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【俳句】冬、もえる


枯れ木咲く寒さにもえるはりっか


【冬の物語】

ふわふわの布団を踏むような覚束ない足取りで、私は家に向かう。
新雪はふわふわふかふかなのだ。

午前中にしんしんと降り積もった雪が、歩く度にブーツの中に入ってくる。足先が冷たくなって、ジンジンしてきた。

はあ。歩きにくいし、寒いし、冷たくて痛いし。
雪国なんて散々だ。
ぶつくさ文句を言う。

足元に気を取られていたら、おでこがヒヤッとした。頭になにかが当たったようだ。

なんだろう。
すっと視線を上げる。
真っ白な花びらが目の前を舞う。


銀の花が、枯れ木に咲いていた。


新雪が降り積もった木だった。

私が枝にぶつかった衝撃で、はらはらと六花が散る。冬の日差しを浴びた雪は、きらきらと輝きながら、真っ白な地に落ちる。

もったいない。
白銀の花が散ってしまう。

私は足元にある雪をすくってふわりと木にかけた。

意味が無いことがわかっていた。
けれど、そうせずにいられなかった。

新雪は、真っ白な火の粉のように煌々と枯れ木に降りかかった。木に咲く冬の花が、再びきらきらと輝きだした。

冬の寒さに負けず咲く、花のような雪。
冬の寒さを跳ね返す、炎のような雪。

多くの生き物が眠る季節の中で、
真っ白にもえる命を見た。

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