい青年はルシファーに憐れみ一瞥を投げてさっさとどっかに行ってしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?