DEAD END

　もうこうなったらデッド・エンドしかないわ。と女は男に言った。私が裏切られて終わるバッド・エンドなんかよりは遥かにマシよ。さあ覚悟して。あなたはデッド・エンドで私がバッド・エンドで終わるこの結末が私たちにとってピッタリのシナリオなのよ。
　当然男は彼女に抗弁する。確かに俺はお前に対して酷い裏切りをした。だけど俺はお前とこの危機を乗り越えたいんだ。お願いだ。もう一度考え直してくれ。俺たちはずっとハッピーエンドを求めてここまできたんじゃないか。
　やかましいと。女は再び言う。そうやっていつもいつも嘘ばかりついて！今まで私を騙して！死にたくなかったら私からナイフをとって私を突き刺しなさいよ！そしたら少なくともあなたのデッド・エンドはなくなるじゃない！
　男は女に向かって叫ぶ。バカヤロー！そしたらどっちにしたって不幸だろ！思い直せ！今まで俺たちがやってきたのはこんなドラマじゃなかったはずだ！
　やかましい！もうドラマなんて関係ないのよ！こんなドラマ今すぐぶち壊してやるわ！

「あの～、お二人ともどうでも良いんですけど、いくらプライベートで大変でもドラマの撮影なんだからちゃんと台本通り演じてもらわないと困るんだけど。早くこのシーン終わらせないとスタッフみんな帰れないよ」