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随想録

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「知らない」ということは、世界でもっとも美しいものかもしれない。記憶を辿る、前置きのプロローグ。ファンタジー小説や映画のような、日常に隠れた断片を探そう。
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#短編小説

プロローグ、それは本編前の前置き的なもの

プロローグ、それは本編前の前置き的なもの

「知らない」ということは、世界でもっとも美しいものかもしれない、とおもう。思い出せない記憶を辿る、前置きの日のプロローグ。約束、もしくは錯覚。事故にあうように、ファンタジー小説や映画のような、日常に隠れた断片を探そう。

photo by inaba keita

銭湯と、昭和ドキュメンタリー

銭湯と、昭和ドキュメンタリー

湯治、という意味もあり、近所の銭湯に通い始めた。

浴場のスピーカーから流れる演歌。
水の埋め込みは、ほどほどにという手書きの張り紙。
(どうやら「埋め込み」というのは、浴槽に水を入れすぎてぬるくしないでね、という意味のよう。)

東京へ出張に行くたびに、昭和にワープするような銭湯を渡り浸かってきた。昔ながらの文化を味わえる銭湯を探すのが、ちょっとした楽しみになっている。

都会の顔をした世田谷の

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雪のひとひら

雪のひとひら

言葉では、うまく表現できない。絵を描いた時に、風の音や葉っぱのにおいや、そのときおもっていたことをうまく表現しきれないのとおなじように。

子どもの頃、雪を眺めているのが好きだった。

雪の結晶は、よく見るとすべてちがうカタチをしている。

ポール・ギャリコの『雪のひとひら』のように、彼らが恋をするのかどうかはわからないけれど、ただただ真っ白にどこまでも続いていくように見える雪原は、ぜんぶちがうカ

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なみだはミルクのにおいがする

なみだはミルクのにおいがする

傷つくのは、ずるい。

だって、勝手に傷ついてるだけなのだもの。

傷つけるほうは、傷つけるほうで、良いことではない、とは思うけれど。

なみだは、ミルクのにおいがする。

まくらからも、ふかふかのクッションからも、ミルクのにおいがただよってくる。

こぼしたなみだをためて、ホイップしたら、たっぷりと甘ったるいミルクケーキができそう。

ミルクをこぼしたような流れの天の川。

いきるものたちの流し

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雪はやがて消えて、また春がやってくる

雪はやがて消えて、また春がやってくる

「あれは、ネコヤナギ。」

「木にねこが生えているの?」

いつまでも溶けない雪と春らしさのあいだで、時間がゆっくりすすむ季節。

北国の四月のはじめ。

おばあちゃんが、手をつないで、歩きながら植物のなまえを教えてくれる。

わたしは、二歳で、まだ歩くことを覚えたばかり。

ネコヤナギ、

チューリップの球根とクロッカス、

すずらん、

木苺、

アスパラとにら、

真っ赤なほおづきと赤トンボ

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