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思い出はみんな捨てた

 後ろ髪引かれるものなんてなにもない。

 彼との思い出は全部捨てる。

 私はうちから叩き出した彼のものを全てヤフオクやメルカリに出した。

 カメラマン気取りで撮った写真は実際のものより遥かに素敵だ。

 私は叩き出した彼が遺したものに死化粧を施してあげたのだ。

 ヤフオクやメルカリの出品一覧を見ていたら彼と本当に別れるんだなって実感した。

 出来れば高く売れて欲しいと思う。

 売れなかったら割引するけど

 やっぱり私たちの大事な思い出だから出品価格より高く売れて欲しい。

 商品が落札されたら発送する前にはお別れのキスをしよう。

 さよならって感謝をこめて。

 私は毎日ヤフオクとメルカリを見守った。

 だけど売れる気配はまるでなかった。

 毎日毎日見てもひとつも売れてなかった。

 私は完全に頭にきた。

 私たちの思い出がこんなにもそっぽを向かれるなんて思わなかった。

 その時彼から電話がきた。

 部屋に残した荷物を取りに来たいと言う。

 それを聞いて私は思わずスマホに向かって叫んだ。

「さっさと取りに来い!このゴミのせいで私がどれだけ辛い思いしてんのかわかってんのか?いいか早く来い!でないとこんな金にもならないゴミはさっさと焼却処分にしてやるからな!」

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