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家庭教師

 今日息子の家庭教師がやって来るというので父も会社から直行で帰宅して家族三人で待っていた。家庭教師は女性であるらしいが、四十超えとのことらしいので息子も安心して任せられる。だがしかし美人すぎる四十代だったらと両親はいささか不安になったが、ピンポンがなりその家庭教師が現れると、まぁ容姿に感じてここで触れないが、両親はとにかくよかったと胸を撫で下ろしたのだった。

 家庭教師はいかにも教育第一のタイプの女性であった。しっかりとスーツを着てさっきからギョロ目で家族を見ている。しばらくして彼女は自己紹介したが、その後すぐ両親に向かって「では早速始めたいのですが」と言ってきた。両親は初日からいきなり勉強とびっくりし慌ててこれが息子ですと紹介した。息子もいきなり勉強とは全く聞かされていなかったのでビビって震えてしまっている。家庭教師は息子をしばらくジロジロと見つめてからこう言った。

「なるほど。一人っ子家庭なのですね。よくわかりました。では普段の家族の姿が見たいのでいつも通り夕食以降ご家族がどう過ごされているのか私に見せてもらえませんか?」

「あの、息子の勉強の方は?」

「勉強?それ以前に見るところがあるでしょ!私をなんだと思ってるんですか!私は家庭教師ですよ!あなた方家族を教育するために派遣されてきたんですよ!私を呼んでおいて何が息子の勉強ですか!あなた方はこの家族の問題のすべての責任を息子さんに押し付けるつもりですか?ああ!この家族は息子がいい大学に受かるためだけに全てを注いでいる感じね。肝心の息子の人格形成には全く興味がなさそうだわ!この息子はたしかにいい大学には入れるかもしれない。だけど人格形成を甚だしく怠ってるから社会に出たら全く使い物にならなくなるわ!その前に一刻も早くこのバカ家族を教育してまともな家族にしなければ!」


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